中小企業も安心 M&A支援機関登録制度とは
事業承継を考える中小企業にとって、現実的な手段となってきたM&A(合併・買収)だが、実際のところ、自社の力だけで行うのは難しい。ふさわしい相手先を見つけ、その後の実務作業を進めていくには、外部のM&Aの仲介会社や金融機関、あるいは弁護士や会計士、税理士らの協力を得ることが不可欠だ。
大半の中小企業にとって、M&Aは初めての経験になる。こうした外部機関からはどのようなサービスが受けられて、料金体系がどうなっているのか。そして、どのような外部機関を選べばよいのかなど、疑問や不安はつきまとう。
中小企業が安心してM&Aを実行できるようにと、中小企業庁はM&A支援機関登録制度を2021年に導入した。その概要をまとめた。
登録は2823件 仲介・FAを担う機関が対象
Q M&A支援機関登録制度とは何か?
A M&Aには、一般的に多くの専門家が関わる。売り手と買い手を引き合わせる仲介業者、ファイナンシャルアドバイザー(FA)、買い手と売り手がマッチングする場をインターネット上で提供するM&Aプラットフォーマ-、財務情報に詳しい公認会計士や契約・交渉をサポートする弁護士などの士業、その他に金融機関、商工団体などだ。
登録制度は、これらM&A支援機関のうち、仲介業務とFA業務を担う機関を対象にしている。業種は問わない。例えば、銀行でも仲介業務を行っていれば、登録対象になる。中小企業庁が登録を受け付け、審査する。
Q 登録の状況は?
A 現時点で登録されているのは、2823件。M&A専門業者(仲介・FA)が1085件と全体の4割近くを占める。士業では税理士が最も多く601件、公認会計士は283件。銀行や信用金庫・信用組合などの金融機関は161件となっている。
登録機関データベースでは、業種別や地域別で検索できるほか、M&A支援業務の開始時期や専従者数などの情報も確認可能だ。
登録はガイドライン遵守が要件
Q 登録機関はどのような特徴があるのか。
A 登録機関に対しては、提供するサービスの質が保たれるように、一定の規律が働いている。
登録では、中小企業が関わるM&Aでの行動指針を定めた「中小M&Aガイドライン」の遵守の宣言が要件になっている。ガイドラインは、M&A支援機関に対し、依頼者の利益を最大化することやM&A支援機関同士で連携を図ることなどの基本姿勢や、業務範囲や手数料、契約期間など仲介契約やFA契約で説明すべき重要な項目などを定めている。
登録後も、顧客には中小M&Aガイドラインを守っていることを事前に説明する。そのうえで、毎年度関与した実績を中小企業庁に報告することになっている。登録時の要件を満たさなくなった場合は、登録の取り消しなどもありえる。
また、中小企業は、登録機関から不適切な対応を受けた場合には、M&A支援機関登録事務局に設置された窓口に情報提供することができる。
登録機関の利用には補助金も
Q 登録機関を中小企業者が利用するメリットは?
A 登録機関は、「中小M&Aガイドライン」を遵守することとされているので、利用側からすれば、中小M&Aガイドラインに沿った支援が受けられると期待できる。
登録機関を利用した場合は、補助金を受けることもできる。「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)」は、M&Aプロセスを総合的に支援するFAや仲介業者に支払う手数料を補助しているが、登録機関の利用をした場合に対象が限られている。
中小企業がM&Aを積極的に進めていくためには、登録機関によるFAや仲介の支援が大きな力になりそうだ。
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