統計は語る

「アジアの食欲」が悪天候を跳ね返す

飲食費指数はアジアと欧米で対照的な動き


 訪日外国人の消費金額を、消費者物価指数を用いて実質指数化し、訪日外国人の国内での旅行消費の動向を指標化した「訪日外国人消費指数(TCI)」のうち、飲食費指数の平成29年第3四半期の結果を紹介する。

訪日外国人の飲食費は4期連続で上昇

 平成28年には一度、横ばいの動きをみせた飲食費指数だが、28年第4四半期以降は再び上昇に転じ、29年第3四半期は前期比プラス12.9%と4期連続の上昇となった。当期の上昇の勢いは、27年前半のそれを彷彿とさせるほどの急拡大となり、指数値は405.3と400を突破しました。飲食費指数の上昇の勢いには、安定感がある。

 29年第3四半期の飲食費指数の動きについて、「アジア」と「欧米」からの訪日客別に確認してみる。

 アジア指数は、指数値470.5、前期比プラス19.4%と5期連続の上昇となった。全体指数以上の伸びをみせ、もはや500も目前といった様相だ。

 欧米指数は、指数値218.9、同マイナス4.9%と2期ぶりの低下となった。プラスとマイナスの寄与を繰り返しながらも上昇傾向にある欧米指数だが、当期はマイナス寄与となった。

                   

飲食サービス業の落ち込みを訪日客がカバー

 続いて、国内の飲食サービス業活動に対する飲食費指数の寄与(影響度)はどのようになっているかみてみよう。

 飲食サービス業は、29年第2、第3四半期と2期連続で微減となった。これに対する訪日外国人の飲食費指数の寄与は、「飲食店,飲食サービス業」指数の前期比マイナス0.1%に対し、プラス0.73%ポイントと上昇方向に寄与しています。当期の国内の飲食サービス業の低下幅が小幅となったのは、国内居住者の飲食サービス利用の低下を相殺するほど、訪日外国人の飲食需要が大きく前期比上昇したおかげだったからだ。

 29年第3四半期の訪日外国人の飲食支出の伸びは大きく、飲食サービス業全体に対する上昇寄与もここ3年弱の中でも、特に大きなものとなっていたようだ。

                   

アジア客は大きく上昇、欧米客は一転マイナスに

 訪日外国人全体の飲食費指数の変動に対する、「アジア」と「欧米」の訪日客それぞれの影響度(寄与)をみてみよう。

 29年第3四半期の訪日外国人全体の飲食費指数の前期比プラス12.9%に対し、アジア指数はプラス12.53%ポイントの上昇寄与、一方、欧米指数はマイナス0.70%ポイントの低下寄与となった。29年第2四半期の飲食費指数の上昇に対しては、欧米指数の影響度がアジア指数のそれをはるかに上回っていたが、第3四半期の飲食費指数の急拡大には、アジアからのお客様の飲食需要の大幅上昇が大きく影響した。

                

 29年第3四半期という時期は、飲食サービス業、外食産業にとって、天候面で厳しい時期となった。しかし、その国内居住者の遠のいた客足を、アジアからの訪日客の外食利用の勢いがほぼカバーしてくれていた。このような天候面などで悪条件となった時期に、過去最高に近い伸び、そして上昇寄与を見せてくれた「アジアの食欲」は、日本のサービス産業にとって重要だったということなる。
関連情報
ミニ経済分析「2017年第3四半期の訪日外国人消費指数の動きと上位5カ国・地域からの訪日客の消費動向」