統計は語る

数の子の消費量の変化は? 〜おせちから考える食品流通③〜

おせち料理から食品流通について考えるシリーズ、第3部では、嗜好の移り変わりや地球環境の変化など、数の子の流通をとりまく諸事情を見ていく。

数の子の消費量の変化は?

ここで今年のおせちを思い出して欲しい。何が入っていただろうか?

黒豆、田作り、数の子、伊達巻…、地域によってはさらに特色ある食材が加わるかも知れない。その中でも、鮮やかな彩りを添えてくれる数の子は、記憶力維持の栄養素として注目されている不飽和脂肪酸のEPA、DHAが豊富で、プリン体が比較的少ない、ヘルシーな食材と言われることもある。高級感があり、冷凍なら早めに贈ることもできるため、お歳暮用としても人気だ。

しかし、こういった数の子の魅力にもかかわらず、市場での取扱量は年々減少傾向で、2014年に1,600トンを超えていたものが2023年には800トン足らず、と半分以下にまで落ち込んでいる。

民間食品会社が毎年行っている調査によると、2016年以降、毎年、「好きなおせち料理の種類」の項目の上位にお雑煮、栗きんとん・栗甘露煮、黒豆が並んで安定した人気を見せる一方、4位の数の子は5位のだし巻・厚焼き玉子との差が縮小し、順位が逆転しそうだ。

洋風おせちやお菓子のおせちなど、おせちの中身も多様化している今日、数の子のような伝統的な食材の比重の変化が注目される。

減少傾向にあった国産数の子、復活へ

実は、国産数の子は、数年前まで原料のニシンが少なくなり、危機的状況にあった。明治から大正にかけて、日本近海のニシン漁は最盛期で、漁獲高は年間40万~100万トンにも上ったが、その後、昭和から平成にかけて、大きく減少してしまった。

そのため、日本の数の子生産は原料を輸入に大きく頼る状況が続いていた。

ところが、日本近海のニシンの漁獲量は近年、回復傾向にある。ニシンの稚魚の放流、小さな若齢魚まで獲り尽くしてしまう細かい網の禁止など、地道な資源管理の取り組みの成果なのかもしれない。

2022年の漁獲量は、明治・大正の最盛期の50分の1程度とは言え、2万7百トン、2023年も1万8千トンと近年にない豊漁となった。

今後も、おせちのお重を彩る数の子と、その背景となる日本近海の漁業の動向に注目していきたい。

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おせちから考える食品流通-第3部 数の子を通して見る数字