「酒離れ」は若者だけではなかった
鉱工業指数からみえてきた消費の実態
経済解析室で公表している鉱工業指数では、工場のロボットや車などの工業製品の他にも、衣類や食料品といった身近な商品の国内生産や出荷の動きをみることもできる。そんな商品の一つに酒類がある。
減少を続ける酒類出荷
酒類は「ウイスキーが売れすぎて原酒が不足し、特定銘柄で生産休止」など、一部では活況を感じさせるニュースもあるものの、全体的には年々出荷が減少している。食料品製造と比べても、落ち込みの違いは明らかだ。例えば、代表的なものとしてビールをみると、国産の課税移出量は平成19年の346万キロリットルから平成29年には259万キロリットルと、10年で約25%も減少している。日本酒も同様に、平成19年度の73万キロリットルから平成29年度には52万キロリットルと、30%近い減少となっている。
こうした酒類出荷の低下に対しては、「若者の酒離れ」という話がまことしやかに語られている。そこで、世帯の世代別に、酒類支出額が実際どうなっているのか確認してみよう。
実は30代・40代が支出減
下のグラフは、世帯の支出を調査した家計調査のデータから、10年前と今の酒類への支出を、世帯主の年齢別に描いたものだ。
30歳未満の若年世帯における酒類への支出が減っていることは事実だが、それ以上に30代・40代の世帯で支出が減少していることが確認できる。「酒離れ」をあえて言うならば、「若・中年の酒離れ」といったところだろうか。
シニア世代の需要は旺盛
また、興味深いのが、60代以上の世帯では酒類への支出が増えていること。さまざまな分野で、伸びている需要世代の年齢が上がるという現象がみられており、例えばボーリングやパチンコといった娯楽分野でもこうした傾向が確認できる。同様の変化が、酒類への支出という分野でも確認できるのである。
鉱工業指数というと、少し堅苦しいかもしれないが、その数値の背景を探ってみると、存外、身近な変化が指数を動かしていることをご理解いただけたかもしれない。