統計は語る

6月の鉱工業生産は、中国でのロックダウン等の解除などを受けて、3か月ぶりの上昇

6月生産は3か月ぶりの前月比上昇

 2022年6月の鉱工業生産は、季節調整済指数95.8、前月比8.9%と、3か月ぶりの上昇となった。

 これまでの生産の動向については、2022年1月に、部材供給不足や新型コロナウイルス感染症急拡大などの影響を受けて低下したが、2月と3月は、部材供給不足や新型コロナウイルス感染症拡大等の影響が緩和したことなどを受けて、2か月連続で上昇した。

 その後、4月と5月は、中国でのロックダウン等の影響を受けて低下したが、6月は、中国でのロックダウン等の解除などを受けて、3か月ぶりに上昇に転じた。

11業種が前月比上昇、4業種が前月比低下

 6月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、11業種が前月比上昇、4業種が前月比低下という結果だった。

6月は、中国でのロックダウン等の解除などを受けて、自動車工業や電気・情報通信機械工業、電子部品・デバイス工業など、多くの業種が上昇したことから、全体として上昇した。

 主な上昇寄与業種についてみると、上昇寄与度の最も大きかった自動車工業は、普通乗用車、普通トラック等が主な上昇要因となっている。これらについては、いずれも中国でのロックダウン等の解除などを受けて、上昇したものと考えられる。

 また、次に上昇寄与度の大きかった電気・情報通信機械工業は、基地局通信装置、自動車用電気照明器具等が主な上昇要因となっている。基地局通信装置については、国内事業者向けの増加などにより、自動車用電気照明器具については、完成車の生産増に伴う増加により、上昇したものと考えらる。

 さらに、その次に上昇寄与度の大きかった電子部品・デバイス工業は、モス型半導体集積回路(メモリ)、アクティブ型液晶パネル(大型)等が主な上昇要因となっている。モス型半導体集積回路(メモリ)については、堅調な半導体需要により、アクティブ型液晶パネル(大型)については、タブレット端末用の需要の増加などにより、上昇したものと考えられる。

出荷は3か月ぶりの上昇

 6月の鉱工業出荷は、季節調整済指数93.3、前月比4.6%と、3か月ぶりの上昇となった。

 業種別にみると、全体15業種のうち、13業種が上昇、2業種が低下となった。

 6月は、中国でのロックダウン等の解除などを受けて、自動車工業や電気・情報通信機械工業、生産用機械工業など、多くの業種が上昇したことから、全体として上昇した。

 上昇寄与度の最も大きかった自動車工業は、普通乗用車、自動車エンジン等が主な上昇要因となっている。これらについては、いずれも生産と同様に、中国でのロックダウン等の解除などを受けて、上昇したものと考えられる。

 また、次に上昇寄与度の大きかった電気・情報通信機械工業は、基地局通信装置やリチウムイオン蓄電池等が主な上昇要因となっている。基地局通信装置については、生産と同様に国内事業者向けの増加などにより、リチウムイオン蓄電池については、車載用の需要の増加などにより、上昇した。

 さらに、その次に上昇寄与度の大きかった生産用機械工業は、半導体製造装置、マシニングセンタ等が主な上昇要因となっている。これらについては、堅調な海外需要などを受けて、上昇した。

 財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財が前月比5.2%の上昇、耐久消費財が同14.5%の上昇、資本財(除.輸送機械)が同7.4%の上昇、建設財が同2.1%の上昇となり、非耐久消費財を除き、上昇した。

在庫は4か月ぶりの上昇

 6月の鉱工業在庫は、季節調整済指数99.8、前月比2.1%と、4か月ぶりの上昇となった。

 業種別にみると、15業種のうち、11業種が上昇、4業種が低下となった。

 上昇寄与業種の中では、特に、自動車工業の上昇寄与が大きくなっている。自動車工業では、中国でのロックダウン等の解除などにより、生産が上昇したことを受けて、在庫が上昇したものと思われる。

在庫率は2か月ぶりの低下

 6月の鉱工業在庫率は、季節調整済指数118.4、前月比マイナス1.0%と、2か月ぶりの低下となった。

 業種別にみると、15業種のうち、8業種が低下、7業種が上昇となった。

 在庫循環図をみると、2020年第4四半期と2021年第1四半期は、「意図せざる在庫減局面」にあり、2021年第2四半期には、「在庫積み増し局面」に達し、第3四半期も継続しましたが、第4四半期では、「在庫積み上がり局面」に達しており、2022年第2四半期(速)まで継続している。

 しかしながら、部材供給不足などによる生産減少の影響が含まれていることなどから、今後、もうしばらくその動向を注視していくことが必要だ。

 6月の生産の基調判断は、「一進一退」に引き上げ

 6月の鉱工業生産は、前月比8.9%の上昇となった。

 生産は、2022年1月に、部材供給不足や新型コロナウイルス感染症急拡大などの影響を受けて低下したが、2月と3月は、部材供給不足や新型コロナウイルス感染症拡大の影響が緩和したことなどを受けて、2か月連続で上昇した。

 こうした中、4月と5月は、中国でのロックダウン等の影響を受けて低下したが、6月は、中国でのロックダウン等の解除などを受けて、大幅に上昇した。

 また、先行きに関しては、企業の生産計画では、7月と8月はともに上昇となっている一方で、7月の補正値は前月比0.9%の低下を見込んでおり、ならしてみると一進一退で推移していると考えている。

 こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の6月の基調判断については、「一進一退」に引き上げる。

 なお、今後は、引き続き、変異タイプの新型コロナウイルス感染症の拡大による内外経済への影響や、部材供給不足の影響、物価上昇の影響などについて、注視していく。

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参考図表集
マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」