政策特集地域未来牽引企業 vol.2

【経産省総括審議官・飯田祐二氏】市場が大きくなる分野で高い付加価値を

これまでにない取り組み


 地域の特性を活用し、高い付加価値を生み出して地域経済に波及効果を及ぼす「地域経済牽引事業」。この事業を支援する「地域未来投資促進法」が実行に移され、2017年12月末には「地域未来牽引(けんいん)企業」が選定された。経済産業省は同企業の成長を積極的にサポートし、地域経済の活性化につなげようとしている。この取り組みを推進する経産省の飯田祐二総括審議官に現状や今後の展望などを聞いた。

耳を傾けるコンシェルジュ

 ー地域経済牽引事業の状況はいかがですか。
 「地域経済を牽引することが期待される地域未来牽引企業2148社を公表した。付加価値の創出や成長性、地域経済の結節点の役割などを定量的な指標で評価したほか、自治体や商工団体、金融機関などの推薦を受けて選出した。地域未来投資促進法は選定されていない企業も使えるが、法律を制定して申請を待つのではなく、企業を選定して積極的に施策を説明していくこととしており、これまでにない取り組みだ」

 ー地域未来牽引企業に対し、どのように支援しますか。
 「予算、税制、金融、規制緩和等の政策手段を総動員して重点的に支援する。具体的には、先進性を有する事業に必要な設備投資への減税措置、中小企業と連携して行う戦略分野での設備投資への補助、日本政策金融公庫による融資制度などがある。また『新輸出大国コンソーシアム』に基づく海外展開支援や、プロフェッショナル人材の採用支援などの措置もあり、幅広く活用してもらう」

 「このほか自治体や産業支援機関に選定企業を積極的に支援してもらうために周知している。中には、選定企業を支援するための新しい取り組みを創設する動きもあり、支援の輪が広がっているように感じている。こうした支援措置を伝えるためメールマガジンに加えて、相談に一元的に答えるワンストップ窓口『地域未来投資促進室』を地方経済産業局に設置するとともに、都道府県別の担当者である『地域未来コンシェルジュ』を設置した。各選定企業を個別に訪問し、施策の活用に向けた説明を積極的に行うとともに、課題にも耳を傾け、必要があれば新たな施策の企画・立案・実施も行い、必要な措置が取られるようにしていく」

域内外の取引の結節点

 ー地域未来牽引企業にどんな取り組みを期待しますか。
 「選定企業には選定証を渡すとともに、ロゴマークの使用を勧めている。まずは事業に積極的に取り組んでいただけるような動機付けになることを期待したい。また選定企業は地域外の需要を取り込んだり、域内の企業から調達したりすることで、域内外の取引の結節点という役割を担っている企業である。地域の特性を活用し、農業・地域商社や第4次産業革命関連、観光・スポーツ、文化、まちづくり、健康・福祉分野など、市場が大きくなる分野で高い付加価値を生み出し、地域経済を引っ張っていただきたい」

会津若松サミットの意義

 ー4月には地域未来牽引企業サミットの初会合「地域未来牽引企業サミット イン 会津若松」を開催しました。
 「福島県会津若松市でのサミットは、地域未来牽引企業の皆さまに集っていただく初めての機会となった。選定企業の方には産業支援機関の取り組みを知っていただく場となり、産業支援機関の方には選定企業を一層積極的に支援する機会となることを期待している。また選定企業を訪問していると、取引先の開拓や共同研究・事業を行うことを視野に、企業間交流を期待する声が数多く寄せられている」

 「こうした選定企業が一堂に会し、交流を深めることで、どのような新しい取り組みが生まれるのか楽しみでもある。さらにサミットを実施することで、多くの方にも注目して頂き、選定企業が新たな事業に取り組んだり、産業支援機関が選定企業を支援したりする動きが加速することも期待している。こうしたイベントを同市で開催し、あわせて特産販売も行い、会津地域の風評被害を払拭(ふっしょく)。PRの機会とすることも大きな目的の一つだ」

産業支援機関との密な連携

 ー今後の展開は。
 「同法は自治体による基本計画が185策定され、事業者による事業計画も4月13日時点で計468が道府県知事の承認を受け、計667の事業者が参画している。そのうち182の企業は地域未来牽引企業であるなど具体的に動き始めている。しかし地域未来投資促進法の周知徹底も、地域未来牽引企業の方々との対話も、まだ実施すべきことはある。事業者のニーズに応じた、きめ細かいワンストップ相談窓口での対応や、産業支援機関との密な連携による関連支援施策の充実により、各地の特色を踏まえた多種多様な事業が地域経済を牽引し、地域に大きな波及効果を与えることを支援していく。加えて、施策の実施状況などのフォローアップに取り組むとともに、必要な見直しも行っていく」