統計は語る

マスクだけじゃない、こんなところにも。近年の不織布事情をのぞいてみる

 新型コロナウイルス感染症対策で日常的にマスクをつけることになり、広く知られるようになった「不織布」。元々他の素材が使われていたものを代替して発展してきたことや、最終製品の一部分として使われることが多い、といったことからあまり知られていなかった不織布だが、マスクをきっかけに知るようになった、という方もいるかもしれない。

 織物、編み物に次いで第3の布とも呼ばれるそうで、その特性から今後も成長が期待されている。今回は、その「不織布」について統計からみていく。

おむつから電池まで!不織布はあらゆる産業で活躍

 不織布の国内生産量の推移をみると、2015年以降概ね横ばいで推移していたが、2019年から減少傾向がみられる。シェアの高い「医療・衛生用」の減少が影響していることがうかがえる。

 用途別にみると、「医療・衛生用」は2015年時点で約30%、次いで「生活関連用」が25%前後で推移していたが、2019年に逆転。「医療・衛生用」は、感染症拡大の影響で2020年増加したが、2021年に再び低下し、ならしてみれば減少傾向だ。

 堅調な動きがみられるのはシェア3番目の「その他の産業用」(車両用以外の産業用で、集塵・液体・気体フィルターや電池セパレータ等)で、2020年は感染症拡大の影響で減少したものの、2021年になり回復傾向がみられる。

 また、シェアは高くないものの、「その他用」(寝装寝具用、カーペット、壁紙等のインテリア用等)は2018年まで増加傾向が続いた。東京2020オリンピック・パラリンピックに向けてホテル等宿泊施設の建設ラッシュが起こったことも影響したと考えられる。

 この他にも、衣料用や農業・園芸用にも使われるなどその用途先は広く、不織布は様々な産業に入り込んでいることがうかがえる。

重量ベースでは大幅に輸入超過

 次に、日本の不織布の輸出入の動向についてみていく。まず輸入量は、2015年の約19万トンから2021年は約26万トンとなった。2021年は前年比マイナス3.5%だったものの2020年まで増加傾向にあり、7年間で1.37倍に増加した。輸出量も増加傾向にあり、2015年の約5.1万トンから2021年は約7.2万トンと1.41倍に増加している。

 また、金額ベースと重量ベースで比較すると、重量ベースで大幅に輸入超過であり、我が国は高付加価値の製品に競争力を持っていることが考えられる。

 なお、国内生産が減少し始めた2019年から輸入が増加していないことは、素材としての不織布ではなく、マスク等の製品に置き換わっての輸入に代替されているものと思われる。

アジアが主力の交易活動

 輸出入量を国・地域別にみてみると、2015年、2021年の輸入はアジアからが9割以上を占め、輸出は6割以上がアジアへと対アジアの輸出入が主力であることがわかる。そして、輸出入とも中国が最大の相手国となっている。

 国内市場においては、アジアからの輸入品が浸透しつつ、アジアでの衛生関連用品を中心とした需要増に伴い、今後さらに輸出や現地生産が進展していくのかもしれない。

 日本製の乳幼児用おむつが海外で人気を博したように、高機能製品で市場を取り込んできた不織布。今後の技術開発・商品開発が期待される。

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※ 本記事は、経済産業省調査統計G経済解析室が作成した統計分析記事を一部修正して転載したものです。記事中のデータの取り扱い等については、出典元の記事の注意事項等をご参照ください

出典元 【ひと言解説】

「マスクだけじゃない、こんなところにも;近年の不織布事情をのぞいてみる」