2021年4月の鉱工業出荷、内需・外需ともに前月比上昇
輸出向けはコロナ前の水準に回復
国内向け出荷は2か月連続の前月比上昇
2021年4月の鉱工業出荷は、季節調整済指数で97.3、前月比2.6%と2か月連続の上昇となった。出荷は2020年2月の98.5以来の水準まで回復した。内需(国内向け出荷)は前月比1.1%の上昇、外需(輸出向け出荷)は前月比7.1%の上昇で、4月はとくに外需が出荷全体のプラスに寄与した。
出荷水準をみると、まず国内向け出荷指数については、2021年4月の指数値は95.2で、新型コロナウイルス感染症拡大前の2020年1月の97.1と比べると未だ低い水準にとどまっている。
他方、輸出向け出荷指数については、2021年4月の指数値は104.1となった。輸出向け出荷は、一時は国内向けより大幅に落ち込んだが、10月以降は国内向け出荷を上回る回復をみせた。2021年4月は3か月ぶりの上昇となり、指数値は、感染症拡大前(2020年1月)の水準を超え、2019年3月の104.3以来の最も高い値となった。
業種別の動き
4月の国内向け出荷の業種別動向をみると、12業種中、8業種が前月比上昇となった。特に上昇寄与が大きかったのは電気・情報通信機械工業で、なかでも無線通信機器、電池などが上昇した。
次いで上昇寄与が大きかったのは、汎用・業務用機械工業で、なかでもボイラ・原動機、ポンプ・圧縮機器などが上昇した。
4月の輸出向け出荷の業種別動向をみると、12業種中、11業種が前月比上昇となった。特に上昇寄与が大きかったのは生産用機械工業だった。なかでも半導体・フラットパネルディスプレイ製造装置、建設・鉱山機械等が上昇した。
次いで上昇寄与が大きかったのは、輸送機械工業だった。なかでも船舶・同機関、車体・自動車部品などが上昇した。
需要先用途別の動き
4月の需要先別用途別分類(財別分類)の国内向け/輸出向け出荷の動きを比較してみる。
輸出向け出荷で上昇寄与が大きかった財別分類は、設備投資向けとなる資本財と製造業の中間投入となる生産財だった。この2つの財については、国内向け出荷においても上昇に寄与したが、輸出向け出荷ほどの上昇寄与ではなく、国内よりも海外の生産活動の方が堅調だったと考えられる。
一方、輸出向け出荷では、耐久消費財がマイナスとなっており、特に輸出向けの乗用車の出荷低下が影響した。
なお、耐久消費財は、国内向け出荷、輸出向け出荷とも、2020年5月まで大きく低落した後、6月以降10月まで5か月連続で上昇し、大きく回復したが、その後は上昇の勢いが一服し、低水準で推移している。
国内向け出荷では、資本財、生産財などが上昇したことで、国内向け出荷全体では上昇となった。輸出向け出荷では、耐久消費財が低下したものの、資本財などが上昇したことで、輸出向け出荷全体では上昇となった。
輸出仕向け先別の動向
4月の主要仕向け先別の輸出向け出荷の動きをみると、欧州向けは低下したものの、欧州以外の地域では上昇となった。
欧州向けは2か月ぶりの低下となった。コロナ感染症拡大による落ち込みから2020年5月を底に11月にかけて大きく回復したが、一進一退で推移している。米国向けも5月を底に10月まで大きく回復したが、その後は、低下傾向にあり、足下では低水準で推移している。
アジア向けでは、中国向けが2020年3月の大きな落ち込みの後、順調に回復し、2021年2月にも大きな低下があったが、上昇傾向で推移している。ASEAN向けも、2020年5月以降、順調な回復をみせており、アジア向け輸出が好調な様子がうかがえ、5月以降の輸出向け出荷の動向も注目される。
輸入品、総供給の動向
一方、輸入の動向をみると、4月は、季節調整済指数で104.2、前月比8.8%と2か月ぶりの上昇となった。輸入は2020年8月以降は上昇傾向で推移しており、3月は低下したが、4月は2018年11月の104.3以来の水準まで回復した。
業種別の動向をみると、13業種中、10業種が前月比上昇、3業種が低下となり、特に電気・情報通信機械工業が上昇に寄与した。
国産は前月比0.7%と2か月連続の上昇となり、鉱工業総供給は、前月比3.9%と2か月ぶりの上昇となった。
2021年4月の出荷は、輸出向け出荷、国内向け出荷ともにプラスとなり、2か月連続の上昇となった。
他方、先行きについては、内外経済の回復に伴い、出荷も中期的には回復が続くことが期待されるが、足下では、国内外における新型コロナウイルス感染症や、世界的な半導体不足などサプライチェーンの状況がもたらす影響にも十分注意する必要がある。5月以降、出荷が国内向け、輸出向けそれぞれどのように推移していくかについても、十分注意して見ていきたい。