今月のヒトコト

平安文学にまねぶ恋

君がため 春の野に出でて 若菜つむ 我が衣手に 雪はふりつつ

あなたに差し上げるために、春の野原に出かけて若菜を摘んでいる私の着物の袖に、雪が降り続いています

(※METI Journalオンライン編集チーム担当による現代語訳)

まだまだ寒い日も多いものの、少しずつ、春の兆しを感じる日も増えてきました。そんな冬から春の季節の変わり目の今にぴったりの歌を、昨今話題の紫式部さんに着想を得て、平安文学からお届けしております。小倉百人一首にも採られている光孝天皇の歌です。

光孝天皇の「あなた」を思う優しさや愛情深さとともに、冬から春にかけてのなんとなく心躍るような感覚も相まって優美で温かな印象を感じさせつつ、春の野原や若菜で柔らかな黄緑を思い起こさせた上で、雪の白を重ねる対比も美しく、なんとも素敵な歌だなぁと思います。

「君がため」つながりで小倉百人一首からもう1首(カルタでは注意!)。藤原義孝さんの歌です。

君がため 惜しからざりし 命さへ ながくもがなと 思ひけるかな

あなたにお逢いするためなら惜しくはなかった自分の命さえ、あなたとお逢いできた今は、ながくあってほしいと思うようになりましたよ

(※METI Journalオンライン編集チーム担当による現代語訳)

情熱的な恋の歌ですね。

学生時代、それはそれは真面目(?)だった私たちは、古文の授業でこうした恋愛の歌や文章に触れた際には、ああでもないこうでもないと、いろいろ感想を言い合って学んでいた記憶があります。1000年前の恋愛文学を授業で学んでいることの意味が当初はあまりわかっていませんでした。少し経って当時の先生が教えてくれたのは、繊細で複雑な感情がほとばしる恋愛を描写するのに言葉の美しさや物語性をそなえた優れた文学が生まれたこと。また、恋愛をとりまく描写を通じて今とは違う当時の文化や価値観を学べると同時に、今にも息づく変わらない価値や普遍性にも気づかされること(それ以外もありましたが割愛します)。

「1000年前のラブレターにあなた達がキャーキャー言っていること自体が、恋という感情が今と昔でそう変わらないということの証明かもしれないね」と言われた時の衝撃。なるほど、1000年前の恋に、私たちはこんなにも心動かされてしまうのだなぁ(感嘆)。先生の言葉で妙に整った私たちの授業は、超大作、源氏物語のチャプターへと突き進んでいくことになるのでした。

さて、こちらの「恋」も熱いです。2月号政策特集「経営と標準が恋をする」、もうお読みいただけましたか。このタイトルが表す通り、「経営」と「標準化」は今、相思相愛です。ビジネスにおいて一層鍵となる「標準化」について、様々な角度から紐解いています。改めて内容を少しご紹介します。

「ルールテイカーからルールメイカーへ!「標準化」が拓く新しい市場」では、製品やサービスの互換性を高め、品質、性能、安全性を確保することを目的とした従来の標準化活動に加え、市場獲得ツールとして戦略的に標準を活用することの重要性を解説。経営戦略と標準化とを一体的に検討する必要性をお伝えしています。

「世界シェア90%のスイッチはなぜ生まれたのか? IDECを押し上げた「標準」の力」では、制御機器メーカーIDECの藤田俊弘社長が、自社製品を国際標準から除外された苦い経験を経て、ルールを「つくる」側になる重要性を認識し、自社製品の国際標準化を成功させるとともに、今では標準を活用し日本発の「協調安全」という新たな価値・思想の創出を進める様子を取材しました。

「知られざる「計量」の奥深い世界。社会・経済活動を支える科学の力」では、標準を規定する際の基礎となる「計量」の世界にクローズアップ。メートル、キログラムの定義変更や、時間をより精密に定義し直すための検討など、私たちの身近な単位を巡っても、技術や社会制度の変化に先駆けた定義見直しなどの対応が求められています。

「標準化人材」を育成せよ!日本発の国際ルールづくりにアカデミアが動き出す」では、我が国の標準化活動のカギとなる「標準化人材」の育成に向けた大学での取り組みを紹介。規格の作成を体験する授業や、学生のみならず社会人向けにも標準を学べるコンテンツの提供を進めている長岡技術科学大学や、民間企業などからも講師を招聘し、共同で標準化教育を実施する東京・多摩地区の5大学の取り組みなどを紹介しています。

「AIが主戦場!日本発「標準」を世界に広める経産省の戦略とは」では、急速な技術開発が進み様々なルールづくりが求められるAI分野に注目。我が国として様々な国際標準の提案を行いつつ、国内事業者向けの「AI事業者ガイドライン案」の策定や、AIの安全性評価の基準づくりを担う「AIセーフティ・インスティテュート」の設立など政府としても多角的なアプローチを実施しています。

そして3月政策特集は「半導体の現在地」。官民の取り組みや国際動向など、日々のニュースでも「半導体」という言葉を見聞きしない日はないくらい話題に事欠かないテーマです。そんな中、読者の皆さまの解像度をさらに上げていただく一助となればと思い、経済産業省として満を持してお届けする「半導体の現在地」。是非お楽しみに。

経済産業省広報室/METI Journalオンライン編集チーム

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