統計は語る

食べ終わるまでがおせちです! 〜おせちから考える食品流通④〜

おせち料理から食品流通について考えるシリーズの最後は、食品ロス(注1)について考える。
注1:「食品ロス」(フードロスとも言う)とは、本来食べられるにもかかわらず捨てられる食品のこと。

食べ終わるまでがおせちです!

おせちの調達と一緒に考えたいのが、無駄なく食べ切る工夫である。

食料の多くを輸入に依存する日本。令和元年には、食品ロスの削減を推進することを目的とする「食品ロスの削減の推進に関する法律」(「食品ロス削減推進法」)が施行された。毎年、発生する恵方巻の大量廃棄に強い関心をお持ちの方も多いのではないだろうか。

環境省の調査によると、事業系と家庭系を合わせたごみ全体の総排出量は年々減少傾向にあって、2022年度の1年間で4,034万トンだった。ところが、そのうちの食品ロスは、472万トン(事業系・家庭系の合計)にものぼり、ごみ総排出量の12%近い量を占めている。

しかも、食品ロスは、売れ残りによるものばかりでなく、約半数が家庭から出たものだ。

家庭系の食品ロスは、「直接廃棄」「過剰除去」「食べ残し」の3つに分かれるが、このうち、「直接廃棄」(消費期限切れなどにより廃棄)と、「食べ残し」(食べ切れずに廃棄)とで家庭系食品ロスの8割以上になり、いずれも計画的な購入・調理で防げたものだった。

食品廃棄物は、有限な資源を使って生産・輸入、輸送、販売された食品を、資源を使って(しかも税金で)焼却・埋立てなどの廃棄処理を行うので、社会全体から見て大変な無駄である。

「食品ロス削減推進法」の施行を受けて令和2年に閣議決定された「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」では、「2030年度までに食品ロス量を2000年度比で半減」という目標を推進している。

2023年1月、佐賀県唐津市のスーパーで、需要などに応じて柔軟に価格変更させる「ダイナミックプライシング」技術で賞味期限切れによる食品廃棄を減らす、経済産業省の実証事業が約1か月間行われた(注2)。POSなどでシステムについて周知するなどの工夫で、実証実験開始3週間目には食品の廃棄率0%台を達成。解決すべき課題はあるものの、今後の更なるDX活用と運用の工夫によって食品ロスを減らす効果が期待できそうだ。
注2: 経済産業省「METI Journal ONLINE」2023年9月14日公表記事「政策特集 食を支えるイノベーション vol.2 スーパーで食品ロスを削減。「データマトリックス」採用の新方式で価格変更柔軟に」

市販のおせちでも、家庭での手作りでも、消費期限内に食べ切れるだけの量を計画的に購入、おせちで食べなかった分は他に利用するなどして、未開封のままでの廃棄を減らし、おせちを最後まで綺麗にいただきたいものだ。

今後も、私たちの暮らしに根付いた食品をめぐる動向について注視していく。

(本解説に関する注意事項)
本解説は、公に入手可能で、経済産業省経済解析室が信頼できると判断した情報を用いて作成している。ただし、使用した情報を全て、個別に検証しているものではないため、これらの情報が全て、完全かつ正確であることを保証するものではない。
また、本解説は、統計などの利活用促進を目的に、経済解析室の分析、見解を示したものであり、経済産業省を代表した見解ではない。

おせちから考える食品流通-第4部 食べ終わるまでがおせちです!