コロナ禍でも堅調だった生活家電 -2020年は爆発的に増加した空気清浄機だがその後は?-
新型コロナウイルス感染症が大幅に拡大し、経済が停滞した2020年は、小売業販売額が大幅に減少し、ほとんどの業種が前年を下回ったが、生活必需品である飲食料品と、医薬品・化粧品は堅調な増加をしていた。また、生活必需品とは思えない機械器具小売業※も、2017年から5年連続で前年を上回っており、コロナ禍でも力強い動きを示している。
今回は、機械器具小売の内訳にフォーカスを当て、詳細な品目をみていきたいと思う。
※機械器具小売業は、自動車・自転車を除く家庭で購入する機械器具なので、主に家電製品が該当する。
新型コロナ感染症下で伸びた生活家電
機械器具小売の内訳を見られる統計として、商業動態統計の中の家電大型専門店のデータから、商品群別の販売額寄与をみてみる。
これによると、「生活家電」が常に高い寄与度で全体に影響を与えているのが分かる。特に2020年は大きく伸びており、その反動もあり、2021年は年央から減少に転じている。(家電大型専門店の業態統計では、2021年は前年を下回ったが、機械器具小売全体では上期の増加が貢献し、2021年も前年を上回っている。)
これは、家電製品の中でも生活との関連性が高く、価額が比較的高い「生活家電」が緊急事態宣言による在宅時間の増加、感染症対策の浸透に対応した商品の販売を増加させたこと等により2020年に大きく増加したと推測される。
「生活家電」とは、具体的にどのような商品が含まれるのだろうか。
商業動態統計では、調査票を改正して、2021年1月より生活家電の内訳を新たに調査した。現時点では調査開始からようやく1年が経過し、前年同月比がこれからみられるようになった。
2021年の品目別構成比をみると、「調理家電」、「家事家電」、「季節家電」がほぼ3割で拮抗し、「理美容家電」が残りの1割となっている。
その中の、コロナ禍に需要がある生活家電を業界統計で商品別に更にみてみる。
家電機器の国内出荷額(日本電機工業会公表)のうち、生活家電である品目の出荷を見ると、2020年度(2021年3月まで)は季節家電である空気清浄機が前年度比100.7%の増加で、他の製品と比べても突出した伸びであることがわかる。その反動もあり、2021年度の見込みは大幅減少、2022年度の見通しも減少とみている。
輸入に支えられた空気清浄機
2020年度に爆発的な需要があった空気清浄機だが、国内生産にはあまり貢献していないようだ。
生活家電製品は、国内生産から海外生産に切り替わっている製品が多いため、国内メーカーの製品でも、海外の工場からの輸入割合が多くなっている。
近年、空気清浄機能付きルームエアコンなども販売されているが、ルームエアコンは国内生産が行われている一方、空気清浄機は、ほとんど輸入となっている。
空気清浄機の輸入額を見てみると、2016年以降、2019年を除き増加している。感染症が拡大した2020年では、前掲のグラフで爆発的に国内出荷を増加させた空気清浄機は、2021年度は国内出荷の見込みが減少しているが、輸入額は引き続き増加している。空気清浄機単体よりもエアコンなどの空調機器に組み込む空気清浄機能用の部品としての輸入が堅調なことも考えられる。
空調機器の普及率と今後の見通し
では、家庭での空調機器の普及率はどうなっているのだろうか。
内閣府が公表した消費動向調査によると、ルームエアコンの2人以上の世帯における普及率は、2022年3月末で、91.8%と高水準にあり、100世帯あたりの保有数は、285.4台と、1世帯に3台弱設置されている計算になる。また、その保有数は2021年3月末よりも2.7台の増加となっている。
一方、空気清浄機の普及率は2022年3月末時点で約45.7%とルームエアコンと比較するとまだまだ低水準にある。しかし、2019年から2022年の所有している世帯数の割合の差は、3.0%ポイント増と大きく伸びている。
空気清浄機は、足下では急激な普及の反動で伸び悩んでいるが、今後は更なる単体需要の開拓よりも、ルームエアコン、ファンヒーター、換気扇、扇風機等幅広い家電に付加される商品も販売され、空気清浄機能の需要は生活家電全体に取り込まれる可能性もあると思われる。
※ 本記事は、経済産業省調査統計G経済解析室が作成した統計分析記事を一部修正して転載したものです。記事中のデータの取り扱い等については、出典元の記事の注意事項等をご参照ください。
出典元 【ひと言解説】