統計は語る

コロナ禍の食卓に変化 麺類や贅沢な食材が消費増

ステイホームに伴い


 コロナ禍で国内の生産活動も大きな影響を受ける中、食料品の国内生産にはどのような影響が出ているのだろうか。
 鉱工業指数(経済産業省)をみると、2020年3~5月に食料品・たばこ工業の中で際だって伸びたのは麺類だった。新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、3月から全国の学校が休校となり、急に給食などのなくなった小中高生などの昼食用需要が増えたことに加え、4月には緊急事態宣言が発出され、テレワークや外出自粛も広がった。そのため、例年に比べ自宅で食事をする機会が増えたことによる需要増と考えられる。
 一方で、緊急事態宣言発出期間に大幅に減少したのが清涼飲料である。出勤や登校が減ったことによる外出先での需要や、ちょうどGWに重なったことで、観光地や移動中での需要も大幅に減ったと考えられる。

パスタや即席麺など大きく増加

 家計調査(総務省)から1ヶ月の世帯支出金額をみると、2020年3~5月の「麺類」の支出金額の前年同月比伸び率は3ヶ月連続で25%以上と大きく増加した。品目別でも軒並み伸びているが、パスタや即席麺の伸び率が特に大きいことから、家での食事が増える中、味に変化を付けられるものが特に人気だったのかもしれない。また、餃子の皮やシュウマイの皮などが含まれる「他の麺類」も伸びていることから、家で過ごす時間や調理の機会が増えたことで需要が伸びたものもあるようだ。

飲料全体は前月比プラスだが

 同じく家計調査で2020年3~5月の「飲料」の支出金額をみると、前年同月比でプラスとなっている。
 品目別では、茶飲料やコーヒー飲料は大きく減少しているが、「他の飲料」に含まれる炭酸飲料や乳酸菌飲料、ミネラルウォーター等は増加し、また緑茶葉やコーヒー豆、粉末のコーヒーなども伸び、「飲料」全体としては前年同月比プラスとなっている。これは上述の生産指数の動きと合わない結果だが、実は訳がある。
 生産指数の「清涼飲料」には代表品目として茶系飲料、コーヒー飲料、炭酸飲料のみが採用されている。そのため、緊急事態宣言期間中は、外出先や職場で多く飲まれていた茶系飲料やコーヒー飲料が大きく低下したことにより、「清涼飲料」の生産指数も低下した。しかし、家計調査の「飲料」には両者以外にも、炭酸飲料のほか、乳酸菌飲料、ミネラルウォーター、緑茶葉、コーヒー豆、粉末のコーヒーなども含まれ、これらが増加したため「飲料」全体の家計支出は前年と比べ増加となり、生産指数の動きと違いが生じたと考えられる。

背景に外食費の大幅減

 家計調査によると、2人以上の世帯の2020年3~5月の食費支出金額にはあまり変化がなかったものの、その内訳は大きく変わった。外食費が大幅に減り、代わりに家で調理する機会が増えたため、上述の麺類はもちろんのこと、特に野菜や肉類などへの支出が増えている。
 また、外食を控えた分、食材を少し贅沢にした傾向もみられる。例えば、魚介類では、「さけ」や「あじ」、「さば」に比べて、「たい(鯛)」や「うなぎのかば焼き」などが前年同月比で大きく伸びていることがわかる。

 その他、特徴的な動きをした品目は、外食でよく飲まれていたと考えられる高級なお酒(ウイスキー)や、簡単に調理のできる食材(小麦粉・もち)、自炊で使用頻度が増えたと考えられる調味料等(ソース、ケチャップ、つゆ・たれ、バター)への支出が増加した。他方で、まんじゅうやカステラといった菓子類への支出は低下しており、外出自粛で特に贈答用・お土産用の菓子需要が低下したと考えられる。

 2020年3~5月は、多くの方が初めて経験する特殊な事態となったが、このように統計からもその様子を見てとることができる。ぜひ、他の品目の動きなどもご覧いただきたい。