42年の歴史に幕 全産業活動指数に代わる代替指数とは
「鉱工業生産」「第3次産業活動」で同様の分析が可能に
1978年から作成・公表してきた全産業活動指数は、2020年7月分をもって作成を終了した。
(詳しくはこちら)
そこで、今回は、全産業活動指数の代替となる統計や代替指数を紹介する。
国民経済計算(GDP統計)の四半期別GDPをみる
全産業活動指数は、供給側からみたGDP(国内総生産)とも呼ばれるが、GDPについては、四半期ごとの公表ではあるものの、内閣府において公表されている。
内閣府の国民経済計算(GDP統計)のページから、四半期別GDP速報のページに行くことで、四半期別GDPを把握することができる。
下図は、四半期別実質GDPと全産業活動指数(それぞれ季節調整済)の四半期ごとの推移を対比したものである。両者はよく似た動きをしていることがわかる。
簡易的に全活の代替指数を作成する
また、月次での動きを把握したい方は、全活の内訳系列である「鉱工業生産指数」及び「第3次産業活動指数」(いずれも経済産業省)の公表値を統合することで、全産業活動指数とほぼ同様のものをみることが可能となる。
2015年基準の「鉱工業生産指数」と「第3次産業活動指数」双方の公表指数値を、2015年の産業連関表の粗付加価値額構成割合(以下の試算値参照)をウェイトとして加重平均することにより、全産業活動指数(2015年基準)の近似値(従来公表している「鉱工業及び第3次産業の統合指数」に相当)を推計することができる。
統計 | 系列名 | 構成割合 |
---|---|---|
鉱工業指数(生産指数) | 鉱工業総合 | 22.96 |
第3次産業活動指数 | 第3次産業総合 | 77.04 |
それでは、実際に、令和2年7月分を例に作成してみよう。
まず、7月の鉱工業指数(生産指数)の鉱工業総合(季節調整済)は、87.2だった。同様に、7月の第3次産業活動指数の第3次産業総合(季節調整済)は、93.7だったので、87.2×22.96+93.7×77.04)÷100となり、これを計算すると、92.2となる。
なお、過去の各月の、「鉱工業指数(生産指数)の鉱工業総合)」(季節調整済)については、「データダウンロード」から、過去の指数値をダウンロードできる。
また、各月の、「第3次産業活動指数の第3次産業総合」(季節調整済)については、「データダウンロード」から、過去の指数値をダウンロードできる。
同様の計算を行い、これまでの全産業活動指数と、鉱工業と第3次産業の統合指数を比較してみると、以下のようになり、動きがほとんど同様であることがわかる。
また、この鉱工業と第3次産業の統合指数を四半期別GDPと対比させても、全産業活動指数と同様、四半期別GDPとよく似た動きをしている。
統合指数の変動要因
また、この鉱工業と第3次産業の統合指数と、鉱工業指数、第3次産業活動指数を比較してみる(下図)。統合指数と第3次産業活動指数は似たような動きをしている一方、鉱工業指数は上下の振幅が大きくなっていることがわかる。
実際に、統合指数の変動要因を寄与度分解してみると、第3次産業が全体への寄与が総じて大きいことがわかる。GDPの変動においても、第3次産業の比重が高まっていることが示唆される。
このように、全産業活動指数の作成は、この度終了するが、鉱工業生産指数と第3次産業活動指数を統合することで、ほぼ同様の指数に基づく分析が可能だ。
引き続き、これらの指数も活用いただきたい。