統計は語る

生産計画から生産動向が読み解ける?

製造工業生産予測指数の活用法


 経済解析室で鉱工業指数(速報)とあわせて公表している製造工業生産予測指数では、わが国製造工業の前月の生産実績や、当月及び翌月の生産見込(生産計画)を調査した結果を、指数の形で公表している。今回はこの製造工業生産予測指数の見方や傾向について紹介する。

見込と実績、果たして結果は計画どおり?

 製造工業生産予測指数のデータを用いて、製造工業の当月見込(生産計画)と実績を比べてみると、「見込(生産計画)」の水準より「実績」の方が低くなることが多く、実績は見込より下振れする傾向(つまり、見込は実績と比べ上方へのバイアスを含んでいる傾向)が見受けられる。
 製造工業生産予測指数から生産の先行きを考えるに当たっては、このことを考慮しておいた方がよい。

実現率をみてみよう

 実現率とは、前月調査の「当月見込(生産計画)」と比べて、どの程度生産されたかを比率で表したものである。
 製造工業生産予測指数では、毎月初旬に調査を実施し、企業の前月の生産実績とともに、生産計画における当月見込、翌月見込を集計した結果を、以下の表のような形で、「2015年の生産実績=100」とする指数で示している。
 下表は2019年1月調査~3月調査の結果を示したもの。例えば、3月調査における前月実績を、2月調査における当月見込と対比することで、前月(2月)初旬に調査した生産見込に対して、実際にどの程度、生産を実現できたかを知ることができる。この見込に対する実績の増減率を、実現率と言う。

 先ほどの見込と実績のグラフでみたとおり、見込より実績が下振れすることが多いため、実現率はマイナスになることが多く、「ゼロ」を上回る頻度はかなり低いようだ。 製造工業生産予測指数から生産の先行きを考えるにあたっては、こうした実現率の動向も参考になるだろう。

業種ごとの見込と実績、実現率は?

 製造工業生産予測指数では、業種ごとの指数値も公表している。では、製造工業に占める生産割合の大きい業種の見込と実績、実現率をみてみよう。
 製造工業のなかで最も生産割合の大きい「輸送機械工業」だが、「製造工業」全体の動きと比べると見込と実績のかい離は少なく、多くの月でほぼ計画どおりの生産活動が行われているようだ。実現率をみても、「ゼロ」付近を推移している姿がみてとれる。 ただ、2018年以降は、実現率がゼロを下回る程度及び頻度がそれ以前より大きくなっており、見込と実績のかい離がやや大きくなっているようにも見受けられる。

 続いて、二番目に生産割合の大きい「化学工業」だが、製造工業と同じく、実績が見込より下振れしている。また、2018年以降は、見込と実績とのかい離がやや大きくなっているようだ。

 三番目に生産割合の大きい「電気・情報通信機械工業」は、実績が見込より下振れしており、実現率の低下幅も大きく、「製造工業」と比べてもやや下振れが大きい様子がうかがえる。

 ほぼ計画どおりに生産活動が行われている業種、見込より実績の下振れが大きい業種など、業種によってもそれぞれ特徴がある。 業種別の指数を見る際には、こうした業種ごとの傾向も考慮した方がよいだろう。

計画値の修正はどれくらい?

 最後に、予測修正率についてみてみよう。
 予測修正率とは、当月調査での「当月見込(生産計画)」が、前月調査の「翌月見込(生産計画)」と比べて、どの程度、計画が修正されたかを比率で表したもの。
 製造工業生産予測指数では以下の表のような形で、予測修正率も示している。例えば、2月調査での表翌月見込と、3月の生産見込が、2月調査時点と3月調査時点でどれだけ変わったかを知ることができる。この、同じ月の生産見込の前月調査と当月調査との間での増減率を、予測修正率という。

 前月初旬に調査された翌月の計画値と、当月初旬に調査された当月の計画値とでは、かなり変動が生じているようだ。前者より後者が下振れすることが多いようだが、先にみた実現率と比べると、予測修正率はプラスになる場合も間々みられる。
 製造工業生産予測指数から生産の先行きを考えるに当たっては、予測修正率にはこうした振れがあることも考慮しておいた方がよいだろう。
 このように、製造工業生産予測指数では、前月実績、当月見込、翌月見込と、これらを用いて「実現率」や「予測修正率」などを公表している。グラフでご覧いただいたように、実績は前月時点での見込より下振れすることも多いが、この指数に含まれている傾向にも留意しつつ、「将来予測」を行うひとつのツールとして、ご活用いただきたい。
 なお、上でみたような製造工業生産予測指数がもつ傾向的な部分を修正しつつ、鉱工業指数の先行きをより適切に把握できるよう、鉱工業指数に当てはめた場合の翌月の鉱工業指数の補正値を前月比の形で試算し、公表している。
 詳細は、ミニ経済分析「企業の生産計画は実績をどれくらい予見できているか-製造工業生産予測指数の上方バイアスを補正する試み-」をご覧いただきたい。