「カーボン」「水素」を切り札に
地球規模の課題にどう向き合う
G20(主要20カ国・地域)会議の議長国として、日本は地球規模の課題においても議論を主導する構えだ。その原動力となるのはイノベーションである。
CO2は「厄介者」じゃない
例えば、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を「厄介者」ではなく「炭素資源」と捉える逆転の発想で、気候変動問題に挑む「カーボンリサイクル」という考え方。6月15、16日に長野県軽井沢町で開かれるG20エネルギー環境大臣会合で日本は、カーボンリサイクル技術に関するロードマップを示し、連携を呼びかけることにしている。
化石燃料が引き続き主要なエネルギー源の一つと見込まれる中、「カーボンリサイクル」、すなわち分離・回収したCO2の有効利用は世界的にも注目の高いテーマだ。
例えば分離・回収したCO2と水素を原料に、触媒を利用して都市ガスの主要成分であるメタンなどを作る技術や太陽エネルギーを用いてCO2と水からプラスチック原料などを作る人工光合成の技術、あるいは藻にCO2を供給しバイオ燃料とする技術も有望視されている。「一番優れた、しかも最も手に入れやすい、多くの用途に適した資源になるかもしれない」。安倍晋三首相は1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でその重要性についてこう言及した。賛同する国や企業が広がれば、技術開発は加速し、実用化が近づく。
今年9月には世界の主要な国の産官学の関係者が参加する「カーボンリサイクル産学官国際会議」も開催予定だ。イノベーションを効率的に推進するための課題について議論を深めることにしている。
この枠組みだからこそ
議論のテーマが多様化した結果、各国の思惑が複雑に絡み合い、合意形成が困難になった側面が指摘される昨今のG20だが、G20の枠組みだからこそ国際協調が期待されるもうひとつの分野がある。
エネルギー転換・脱炭素化のカギを握る水素の利活用推進である。地球温暖化防止の枠組み「パリ協定」の長期戦略に基づき、CO2を排出しないエネルギー源として水素社会の実現を目指す日本だが、この技術を海外展開することで、国際社会に貢献できると考えられている。
水素をメインテーマに扱う閣僚レベルの国際会議としては世界初となる「水素閣僚会議」。2018年10月に日本で初開催されたこの会議では、水素に関する研究開発を進めるため、各国および企業間の連携促進や基準や規制といったルールづくりでも協調する方針が確認された。
欧米や中国など21の国と地域が参加した「水素閣僚会議」の参加国のほぼ半分はG20メンバー。ゆえに一連のG20会議は、水素社会の実現を軸とした国際連携をさらに前進させる弾みとなる。