統計は語る

10月の鉱工業生産 5か月連続前月比プラス 上昇に勢いも

さらなる回復に期待


 本年10月の鉱工業生産は、季節調整済指数95.0、前月比3.8%と、5か月連続の前月比上昇となった。10月当初の企業の生産計画に含まれる上方バイアスを補正した試算値では、前月比1.4%の上昇(90%レンジではマイナス0.2%~3.0%の間)となっていたが、実際の10月の生産は試算値の90%レンジも上回り、上昇幅は今基準内で3番目に大きい、勢いのある上昇となった。
 生産は、新型コロナウイルス感染症の影響により、2月から5月まで低下を続け、指数水準も大幅に低下していたが、6月以降は一転、上昇が続いている。ただ、生産水準はいまだ低く、今後のさらなる回復が期待される。

汎用・業務用機械など大幅上昇

 10月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、12業種が前月比上昇、3業種が前月比低下という結果だった。
 10月は、汎用・業務用機械工業、自動車工業、電気・情報通信機械工業などが上昇に寄与した。

 上昇寄与の最も大きかった汎用・業務用機械工業は、前月比17.9%の上昇で、2か月ぶりでの大幅な上昇となった。コンベヤ、一般用蒸気タービン、運搬用クレーンなどが上昇要因となっている。10月は概して国内外向けとも需要の増加が上昇の要因としてあるようだ。
 上昇寄与2位の自動車工業は、前月比6.8%の上昇で、5か月連続の大幅な上昇だった。普通乗用車や普通トラックなどが上昇要因となっている。自動車工業の指数値は10月は104.7となり、感染症拡大前の指数値(1月:104.3)を上回る水準まで生産が回復した。前者については、輸出向けの生産増がみられ、挽回生産のための増産も行われたようである。後者についても、工場の生産ラインの稼働率を戻しての増産があったようだ。
 上昇寄与3位の電気・情報通信機械工業は、前月比8.4%の上昇で、2か月連続の大幅な上昇だった。ノート型パソコンや超音波応用装置などが上昇要因となっている。ノート型パソコンについては、需要増に伴い増産が行われたようだ。電気・情報通信機械工業についても、10月の指数値は95.3と、感染症拡大前の指数値(1月:94.6)を上回る水準まで回復した。ただ生産水準自体はいまだ低い状況にある。

出荷は前月比4.6% 5か月連続上昇

 10月の鉱工業出荷は、季節調整済指数94.7、前月比4.6%と、5か月連続の上昇となった。国内外での経済活動の回復が進んできていることに伴い、国内外で需要の回復がみられ、出荷の上昇につながったものと考えられる。

 業種別にみると、全体15業種のうち、14業種が上昇、1業種が低下となった。
 上昇寄与業種としては、寄与度の大きい順に、自動車工業、汎用・業務用機械工業、電気・情報通信機械工業などとなった。
 財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財の出荷は前月比3.4%の上昇、最終需要財の出荷は前月比5.8%の上昇だった。
 最終需要財の出荷について内訳ごとにみると、まず消費財については、出荷は前月比1.5%と、5か月連続の上昇となった。特に耐久消費財の出荷が、普通乗用車の大幅上昇の影響が大きく、前月比10.7%と、5か月連続の上昇となった。非耐久消費財の出荷は前月比マイナス3.2%と、2か月ぶりの低下となった。
 一方、設備投資に使われる財である資本財(輸送機械を除く)の出荷は、前月比13.4%の大幅上昇となり、2か月連続で上昇した。
 また、建設財は、前月比6.5%と、2か月ぶりの上昇となった。

 各財の出荷の動きを通してみると、本年6月以降、出荷の回復をけん引していた耐久消費財や生産財に比べ、設備投資に使われる資本財(輸送機械を除く)は8月まで低下傾向が続き、回復が遅れていたが、9月、10月と連続上昇となり、回復の兆しを感じさせる。

在庫は7か月連続低下

 10月の鉱工業在庫は、季節調整済指数95.9、前月比マイナス1.6%と、7か月連続の低下となった。在庫は、今基準で最低水準となった2014年3月(95.3)以来の水準まで大幅に低下している。
 業種別にみると、15業種のうち、13業種が低下、2業種が上昇となった。低下寄与が大きかった業種としては、無機・有機化学工業、鉄鋼・非鉄金属工業、化学工業(無機・有機化学工業・医薬品を除く)などが挙げられる。

基調判断は据え置き

 本年10月の鉱工業生産は、5か月連続の前月比上昇となった。生産は、新型コロナウイルス感染症の影響で、2月から5月まで低下が続いていたが、6月以降は一転、上昇が続いている。
 この背景には、6月以降、国内外での経済活動の回復が進んできていることに伴い、需要の回復なども進み、10月も生産が上昇したと考えられる。
 また、先行きに関しては、企業の生産計画では11月は上昇、12月は低下となっている。11月の生産計画は、企業は10月に実現できなかった生産を挽回し、ほぼ取り戻す計画となっており、12月は低下も見込まれるにせよ、生産は、11月までは上昇が続くことが期待される。
 こうした状況を踏まえ、鉱工業生産の10月の基調判断については、「生産は持ち直している」を据え置いた。他方で、最近の感染症の感染再拡大が内外経済を下振れさせるリスクにも注意する必要があり、11月以降の生産の動向についても注視していきたい。

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マンガ「ビジネス環境分析にも使える!鉱工業指数(IIP)」