9月の鉱工業生産 2か月ぶりの前月比上昇も一時的な要因か
本年9月の鉱工業生産は、季節調整済指数102.9、前月比1.4%と2か月ぶりの前月比上昇となった。8月は前月比マイナス1.2%の低下だったが、9月は再び上昇となった。
9月は先月時点での企業の生産計画の上方バイアスを補正した試算値(最頻値で前月比0.3%、90%レンジ:マイナス0.7%~1.3%)と比べると、大きめの上昇をみせた。とはいえ後述するように、9月は上昇業種も多くはなく、また一時的要因による上昇もあり、鉱工業生産は6月に大幅に低下して以来、低下と上昇を繰り返す動きから抜け出たとは考えにくい。四半期で見れば、速報ベースで第3四半期の指数値は102.4となり、第2四半期の指数値103.0からは前期比マイナス0.6%の低下となった。
汎用・業務用機械工業など7業種が前月比上昇
9月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち、7業種が前月比上昇、7業種が前月比低下、1業種が横ばいという結果だった。
9月は8月の低下の反動増という面もあるにしても、8月は12業種が低下であったことや、業種ごとの上昇寄与を見ても、強さを感じられる業種は多くない。
9月の生産上昇への寄与が大きかった業種は、汎用・業務用機械工業、生産用機械工業、電気・情報通信機械工業だった。
上昇寄与の最も大きかった汎用・業務用機械工業の前月比は9.4%の上昇で、2か月ぶりの上昇となっている。9月は一部品目で大型案件があった影響もあり、生産が大幅に上昇した。コンベヤ、運搬用クレーンなど上昇要因となっている。
上昇寄与2位の生産用機械工業の前月比は7.9%の上昇で、2か月ぶりの上昇となっている。半導体製造装置、化学機械等が上昇要因である。
上昇寄与3位の電気・情報通信機械工業の前月比は4.0%の上昇で、4か月ぶりの上昇だった。超音波応用装置、セパレート形エアコン等が上昇要因となっている。一部品目で大型案件があったことや、8月の猛暑によるエアコンの店頭在庫減少に対応した増産なども上昇に寄与したようだ。
出荷は前月比1.3%上昇
9月の鉱工業出荷は、指数値102.5、前月比1.3%と、2か月ぶりの前月比上昇となった。
業種別にみると、全体15業種のうち、10業種が前月比上昇、5業種が前月比低下だった。生産用機械工業、汎用・業務用機械工業、鉄鋼・非鉄金属工業などが上昇寄与業種となっている。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、最終需要財の出荷は前月比2.0%上昇、生産財の出荷は前月比0.7%上昇だった。9月は、生産財より最終需要財の上昇寄与の方が大きくなっていた。
最終需要財の内訳の中で、9月の出荷上昇に対する寄与、影響度が特に大きかったのは資本財だった。資本財(除.輸送機械)は、前月比8.6%と大幅な上昇となっていた。消費財については、耐久消費財の出荷は前月比マイナス2.2%の低下、非耐久消費財の出荷は前月比2.3%の上昇となり、消費財全体では出荷は前月比横ばいだった。建設財は、前月比0.9%の上昇だった。
在庫は大幅低下
9月の鉱工業在庫は、指数値102.7、前月比マイナス1.6%と、やや大きめの低下となった。この在庫の低下幅は、2016年11月の前月比マイナス1.6%と並ぶ、久しぶりの大幅な低下となった。
業種別にみると、15業種中、10業種が低下、5業種が上昇だった。
鉱工業在庫については、このところ高い水準の状況が続いていたが、9月は低下し、本年2月の102.4以来の水準まで低下した。
在庫循環図を見ると、本年第3四半期は、在庫積み上がり局面から在庫調整局面に入った。在庫については、本年第1四半期にいったん在庫調整局面に入ったものの、第2四半期は再び在庫積み上がり局面に戻り、在庫調整が進んでいなかったが、今後、さらに在庫調整が進むことが期待される。
基調判断は据え置き
本年9月の鉱工業生産は、2か月ぶりの前月比上昇だった。先月時点では企業の生産計画から、それに含まれる上方バイアスの例年の傾向も考慮すると、9月は最頻値で0.3%と、小幅な上昇が見込まれる試算結果だったが、実際には9月の上昇幅は前月比1.4%となり、それを上回る上昇となった。
とはいえ、9月の上昇については、一部の業種によるところが大きく、また、個別の大型案件や天候要因といった一時的な要因により上昇幅がやや大きくなった面もみられる。また、鉱工業生産はこのところ、低下と上昇を繰り返していますが、7-9月までの第3四半期でみると、指数値は102.4となり、第2四半期の指数値103.0と比べると、前期比マイナス0.6%の低下となっている。
先行きは、企業の生産計画では10月は上昇、11月は低下の計画となっている。企業の生産計画の例年の上方バイアスを考慮すると、10月は低下の見込みが高いと考えられる。また、11月も現時点では確たることは言い難いものの、10月比で低下が見込まれる。
このような動きを踏まえ、9月の鉱工業生産の基調判断は、「生産はこのところ弱含み」を据え置き、先行きを注視していきたい。
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