いよいよ年末商戦だが、季節調整値って何だろう
ストーブ、ゲームソフトを例に解説
今年の夏、大人気のゲームソフトの発売で「ドラクエ休暇」が話題になったのは記憶に新しい。実際、平成29年7月のゲームソフトのメーカー出荷額(売上高)は、大きな伸びを見せた。
そのゲームソフトの売上高だが、過去にはもっと売れているときが何度もある。大きく伸びる時期が年末に多いこと、それに合わせて有名ソフトが発売されていることがわかる。いわゆる、“年末商戦”だ。
クリスマスやボーナスなどで財布の紐が緩みやすい、そこを狙って新作を発売するということが重なって、毎年この時期は売上が伸びるようになっている。つまり、有名ソフトがこの時期に集中するのは、偶然ではないということだ。
この年末の「伸び」は分かりやすいパターンだが、各年の売上の推移グラフをみると、他のパターンがあるようにも思える。こういう1年の変動の中の変動パターンを季節変動という。
毎年決まった変動を除去する
毎年決まった時期に起こる動き、教科書的に述べると「季節や社会風習等による1年を周期とした変動」となるが、これをどうにかして取り除いて、現状の数値を評価する必要がある。そしてその解決のために生み出された手法が、季節調整法だ。
百聞は一見にしかず、いったんゲームソフトから離れて、分かりやすい他の製品を例にとって、季節調整の効果を確認してみよう。
次の鉱工業指数の石油ストーブの生産指数のグラフからは、毎年決まった時期に変動を繰り返しているのが分かる。用途からも想像できるように、寒い冬が生産のピークのようだ。
1年ごとのグラフにすると、この傾向がはっきりします。
10月~12月がピーク、その後2月、3月ごろボトムとなり、またピークに向けて増産していくという、変動パターンがある。一方で、そうした毎年の変動に加えて、年によって違う動きや水準の変化があるが、季節変動の方が大きく、よく分からない。
それでは、季節調整を行い、毎年決まって生じる変動パターンを取り除いてみよう。
毎年の変動に隠れて分かりづらかった別の動きが、ハッキリした。このように、季節調整によって、毎年の変動を「季節要因」として抽出し、取り除くことができる。
石油ストーブの「季節要因」はどのようなものか、それを表す線を、先ほどの1年ごとのグラフへ追加してみよう。
左のグラフの黒い点線が、「季節要因」だ。この季節要因の動きを各年の毎月のデータから取り除くと、右のグラフのように隠れていた動きが現れる、ということになる。
季節調整がどのようなものか、イメージでかまわないが、おわかりいただいただろうか。それではいよいよ、ゲームソフトの売上に季節調整をかけてみよう。どのような姿が浮かび上がってくるだろうか。
季節変動を取り除いたゲームソフトの動向
ピークの位置ががらりと変わった。季節調整値では、毎年の年末商戦での盛り上がりに隠れて分かりづらかった今年7月のゲームソフトの売上が、過去に無い高い水準となっていたことが、鮮明になった。
このように、季節調整値には、毎年起こる変動の影に隠れた別の動きを、赤裸々にするという効果がある。
さて、季節調整をかけると、“年末商戦がなかった”ように見えてしまうが、そうではない。季節調整値同士で比較することで、単純な「今年も年末商戦は盛り上がった」から、「今年の年末商戦は例年以上に盛り上がった」といったようなことが分かりやすくなる。
また、例えば今年7月のような“常にはない動き”や、原データそのままで分かりにくかった、「平成28年夏をボトムとする上昇基調」、などの情報をいち早くキャッチすることができるというメリットがある。
このような季節調整の効能をご理解いただいて、季節調整値を使用していただけると幸いだ。
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