政策特集航空産業 飛躍の時 vol.7

オールジャパンの技術の粋、防衛装備品


 日本の航空機産業は、国産ジェット旅客機「MRJ」よりも大型の国産機をすでに実用化している。航空自衛隊の輸送機「C-2」と海上自衛隊の哨戒機「P-1」だ。

輸送機と哨戒機の開発

 戦後初の国産旅客機「YS-11」は民間航空会社だけではなく、海上保安庁や自衛隊により採用されてきた。現在では、航空自衛隊が国内最後のYS-11の運用者であり、電子偵察機等として運用している。その後、戦後初の国産輸送機であるC-1輸送機が開発され、1970年に初飛行した。YS-11はプロペラ機であるが、C-1輸送機はターボファンエンジンを搭載した国産ジェット機だ。
 さらに、国際平和協力活動の対応など、各種事態や災害等への迅速な展開・対処能力を確保するため、C-1輸送機の後継機としてC-2輸送機が国産開発された。C-1輸送機に比べ、近代化された装備を持つとともに、約4倍の航続距離、約3倍の搭載重量によって、より多くの貨物をより遠くへ運ぶことが可能となった。
 C-2輸送機と同時に、米ロッキード社のP-3C哨戒機の後継として、P-1哨戒機が国産開発された。わが国の広大な周辺海域の長時間の哨戒任務を遂行するために、当初から哨戒機として開発された航空機であり、ターボファンエンジンも国産だ。四方を海に囲まれた日本にとって重要となる哨戒任務を達成するため、P-1哨戒機には、潜水艦等の目標の探知能力の向上が図られている。

Pー1哨戒機(出典:海上自衛隊ホームページ)

 C-2輸送機とP-1哨戒機は、川崎重工が主契約企業として全体の取りまとめ役となり、航空産業各社が長年培ってきた技術力を結集したオールジャパン体制で開発された国産機だが、それに加えて両機は、同時開発された“兄弟機”として誕生した点に特徴があり、主翼や水平尾翼などを一部共用化するといった工夫がなされた。オールジャパン体制で開発された2機種の今後の活躍が期待されている。

防衛装備・技術協力の進展

 2017年6月に開催されたパリ航空ショーでは、P-1哨戒機を初めて海外で展示を行い、2018年4月には、ベルリン国際航空宇宙ショーにおいて、海外で初めて飛行デモンストレーションを実施した。また、2017年11月のドバイ・エアショー、さらには2018年7月に英国で開催された英国空軍国際航空ショーにおいてC-2輸送機の展示を行った。このような出展を通じて、両機の性能を発信し、諸外国との防衛装備・技術協力の進展を図っている。
 航空機部品の移転を通じた防衛装備・技術協力も進展している。日本企業がライセンス生産を行っているF-15戦闘機に搭載されるエンジン部品の米国のライセンス元への移転について、同盟国たる米国との安全保障・防衛分野の協力の強化に資するものとして、海外移転を認め得る案件に該当することが国家安全保障会議で確認された。

防衛分野で培われた技術の様々な分野での活用

 防衛分野の航空機の開発・製造を通じて蓄積された技術は、民間分野の航空機においても活用されている。「F-2」戦闘機の開発では複合材主翼の実現などの技術を蓄積し、その成果は、日本企業が製造を担うボーイングの中型ジェット旅客機「787」向けの複合材主翼にも活用されている。日本の優れた技術力が評価されたものであると言えるだろう。

Fー2戦闘機(出典:航空自衛隊ホームページ)

 また、海上自衛隊が運用する「US-2」は、飛行機と船の両方の特徴を持つ飛行艇であり、陸上だけでなく海面での離着水できる航空機だ。救難機「US-2」の有する水陸両用能力を活用することで、医療施設が不足している離島などの急患患者の緊急輸送や洋上における救難活動といった場面でも活躍している。

救難機USー2(出典:海上自衛隊ホームページ)

 防衛機事業と民間機事業は、航空機産業を牽引する車の両輪だ。日本の航空機産業は、防衛分野でも新たな挑戦を続け、次の飛躍につなげていく。