統計は語る

サービス業の海外展開、卸売業が先行

日系製造業の海外出荷拡大も後押し


 グローバル化の進展が著しい昨今、日系企業の活動は日本国内にとどまらず、幅広く世界中で展開されており、国内外の企業活動の動向を把握する重要性はますます高まっている。
今回は、「海外事業活動基本調査」を用いて、海外に設立された現地法人のうち、非製造業を営んでいる現地法人の活動を、業種別に見て、その特徴を確認してみたい。

サービス業の台頭

 非製造業を営む日系海外現地法人の活動を指数化したサービス産業海外拠点活動指数を試作している。
その指数の2015年度の業種別構成比をみると、基準年である2010年度には45.9%と全体の半分近くを占めていた「卸売業」がマイナス8.6ポイントと、引き続き最も大きな構成比ではあるものの、存在感を低下させていた。
そのほか、情報通信業や小売業など、軒並み構成比を低下させる中、サービス業だけは唯一、構成比を大きく上昇させている。2010年度の16.8%から2015年度には35.5%と、卸売業の構成比に匹敵するほどの勢いだ。

    

国内外で明暗

 サービス産業海外拠点活動指数全体に占める構成比が最も大きい卸売業について、その販売額を国内活動と比較してみると、どうなっているだろうか。
 名目金額で対比可能な商業動態統計の国内の卸売業と比較すると、国内の卸売業の2015年度の販売額は315兆円、海外の卸売業の販売額は103兆円だった。国内卸売業のほぼ3分の1にまで規模が拡大している。
国内と海外現地法人の動きは、ともにいわゆるリーマンショックを挟んだ世界的な経済ショックで大きく低下し、少しそこから回復する2012年度まではほとんど同じだった。しかし、2013年度以降は両者の動きが対照的で明暗が分かれている。
国内の卸売業は、2013年度はやや上昇したが、2014、2015年度と2年連続で低下しており、2015年度の数値は、リーマンショックの影響で大きく落ち込んだ2009年度の317兆円を下回る水準となっている。
 一方、海外現地法人の卸売業は、2013年度以降に急上昇しており、2014年度には節目となる100兆円を突破した。2015年度も前年度比は上昇となっており高い水準を維持している。この海外現地法人における日系卸売業の急上昇の背景には、日系製造業の海外出荷拡大が影響しているものと思われる。

     

顕著な差異ない小売業

 それでは、卸売業とともに名目金額での比較が可能な小売業について、国内と海外現地法人の動向を確認してみよう。
まず、2015年度の国内小売業販売額は約141兆円、海外小売業の販売額は7兆円程度と、卸売業と異なり、かなり金額に水準差がある(海外は国内の20分の1程度)。
日系小売業の海外展開は、卸売業に比べると、まだまだということになる。
国内と海外現地法人の動きをみると、概ね両者の動きは同じであるように見えるが、2014、2015年度の2年間だけは明らかに異なる動きを示している。
 国内の小売業が2014年度に低下しているのは、2014年4月の消費税率引上げが1つの要因になっていると考えられる。2015年度にはその影響が和らいだものの、消費税率引上げ前の2013年度の水準には戻っていない。
他方、海外現地法人の小売業については、2014年度までは右肩上がりの順調な推移だったが、2015年度に急落している。この背景については、確定的なことが分かっていないことから、判断は保留したい。

   

 このように、「海外事業活動基本調査」と「商業動態統計」を用いると、日本企業の国内外における動向を、商業の内外の動きにスポットをあてて確認することができる。
 今回は、名目金額で比較可能な卸売業と小売業の動向を確認した。日系製造業のグローバルな展開との連動が推察される卸売業の海外現地法人と、まだ規模的に国内の20分の1程度に留まる小売業の海外現地法人とで、かなり差があることが分かっていただけたのではないだろうか。
 先日も、GDPに占める割合が最も大きい第3次産業(サービス産業)について、日系企業の海外拠点(現地法人)活動の動向を把握するため、ミニ経済分析『「日系サービス(非製造)産業の海外展開把握の試み」;拠点(現地法人)経由のサービス産業活動指数の試作』を公表した。
業種別の指数推移も掲載しているので、コチラもあわせてご覧ください。

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