海洋プラスチック問題 オールジャパンで挑む
「CLOMA」 アクションプランが始動
日常生活を支えるさまざまな製品に使用されているプラスチック。利便性や量産性に優れるといった利点がある一方で、適切に回収・廃棄されない使用済み製品の問題や海洋に流出したプラスチックによる環境への影響が懸念されている。こうしたなか、プラスチックごみによる海洋汚染問題の解決に向けて、業種を超え結集したオールジャパンの取り組みが始動している。
もはや一企業だけでは
2019年1月に設立された「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」。特徴は参加企業の顔ぶれの多彩さである。
素材メーカーだけでなく、容器包装を利用する食品・日用品メーカーや流通・小売り、さらにはリサイクルビジネスを手がける企業など川上から川下まで、サプライチェーンに関わる事業者で構成され、参加企業は2020年4月末時点で333社・団体に上る。
資源に乏しく、国土も狭い日本は、これまでも資源の有効活用を積極的に推進し、環境負荷を低減するシステムを定着させてきた。
しかし、海洋プラスチックごみ問題は、もはや一国、あるいは一企業の取り組みだけでは克服できない世界的な課題。そこでこれまで日本が培ってきた技術やノウハウを持ち寄り、イノベーションを加速し、社会全体の取り組みとして進めるのがCLOMA設立の狙いである。
ロードマップ示す
設立以来、用途に応じた最適な代替素材を容易に選択するための技術情報の共有や新たな技術に関心のある流通や食品、消費財など利用事業者とのマッチングといった活動を進めてきたが、2020年5月中旬、今後の活動の指針となる「CLOMAアクションプラン」を取りまとめた。
2030年時点で容器包装リサイクル率60%、2050年にはプラスチック製品リサイクル率100%を全体目標として掲げ、その上で、「プラスチック使用量の削減」「マテリアルリサイクル率の向上」「ケミカルリサイクル技術の開発・社会実装」「生分解性プラスチックの開発・利用」「紙・セルロース素材の開発・利用」の5つの活動分野別に中長期的な達成目標とともに具体的な方策や技術検討課題、実証テストの計画を打ち出している。
技術と回収システムの両輪で
業界横断組織としてのCLOMAを象徴するアプローチのひとつが、リサイクルにまつわる技術開発と、これを支える分別・回収システムの確立を両輪で捉える視点である。
一例が、再生材として利用が進んでいる「マテリアルリサイクル」。さらなる資源循環を進めるには世界的にも高いリサイクル率を実現している飲料ペットボトルだけでなく、その他のプラスチック製品にもこれを広げるための技術課題と道筋を示している。食品包装プラスチックでは汚れ対策や紙とフィルムなど複合素材対策がカギとなるが、これらを克服する洗浄技術や多層フィルムの分離技術の実用化を目指すとしている。もとよりこれらは種類に応じた分別や回収、高精度な選別を担う自治体や企業の協力なくして実現しない。消費者の意識改革も不可欠だ。
アクションプランの策定に際し、CLOMAの会長を務める花王の澤田道隆社長は「すでに(分野別に 設けられた)ワーキンググループから具体的な提案が出てきており、産学官やNGO、そして消費者との緊密な連携により早く社会実装できれば」とした上で、「こうした取り組みは日本での先駆けとなるだけでなく、世界をリードできる」と、今後の国際連携にも意欲を示している。
※ 次回は澤田会長にCLOMAが目指す世界を聞きます。