政策特集DXが企業を強くする vol.3

変革に踏み出す企業にお墨付き 「認定制度」がスタート

「DX銘柄」の応募要件にも

 
 経営戦略としてのDX(デジタルトランスフォーメーション)を後押しする施策が拡充されつつある。前回記事では、DX実現へ向けたビジョンの策定や体制整備を目指す事業者が、現状を把握し取り組みの第一歩となる「DX推進指標」について紹介した。そしてこの11月、DX推進に向けた準備が整っていると判断される事業者を国が認定する「DX認定制度」が本格的にスタートした。しかもこの制度への申請は、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施する「DX銘柄2021」の応募条件にもなるだけに、銘柄選定を目指している企業にとっては見逃せない。制度の狙いや認定のポイントをひもといてみよう。

カギは「デジタルガバナンス・コード」にあり

 11月9日、インターネットでの申請受け付けが始まった「DX認定制度」。経営ビジョンの策定やDX戦略や体制の整備などをすでに講じており、DX推進の準備が整っているとされる事業者を経済産業省が認定する。しかし、何をもって「準備が整っている」と判断するのか。
 参照すべきは、同じくこの11月に経産省が公表したデジタルガバナンス・コード
である。
 「デジタルガバナンス・コード」は、企業のDXに関する自主的取り組みを促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応を取りまとめたものである。同指針は1.経営ビジョン・ビジネスモデル2.戦略3.成果と重要な成果指標4.ガバナンスシステムの大きく四つの「項目」で構成されており、各項目には「基本的事項」「望ましい方向性」「取り組み例」が設けられている。「基本的事項」には各項目を説明する「柱となる考え方」とそれらの内容に沿った企業の取り組みを評価するための「認定基準」がある。つまり、この「基本的事項」の内容が認定取得のポイントとなる。

業種ごとの「リファレンスケース」も

 例えば1.の経営ビジョン・ビジネスモデルでは、「デジタル技術による社会および競争環境の変化を踏まえた経営ビジョンおよびビジネスモデルの方向性を公表していること」が「認定基準」として示されており、2.の戦略では「デジタル技術による社会および競争環境の変化を踏まえて設計したビジネスモデルを実現するための方策として、デジタル技術を活用する戦略を公表していること」が必要とされている。

 この「デジタルガバナンス・コード」では、その趣旨を産業構造やビジネス特性を踏まえて、より分かりやすく読み解けるよう業種ごとの参照事例(リファレンスケース)も策定される。第一弾として製造業向け
が公表されたのに続き、他業種についても策定される見通しだ。

競い合うことが目的ではない

 認定取得のポイントについて経産省の情報技術利用促進課の宮本祐輔課長補佐はこう解説する。
 「今回の認定制度は他の事業者と比較したり、取り組み内容を競い合うことが目的ではありません。他社と比較した優劣ではなく、基準を満たしていれば認定されます。なお、認定の際には『会社として意思決定されたものか』『経営ビジョンなどについてきちんと公表しているか』がポイントとなります」。
 申請を検討する事業者はまず、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のホームページにある申請ガイダンスを確認し、必要書類をダウンロードし、必要な手続きを行ってほしい。申請は通年可能で、認定された事業者は公表される。関心のある関係者にはぜひガイダンスをご覧頂き、DX認定の申請を行ってほしい。