統計は語る

コロナ禍で変化する国内化粧品産業

インバウンド消費消滅は化粧品産業の変化を加速させる?

 2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で、化粧品全体の売り上げは大幅に減少した。

 現在、化粧品はメークアップやスキンケアなどの目的別に細分化が進んでいるが、細分化された化粧品は、それぞれ販売動向に違いが見られる。販売動向の変化や違いなどは、コロナ禍での生活様式の変化とも大きく関係があると思われる。

 そこで、コロナ禍による生活様式の変化が、化粧品の需要等にどのような影響を与えているのか、関連する統計や化粧品メーカーの動向から分析していく。

コロナ禍に影響された化粧品の出荷額

 2020年はコロナ禍により、訪日外国人の消費が見込めず、インバウンド消費による恩恵は消滅した。2020年の化粧品出荷額は、前年と比べて大きく落ち込み、2014年と同水準にまで低下した。化粧品出荷額の減少は、訪日外国人の化粧品購入額の減少に匹敵する金額となっていることから、訪日外国人消費の減少が大きく影響したと考えられる。

 訪日外国人消費が失われた影響により、国内需要は減少したと考えられる一方、2020年の輸出額は増加となっており、国内と比べ海外市場は、比較的堅調だったと考えられる。

コロナ禍における国内の化粧品出荷の動向

 化粧品の出荷数量を品目別に見ると、口紅やアイメークアップなどのメイク用化粧品を中心に減少しており、テレワークや外出自粛などが、メイク用品に大きく影響したと考えられる。特に、外出時のマスク着用で口元が隠れることから、口紅の需要も大きく減ったと推測される。

 また、マニキュアなどのつめ化粧料の出荷数量も減少しているが、外出自粛の影響が大きいものと考えられる。民間調査会社の発表では、2020年のネイルサロンの倒産件数は、2000年以降最も多くなっており、感染症が拡大する中、美容の中でも不要不急の性質が強いネイル需要が大きく減少したとの分析もされている。

輸出数量からみる、化粧品市場の動向

 世界的なコロナ禍による生活様式の変化により、化粧品の輸出数量にも国内と同様、変化が見られた。

 2020年は国内同様、口紅などのメイク用化粧品の輸出数量は減少しており、海外でも外出自粛などの影響が、国内同様に起こったことが考えられる。一方、洗顔・スキンケアに関係するクリーム製品は、2020年は前年と比べ、出荷量全体が落ちる中で、輸出数量は増加していることから、海外は国内とは少し異なる動きがあると考えられる。

 化粧品輸出の動向を、国内化粧品メーカーの動きから見ると、国内化粧品メーカーも、コロナ禍で2020年は苦戦し、市場シェア上位3社のメーカー(資生堂、花王、コーセー(市場シェア順位は、「化粧品産業ビジョン(経済産業省、2021年4月)」より)の売上高はいずれも減少している。

 一方で、3社とも2020年の売上高は前年と比べ落ち込んでいるものの、地域別で見た場合、中国での売上高のみ3社とも前年比増となっていることから、輸出は、コロナ禍からの回復が早かった中国市場が牽引したと考えられる。

 コロナ禍により人々の行動・生活様式にも変化が見られ、その結果、化粧品の購買行動にも変化が起こっているようだ。また、化粧品メーカーでも購買行動の変化等を見据え、中国市場をターゲットにした取り組みや、オンラインを活用した非接触型のサービス提供など、様々な取り組みが模索されているようだ。

 これらの変化が、市場や消費者にどのような影響を与えるかをみるには、もう少し時間が必要と考えられるが、それらの分析についても改めて行いたいと思う。