逆輸入は右肩上がりも、勢いは鈍化
リーマンショックを境に構造変化?
*グローバル出荷指数とは
「鉱工業指数」という言葉を耳にしたことがあるという方は多いのではないだろうか。
「鉱工業指数」とは、鉱工業製品を生産する国内の事業所における生産、出荷、在庫の動向を指標化したもので、簡便にそれらの動きを捉え、比較することができる。
今や日本製造業の活動は、グローバル化していることから、国内の事業所の活動だけでは、その全貌を推し量ることができない。そこで、「鉱工業指数」や日本企業の海外における活動動向を捉えた「海外現地法人四半期調査」等をもとに、日本の製造業のグローバルな活動(具体的には、海外出荷と国内出荷の合計)を指標化したものが「グローバル出荷指数」だ。
この指標により、海外生産と国内生産の動きを簡便に比較することができる。
着実に増加する日本への「逆輸入」
グローバル出荷指数では、日系海外現地法人の出荷を、仕向け先別に、「日本向け」「自国向け(現地向け)」「第三国向け」で把握することができる。
このうち、「日本向け」出荷指数の動きに着目してみると、「日本向け」出荷指数は、2015年第Ⅱ期からの約1年弱は緩やかな低下基調を示したが、2016年第Ⅳ期に大きく上昇し、2017年第Ⅱ期まで過去最高レベルの水準を維持している。
2012年第Ⅱ期からの大きな流れとしては、上昇基調の推移と言え、日本への逆輸入である日本向け出荷の着実な増加基調が読み取れる。
日本向け出荷における「構造変化」
このように、着実な増加傾向を見せる「日本向け出荷」指数だが、この推移を「一本調子の上昇」と評価して良いのだろうか?より長いスパンで、何らかの変化が生じていなかったか確認してみよう。
以下のグラフでは、黒線が2001年からの2017年までの「日本向け出荷指数」を示しており、赤線がその傾向線となっている。この傾向線は、以下の推計式についてチャウ検定を行い、大きな構造変化が起こった可能性が高いと見られる前後で、それぞれの傾向線を引いたものだ。
日本製造業の海外現地法人からの日本向け出荷指数は、2008年第Ⅳ四半期を境目に、傾向線の傾きが緩やかになっており、この時点で大きな構造変化が起きたことがわかる。
2008年第Ⅳ四半期といえば、世界経済を震撼させた、リーマンショックの直後の時期と重なる。強い勢いを見せて増加していた海外日系製造業の日本への逆輸入だが、リーマンショックを挟んで、その勢いが大きく弱まったことが分かる。
世界経済に大きな影響を与えたリーマンショックは、日本の製造業のグローバル・サプライチェーンにも大きな影響があったのは、想像に難くないが、その一端が日系製造業の「逆輸入の勢いの鈍化」という形として明確に表れている。
関連情報
日本への逆輸入は、リーマンショックを挟んで緩やかに;グローバル出荷指数の日本向け出荷指数の推移に見出される構造変化