祖父の最後のプレゼント
「わぁ、江戸切子だ…」
数年前、「これおじいちゃんから」と母から手渡された箱に入っていたのは、きれいな江戸切子の器でした。亡くなった祖父の部屋を母が片付けた時に、自身の葬儀で親族に渡すための香典返しとして、箱に入った状態で複数出てきたそうです。祖父は、何事も事前に準備しておく几帳面な性格でしたが、香典返しまで用意していたとは驚きでした。品物は紫色の小さな江戸切子のお猪口が2つセットになったもので、とても素敵でした。
ちょうど家で日本酒を楽しむための器を探していた私は、心の中で祖父にお礼を言いつつ、早速使わせてもらいました。美しい江戸切子は目で見るだけでも楽しいですが、使うとまた格別です。
好きな銘柄の日本酒を注ぎ、涼しげな模様を眺めながら一口飲むと、まるで水のようにするっと喉をとおり、なんともいえない良い後味。美味しいお酒がさらに美味しく感じます。
祖父が最後にプレゼントしてくれたのは、美味しい日本酒を伝統的工芸品「江戸切子」の器でいただく幸せと、品物に込められた暖かな愛情でした。
さて、4月の特集「伝統的工芸品の灯を絶やさない」はいかがでしたでしょうか。
特集の第1回で、伝統的工芸品指定小委員会の委員長を務めたMOA美術館の内田篤呉(とくご)館長が言及されているように、伝統的工芸品の魅力はまさに「実用品であること。使うということ」なのかなと思います。海外にも魅力が伝わり、注目されている伝統的工芸品の品々ですが、ただ美しいだけではない、職人の方々が「使う人の幸せを願って」つくられた伝統的工芸品の魅力を改めて感じる特集となっていれば幸いです。
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2024年1月に発生した能登半島地震は、伝統的工芸品の産地にも大きな傷跡を残しました。特集の第4回では、石川県の伝統的工芸品に関わる方々にお話を伺い、事業再開に向けた政府の支援について紹介しました。
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職員が「思い」を語る「METI解体新書」では、能登半島地震の発災直後に、経済産業省から現地に入り、自治体と連携して避難所へ物資を届ける業務に対応した職員4名に話を聞きました。被災地に物資を確実に届けるため、物資輸送拠点に滞在し、災害対応業務のリレーを繋いだ4名が感じた復興への思いとは。ぜひご覧いただけると嬉しいです。
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今年は「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」(伝産法)の施行50周年です。
ぜひ、日本の誇る伝統的工芸品について知り、日々の生活で使ってみませんか。
そして、今月の政策特集は「拡張する介護領域」です。高齢化による社会課題への対応はこれからが本番。でも、医療・介護の拡大する需要の大半は公的保険で、公的保険の外側(民間サービス)で、自らの健康を含めたQOL向上のための消費は限定的です。特に需要の拡大が見込まれる「介護」領域では、ケアラーの負担やそれによる経済損失なども踏まえながら、地域・職域の双方における対応が求められています。
今回は、「介護」周辺領域での、ビジネス展開の可能性についてご紹介。介護を「個人の課題」から「みんなの話題」にする社会機運の醸成、公的保険外のサービスの活用やロボット技術・ICTの活用、仕事と介護の両立に向けた取り組みや、認知症になっても自分らしく暮らし続けられる「共生」社会の実現など、経済産業省が厚生労働省と連携して進める「介護領域」の政策を特集でお届けします。
どうぞお楽しみに。
経済産業省広報室/METI Journalオンライン編集チーム
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