政策特集夏休み親子企画 試験に出る経済・産業 vol.3

【親子で学ぼう時事問題】プラスチック削減と資源循環社会

スーパーやコンビニエンスストアなどでレジ袋を使わず、マイバッグを持参する人を多く見かけるようになりました。小売店や飲食店でも、プラスチック製のスプーンやフォーク、ストローなどを「必要な分だけ持って行く」ように変わり、材質もプラスチックから木などに変更されるなど、社会全体で「脱プラスチック」の動きが広がってきています。なぜ、不要なプラスチックを減らしていく必要があるのでしょうか。今回も「めてぃ子さん一家」と一緒に考えましょう。

身の回りで幅広く利用されるけど、地球温暖化の原因の一つに

プラスチックは、わたしたちの生活に欠かせない化学製品の一つです。他の素材と比べて軽くて丈夫、衛生的で加工もしやすいことから、ペットボトルや食品のトレー、カップめんや持ち帰り弁当の容器、レジ袋、電気製品や自動車の部品など、さまざまな製品に幅広く利用されています。ほとんどのプラスチックは、原油から得られる「ナフサ」という石油製品を原料にしています。

ナフサをおよそ800度以上の高温で分解すると、エチレン、プロピレンなどの石油化学基礎製品ができ、これらを組み合わせてプラスチックがつくられます。この高温分解のときに二酸化炭素が排出されています。

使い終わったプラスチックは、主に3つの方法でリサイクルされています。①プラスチックをごみとして焼却して発生した熱を発電や熱源に利用する「サーマルリカバリー(熱としての再利用)」、②化学的な処理をして、化学製品の原料として再利用する「ケミカルリサイクル(化学的処理による再利用)」(例:使用済みのプラスチックを油に戻したり(油化)、ガスにして化学原料にしたり(ガス化)して再利用する)、③プラスチック製品の原料として再利用する「マテリアルリサイクル(素材としての再利用)」(例:使用済みのペットボトルを原料化して、ペットボトルとして再利用する)などです。

日本のプラスチックの有効利用率はおよそ87%で、「サーマル」が63%、「マテリアル」が21%、「ケミカル」が4%となっています。「サーマル」は、プラスチックを焼却するため、二酸化炭素が排出されます。プラスチックは生産するにも焼却処分するにも二酸化炭素が排出される、という問題があります。そのため、資源として循環させられるプラスチックはなるべくリサイクルして再利用することが望ましいのです。
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分解されないマイクロプラスチックが、世界中の海に広がる

プラスチックは自然界で分解されにくいため、ポイ捨てされたりすると、そのまま長い間残り、最終的には海に流れ出て環境を汚して、海の生き物にも悪影響を及ぼしています。

2018年、神奈川県鎌倉市の海水浴場に打ち上げられた赤ちゃんクジラの胃から、プラスチックのかけらが見つかりました。2019年には東南アジア、フィリピンの海岸に流れ着いたクジラの胃から40キロものプラスチックごみが出てきたそうです。

海岸に流れ着いた、ペットボトルなど大量のプラスチックごみ

世界では毎年およそ800万トンのプラスチックが海に流れ出しているとの推計もあり、このまま対策が取られなければ、2050年までに、海の中のプラスチックごみの重量が、海にすむ全部の魚の重量を上回るという予想も示されています。

また、プラスチックが波や紫外線にさらされてもろくなり、細かく砕かれて、直径5ミリ以下の粒になった「マイクロプラスチック」が、このところ、世界中の海で見つかっています。魚の内臓からも見つかっていて海洋生態系への影響が心配されるとともに、それを食べる人への影響はまだはっきりとはしていませんが、健康被害を懸念する声もあります。

ごみを減らし、資源を循環する経済システムへの転換始まる

2020年からのレジ袋有料化により、身近なところでの使い捨てプラスチックの過剰な使用を見直す取り組みが始まりました。日本チェーンストア協会によると、全国のスーパーにおけるレジ袋の辞退率は制度開始後には80%に達し、制度開始前の57%から大幅に増え、国民のライフスタイルの変革に繋がりました。その結果、2019年におよそ20万トンだったレジ袋の量は2021年には10万トンと、半分に減ったという調査もあります。

ただ、国内のプラスチックごみ総排出量は824万トン(2021年)で、レジ袋はそのうちのわずかにすぎません。日本は1人あたりのプラスチック容器包装の廃棄量(およそ32キロ)でアメリカに次いで世界第2位になっており(国連環境計画のデータ)、プラスチックごみの削減に対してさらに有効な対策をとる必要があります。

そこで、2022年4月から新しく「プラスチック資源循環促進法」がスタートしました。これまでも日本は、プラスチックのリサイクルに取り組んできました。しかし、大量生産、大量消費をした後に、廃棄された製品をどのように処理していくか、という考え方でした。言わば「一方通行の経済システム」です。一方、プラスチック資源循環促進法は、プラスチックの使用量を極力抑え、環境に悪影響を与えないようにプラスチックを資源として再利用や再資源化していくという、グルグルと回り続ける循環型の経済システムを目指していくものです。

資源を循環させるためには、ごみを減らす「リデュース」、繰り返し使う「リユース」、ものを資源として再生する「リサイクル」の3つのRに加えて、資源を再生可能なものに切り替える「リニューアブル」というさらなる取り組みが重要です。「つくる(設計・製造)」「つかう(販売・提供)」「排出・回収・リサイクル」のそれぞれの段階でできることがあります。

「つくる」段階では、「プラスチック使用量を減らせるか」「別の材料に替えられるか」「長く使えるか」などを考えて製品を作ることが求められます。

「つかう」段階では、スーパーやコンビニ、飲食店などに対しては、これまで顧客に無料で配っていたスプーン、フォーク、ストローなど、12品目の使い捨てプラスチック製品の提供量を減らすことを求めています。ホテルの歯ブラシやくし、クリーニング店などのハンガーや衣類用カバーも削減を求めています。具体的には、無料配布していた使い捨てプラスチック製品の有料化や、受け取りを辞退した顧客へのポイント還元、木製品などへの切り替えなどの工夫が求められます。「つかう」側も、使い捨てプラスチック製品をもらわないようにする、包装の少ない商品を選ぶなどの姿勢が大切です。

「排出・回収・リサイクル」段階では、自治体や企業が、使用済みプラスチック製品を効率的に回収し、リサイクルされる環境を目指します。例えば、プラモデルなどを製造・販売する「バンダイスピリッツ」では、プラモデルのパーツを外した後に残る「ランナー」と呼ばれる枠の部分を回収し、そのまま砕いて再利用して、リサイクル材を利用した新たなプラモデルに生まれ変わらせています。

日本が資源循環型の社会になるために、それぞれの立場でできることはたくさんありそうです。

<親子で考えよう>
プラスチックが資源として循環する社会をもっと進めるために、わたしたちはどんなことができるでしょうか。

 

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