出遅れ感のある日本の鉱工業生産、国際的にはどこまで回復?
OECD加盟国などとの比較
着実に回復が進む日本の鉱工業生産
世界的に大流行した新型コロナウイルス感染症の影響により急速に落ち込んだ日本の鉱工業の生産活動も、2020年6月以降、着実に回復を遂げた。
2015年を100とする鉱工業生産指数で、感染症拡大前の生産水準は2019年第4四半期(10~12月期)は指数値98.0であるのに対し、2020年第2四半期(4~6月期)は81.5まで水準を落としたが、直近の2021年第1四半期(1~3月期)は96.6にまで回復した。月単位での動きを見ると、2021年4月に指数値は100となり、一時は、感染症拡大前(2019年12月)の97.9を超え、着実に回復しているように見える日本の鉱工業生産だが、世界的にはどのような位置付けになるのか。
日本の鉱工業生産の回復には未だ出遅れ感
以下は、経済開発協力機構(OECD)が発表している、OECD加盟国と一部の新興国の2019年と2020年の鉱工業生産指数を比較した結果となっているが、ほとんどの国で、2019年に比べ2020年の鉱工業生産は落ち込んでいることがわかる。
その中でも日本は、39ヶ国の中で、低下幅は6番目に大きく、世界の中でも、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が非常に大きかったことがわかる。
さらに、各国で、感染症拡大の影響がどの程度であったかを詳細に見るため、感染症拡大の影響で鉱工業生産が最も低下した時期と、感染症拡大前の水準とを比較してみる。
全ての国で、2020年第2四半期(4~6月期)が、鉱工業生産指数が最も低い水準になっている。そこで、2019年の水準と2020年第2四半期を比較すると、最も低下している国で30%以上の低下、低下幅が小さい国では0.5%程度の低下と、各国でかなりのばらつきがあることがわかる。
その中で、日本の低下幅は、各国の中では中位に位置しており、日本は、各国と比較しても、極端に落ち込みが大きかったわけではないことがわかる。
各国とも、2020年第2四半期を底に、その後は鉱工業生産は回復に向かっている。現在の回復状況を見るため、2021年第1四半期と2019年の水準を比べてみたいと思う。
以下のグラフがその結果となるが、39ヶ国のうち、半数以上が2019年の水準を超えており、回復が最も遅い国でも、2019年と比較して、5%程度の低下にまで戻ってきている。
その中で、日本は2021年第1四半期は2019年の水準にまで戻っておらず、回復水準は、39ヶ国の中で、下から7番目となっている。
日本の鉱工業生産は着実に回復しているものの、世界的に見ると、感染症拡大の影響からの回復に出遅れている感がある。
世界経済は回復の見通し。輸出を中心に日本の鉱工業生産も更なる回復が期待
現在、世界各国で行われている経済回復に向けた追加的な政策支援や、感染症に対するワクチン接種の進展などによって、世界経済は回復に向かうのではないかとの期待感がある。
OECDが公表した各国の実質GDP成長率によると、2020年にプラス成長となったのは、46ヶ国中3ヶ国(アイルランド、中国、トルコ)だけだったが、2021年、2022年の成長率は、各国ともプラスの見通しだ。
日本の経済成長率見通しは46ヶ国中最下位と厳しい見通しであるものの、世界的に経済回復が進むことで、日本の鉱工業生産も輸出を中心に、さらに回復が進むことが期待される。
もっとも、日本の鉱工業生産のうち8割が内需向けであり、国内の経済状況が鉱工業生産の回復に強く影響することから、国内の経済活動の回復も強く期待される。