9月も改善続く企業の生産マインド
「強気」が「弱気」上回る
経済産業省では、毎月初旬に、主要製品の生産計画を調べている。調査対象製品を製造する企業のうち、主要企業を対象に、その月と翌月の生産計画を調査している。
今回は、9月初旬に調査した9月と10月の生産計画の状況と、9月初旬段階での企業のマインド、つまり生産計画や見込みが強気だったのか、弱気だったのかを紹介する。
9月の生産計画とその補正値
9月の生産計画は、季節調整済指数で前月比5.7%の上昇を見込むという結果になった。この計画どおりに生産されれば、9月の鉱工業生産の実績は、4か月連続の前月比上昇となる。
さらに、10月の生産計画も2.9%の上昇という計画になっており、5か月連続の前月比上昇も期待される。
ただし、毎月、生産計画に対して生産実績は下振れする傾向にある。そこで、調査月の生産計画については、生産実績との間で生じる「ずれ」を統計的に推計し、補正計算を行っている。今回、9月の見通しについて計算したところ、9月は、前月比2.8%程度の上昇になるという結果だった。
生産計画の伸びを当てはめた鉱工業生産のグラフ
生産計画の伸びを10月までの鉱工業生産指数に当てはめてグラフ化すると下のようになる。
8月の鉱工業生産指数実績(確報)は88.1であるため、調査結果の伸び率5.7%をそのまま当てはめれば、9月の指数水準は93.1となる見込みだ。
さらに、10月の生産計画は、前月比2.9%上昇の見込みであることから、仮に9月の生産が計画通りに達成したとすると、10月の指数水準は95.8まで上昇することになる。
ただし、生産計画に対し生産実績は下振れするという傾向的なバイアスがあるため、このバイアスを過去の傾向に基づき補正すると、9月の伸び率は2.8%程度となり、この場合、9月の指数水準は90.6と見込まれる。
また、10月の生産計画も同様のバイアスがあることを考慮すると、10月の指数水準は、調査結果より低下することが考えられる。
生産計画の強気と弱気
生産計画を、前年同月の実績と比較すると、この生産計画がどの程度、強気なのか弱気なのかを判断する一つの目安となる。
9月の生産計画を原指数で見ると、前年同月実績比マイナス5.9%となり、8か月連続で前年同月実績を下回ることになり、低下幅は依然、非常に大きくなっており、生産計画には弱さがみられる。
ただし、生産計画の前年同月比のマイナス幅は、2月の生産計画以降、拡大していたが、6月生産計画からマイナス幅は縮小に転じ、4か月連続での改善となっていることから、企業の生産マインドには改善の動きがみられる。
また、1か月前時点で調べた生産計画が、生産開始直前に調べた生産計画と比べ、どの程度変動したかを示す数値が予測修正率となる。
9月の予測修正率は1.1%と、今基準内(2013年1月以降)において最大の数値となっており、企業の生産マインドに改善の動きがみられる。
生産計画を上方修正した企業数の割合から、下方修正した企業数の割合を引いた数値を「アニマルスピリッツ指標」と呼んでいる。この指標は、企業の生産計画の強気、弱気の度合いを推し量るために活用している。
この指標の推移とこれまでの景気循環を重ねると、おおむねマイナス5を下回ると景気後退局面入りしている可能性が高いという傾向がみられている。内閣府の景気動向指数研究会においては、2018年10月が景気の山と暫定的に認定され、同年11月以降、景気後退局面に入ったとされている。
一方、予測指数の当年9月調査結果では、アニマルスピリッツ指標は5.1と、8月の4.2から上昇し、2か月連続でプラスとなった。月々の上下動をならしたトレンドでもマイナス5を上回ってプラスに転じ、生産マインドに改善がみられる。
このアニマルスピリッツ指標の改善は、景気回復の表れとして今後も続いていくのか、その動向が注目される。
9月調査では、強気の割合は0.5ポイントの減少となったが、弱気の割合も1.4ポイントの減少となったことにより、アニマルスピリッツ指標は上昇となった。そして、強気の割合は31.3、弱気の割合は26.2と、8月に続き強気が弱気を上回る結果となった。
6月以降、国内外での経済活動再開の動きが進んだことで、新型コロナウイルス感染症の影響による先行きの不透明感が薄れ、企業の生産マインドもより改善したものと考えられる。
9月の調査結果では、前年同月実績比からは、生産マインドに弱気が見られるもののマイナス幅は縮小しており、また予測修正率やアニマルスピリッツ指標の動きを見ると、企業の生産マインドに改善の動きがみられる結果となった。
6月以降、国内外での経済活動再開の動きと合わせて、企業の生産マインドの改善が進んでおり、9月もその傾向が続くこととなった。
他方で、感染症の感染再拡大の影響に注意する必要があり、生産の先行きや企業のマインドに関しては、引き続き注意深くみていく必要がある。