4期連続前月比マイナスのグローバル出荷指数
日本企業の海外拠点からの出荷減など響く
経済産業省では、製造業のグローバル展開を踏まえ、わが国製造業の国内外の拠点全体での出荷の動向を一元的に捉える観点から、国内拠点からの出荷(国内出荷)と海外現地法人の海外拠点からの出荷(海外出荷)の動きを比較可能な形で指標化し、合算した「グローバル出荷指数」を試算し、公表している。この度、2020年第Ⅱ期(4-6月期)までの数値がまとまったので、概略を紹介する。
新型コロナの影響で大幅低下
まず、わが国製造業の国内拠点からの出荷と海外現地法人の海外拠点からの出荷を合算したグローバル出荷指数(季節調整済)は、2020年第Ⅱ期は指数値79.8、前期比マイナス17.0%と4期連続の低下となった。わが国製造業の国内外合わせた活動は、2018年第Ⅱ期に指数値105.4と2015年基準での最高値を記録したが、それ以降は右肩下がりの傾向で推移し、2020年第Ⅱ期は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で大幅な低下となった。
グローバル出荷の内訳をみると、日系企業の海外生産拠点からの出荷である海外出荷指数は、指数値76.9、前期比マイナス20.4%と4期連続の低下となった。
また、日本国内の生産拠点からの出荷である国内出荷指数は、指数値81.1、前期比マイナス15.5%と3期連続の低下となった。このうち、国内向けは前期比マイナス13.9%の低下だったのに対し、輸出向けは前期比マイナス22.6%の低下となり、輸出向けの方が大幅に低下した(上表参照)。
2020年第Ⅱ期は新型コロナウイルス感染症の世界的大流行により、経済活動が世界的に停滞したことから、海外出荷指数や国内出荷指数が大幅に低下している。
影響度に違いも
2020年第Ⅱ期のグローバル出荷指数の前期比マイナス17.0%低下に対する国内出荷・海外出荷の影響度(寄与)をみると、国内出荷がマイナス10.6%ポイント、海外出荷がマイナス6.4%ポイントとともに低下に寄与している。2020年第Ⅱ期は、国内出荷より海外出荷の方が低下幅は大きかったものの、グローバル出荷の約7割が国内出荷であることから、低下寄与度としては国内出荷の方が大きくなった。
海外出荷 すべての業種で低下
2020年第Ⅱ期の海外出荷指数(季節調整済)の動きをみると、輸送機械工業は指数値63.2で前期比マイナス33.1%と8期連続の低下、電気機械工業は指数値85.6で前期比マイナス14.5%と3期連続の低下、汎用・生産用・業務用機械工業は指数値92.1で前期比マイナス7.3%と5期連続の低下など、すべての業種で低下した。新型コロナウイルス感染症の影響は、特に輸送機械工業で大きかったことがわかる。
このように2020年第Ⅱ期を含む上半期は、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行が、世界各地で日系企業の生産・販売に多大な影響を及ぼした。第Ⅲ期は世界的に経済活動の再開の動きが進んだことから、海外出荷の回復も期待されるが、感染症はいまだ収束していないことから、今後の動向には依然注意が必要である。
立地地域別では香港含む中国が上昇
海外現地法人の海外拠点からの出荷を当該現地法人が立地する地域別に指数化した地域別海外出荷指数(季節調整済)をみると、ASEAN4(マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン)指数の2020年第Ⅱ期は前期比マイナス42.2%と3期連続の低下、北米指数は同マイナス34.8%と5期連続の低下となった。一方、中国(香港を含む)指数は、新型コロナウイルス感染症の影響により2020年第Ⅰ期は前月比マイナス21.6%と大幅に低下したものの、感染拡大が早期に抑えられたことから、第Ⅱ期は前期比31.1%と2期ぶりの上昇となった。世界全体で企業活動が低迷した中で、中国(香港を含む)での回復が目立つ形となっている。
国内出荷 すべての業種で低調
2020年第Ⅱ期の国内出荷指数(季節調整済)の動きを業種別にみると、輸送機械工業は指数値61.6で前期比マイナス38.5%低下、汎用・生産用・業務用機械工業は指数値87.5で前期比マイナス10.1%低下、電気機械工業は指数値86.0で前期比マイナス6.2%低下、化学工業は指数値95.3で前期比マイナス3.7%低下、それ以外の業種計も低下となった。
国内出荷についても、新型コロナウイルス感染症の影響は特に輸送機械工業で大きく出た結果となった。
出荷海外比率、海外市場比率は継続して上昇
グローバル出荷指数を用いて、「出荷海外比率」、「海外市場比率」、「逆輸入比率」の3つの指標も試算している。これら3つの指標は、「グローバル化比率」と呼び、製造業のグローバル化の指標としている。
このうち、わが国製造業のグローバル出荷全体に占める海外出荷の比率である「出荷海外比率」(季節調整済)だが、2020年第Ⅱ期は30.9%と2期連続で低下した。また、グローバル出荷全体のうち、日本市場以外の海外市場向けに出荷されたものの比率である「海外市場比率」は40.7%と2期連続の低下となった。新型コロナウイルス感染症の影響は、日本国内より海外での生産・販売の方が相対的に大きかったとみられる。
日本の輸入に占める日系現地法人の日本向け輸出の割合を示す「逆輸入比率」も23.4%と2期連続の低下となった。
以上のように、2020年第Ⅱ期のわが国製造業のグローバル出荷は、世界的な規模での新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、国内出荷・海外出荷ともに低下し、全体でも前期比マイナス17.0%と大幅な低下となった。
世界では経済活動再開の動きも進んでいるものの、感染症はいまだ収束しておらず、また感染再拡大の動きもみられる。新型コロナウイルス感染症の影響は今後も続くとみられることから、製造業のグローバル出荷の動向についても、今後も注視していきたい。