特集:「経済産業政策の重点」を紐解く(6)
中小企業の新陳代謝
全国約358万者、日本の事業者数の99%以上を占める中小企業。経済産業省は、持続化給付金や家賃支援給付金、実質無利子・無担保の借り入れ等を通じて、コロナ禍における中小企業の事業継続を支えてきた。ポストコロナに向けては、環境変化に対応した事業の転換・再構築も重要になってくる。
また、中小企業は、経営者の高齢化や人手不足の深刻化、国内需要の縮小など、様々な構造的課題に直面している。こうした課題を克服し、中小企業が中長期的な成長を実現することが、今後の中小企業政策の基本的な方向性だ。
中小企業政策の成果目標を改訂
今年7月、経済産業省は、中小企業政策の成果目標のあり方を改訂した。「黒字企業の数の増加」など個々の中小企業の生産性向上から、「全体の労働生産性を5年で5%向上」など、中小企業全体の生産性向上を成果目標とすることへと舵を切ったのだ。M&Aを通じた経営資源の集約化や生産性の高い企業によるシェア拡大、地域の課題解決に貢献する小規模事業者の持続的発展なども含め、あらゆる手段で実現を目指す。
中小企業の成長の方向性に合わせて
また、生産性向上のための創意工夫を効果的に支援するため、中小企業の成長の方向性を「事業規模拡大」と「持続的成長」の2つに大別した。例えば、海外市場を狙う製造業なら事業規模拡大が期待されるが、地域の名水を使った酒蔵のように地域資源を活用する企業や、コミュニティバスの運行のように地域の生活・コミュニティを支える企業では、必ずしも事業規模拡大が成長のゴールとはならないことから、それぞれのタイプに合った支援策が必要だ。
事業規模拡大を促すためには、今年10月に施行した中小企業成長促進法で、中堅企業に成長しても最大5年間は中小企業支援を受けられる規定を設けた。また、中小企業の持続的成長を支えるためには、販路開拓や自治体と連携した取組など地域に根差した支援を行っていく。さらに共通の基盤として、取引環境の改善やデジタル化への対応のサポート、事業承継・再生への支援等も進めていく。
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