9月の鉱工業生産は、自動車工業や無機・有機化学工業などが上昇。基調判断は、「一進一退」に据え置き
9月の生産は2か月ぶりの前月比上昇
2024年9月の鉱工業生産は、季節調整済指数101.1、前月比1.4%の上昇となった。
これまでの生産の動向については、2024年1月~6月までは、自動車工業などにおける工場稼働停止や再開などの影響もあり、生産は一進一退ながら弱含みで推移してきたが、7月は電気・情報通信機械工業や生産用機械工業をはじめ幅広い業種で上昇したことから、全体として上昇、8月は台風による工場稼働停止などの影響を受けて、自動車工業などが低下したことから、全体として低下した。そして、9月は自動車工業や無機・有機化学工業などが上昇したことから、全体として2か月ぶりに上昇した。
全15業種のうち10業種が上昇
9月の鉱工業生産を業種別にみると、全15業種のうち10業種が前月比上昇、5業種が同低下という結果だった。
自動車工業や無機・有機化学工業などで上昇したことから、全体として上昇した。
上昇寄与度の最も大きかった自動車工業では、普通乗用車、自動車用エンジンなどが主な上昇要因となっている。このほか、次に上昇寄与度が大きかった無機・有機化学工業では、フェノール、ポリエチレンなどが、その次に上昇寄与度が大きかった電気・情報通信機械工業では、セパレート形エアコン、開閉制御装置などが主な上昇要因となっている。
一方、低下寄与度が最も大きかった生産用機械工業では、半導体製造装置などが主な低下要因となっているほか、次に低下寄与度が大きかった輸送機械工業(除.自動車工業)では、ショベルトラック(除.建設用)などが主な低下要因となっている。
出荷は2か月ぶりの上昇
9月の鉱工業出荷は、季節調整済指数99.7、前月比2.3%と、2か月ぶりの上昇となった。
業種別にみると、全15業種のうち10業種が前月比上昇、5業種が同低下という結果だった。
9月は、自動車工業、鉄鋼・非鉄金属工業などが上昇したことから、全体として上昇した。
上昇寄与度の最も大きかった自動車工業では、普通乗用車、小型乗用車などが、次に上昇寄与度が大きかった鉄鋼・非鉄金属工業では、亜鉛めっき鋼板、普通鋼鋼板などが主な上昇要因となっている。
一方、低下寄与度が最も大きかった輸送機械工業(除.自動車工業)では鋼船、航空機用機体部品などが、次に低下寄与度が大きかった化学工業(除.無機・有機化学工業・医薬品)では、乳液・化粧水類、仕上用化粧品などが主な低下要因となっている。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財が、リチウムイオン蓄電池、モス型IC(メモリ)などの出荷増により、前月比4.0%と上昇。耐久消費財が小型乗用車、普通乗用車などの出荷増により同4.2%と上昇。建設財が同3.2%と上昇となった。一方、資本財(除.輸送機械)が半導体製造装置や一般用蒸気タービンなどの出荷減により、同マイナス2.1%と低下。非耐久消費財が同マイナス2.6%と低下となった。
在庫は2か月ぶりの上昇
9月の鉱工業在庫は、季節調整済指数102.3、前月比0.1%と、2か月ぶりの上昇となった。
業種別にみると、全15業種のうち、10業種が前月比上昇、5業種が同低下となった。
上昇寄与度の最も大きかった電子部品・デバイス工業では、アクティブ型液晶パネル(大型)、アクティブ型液晶パネル(中・小型)などが主な上昇要因となっている。一方、低下寄与度が最も大きかった自動車工業では、普通トラックや小型乗用車などが主な低下要因となっている。
在庫率は2か月ぶりの低下
9月の鉱工業在庫率は、季節調整済指数105.6、前月比マイナス3.8%と、2か月ぶりの低下となった。
業種別にみると、全15業種のうち、11業種が低下、4業種が上昇となった。
在庫循環図をみると、2021年第3四半期までは、「在庫積み増し局面」にあり、同年第4四半期から2023年第2四半期までの期間は、「在庫積み上がり局面」に位置していたが、2023年第3四半期には、「在庫調整局面」に達し、2024年7月速報公表時点では、「在庫調整局面」を抜け出て「意図せざる在庫減局面」に入ったが、2024年第3四半期(速)では、いまだに「在庫調整局面」にとどまる結果となった。
これまで、一部の業種において、積極的に在庫の削減に取り組まれてきたと考えられ、その効果が顕在化されてきた可能性があるが、今後の動向に注視していく必要がある。
9月の生産の基調判断は、「一進一退」に据え置き
2024年9月の鉱工業生産は、前月比1.4%と上昇した。
これまでの生産は、2024年1月~6月までは、自動車工業などにおける工場稼働停止や再開などの影響もあり、生産は一進一退ながら弱含みで推移してきたが、7月は電気・情報通信機械工業や生産用機械工業をはじめ幅広い業種で上昇したことから、全体として上昇、8月は台風による工場稼働停止などの影響を受けて、自動車工業などが低下したことから低下、そして9月は自動車工業や無機・有機化学工業などが上昇したことから、全体として2か月ぶりに上昇した。
こうした中、先行きに関しては、企業の生産計画では、10月は上昇、11月は低下を見込んでいるが、企業の生産計画は、しばしば実績から上振れする傾向があることから、こうした影響も考慮すれば、一進一退の傾向は継続するものと見込まれる。
こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の9月の基調判断については、「一進一退」に据え置く。
なお、今後は、世界経済の動向などについて、注視していく。