統計は語る

民間発注工事に弱さ 3か月連続で前月比マイナス

2019年8月の建設業活動指数

上昇基調に陰り

 2019年8月の建設業活動は、前月比マイナス0.6%と3か月連続の低下、指数値は111.5となった。
 前月比3か月連続低下は、今年に入ってから初めてのことであり、昨年5~7月にかけての連続低下以来のこととなる。指数値は今年2~3月頃の水準にまで戻ってしまった。ただ、今年に入ってから5月までの5か月間で6.3ポイントも指数値は上昇していた。これを踏まえれば、ここ3か月の連続低下分2.9ポイントは月平均下落率としては大きめだが、年前半の急激な持ち直しの動きの反動ともいえる動きが続いているともみられる。なお、前年同月比は0.1%の上昇と、辛うじて4か月連続の前年超えとなった。

 最近の傾向値(後方3か月移動平均値)の推移をみると、昨年後半以降、速いテンポでの低落が続いていたが、今年1月の大幅上昇により上昇方向へ転じ6月まではこの流れが継続していた。先月7月時点ではこの勢いは横ばい気味と停滞、更に8月で低下方向に転じていることがうかがえる。このところ上昇基調の動きは小休止、やや弱さがみられることが確認できる。

失速感、払拭できず

 8月の建設業活動は、民間発注工事が前月比マイナス0.6%と3か月連続低下、公共工事が前月比マイナス0.6%と2か月連続低下と、ともに続落となった。
 ただ、公共工事の今年に入ってからの動きは順調な動きをみせており、7~8月の2か月平均活動量は、2019年第2四半期水準と同値であり、活動が活発だったこの時期の活動水準を維持している。
 前月比の低下インパクトでみれば、民間発注工事が6割、公共工事が4割ほどの寄与率だったが、民間発注工事の個人投資、企業投資とも失速感は払拭されておらず、すう勢という観点でも民間発注工事の動きが気になるところである。
 内訳5事業でみれば、民間発注工事は建築工事が住宅、非住宅とも前月比低下、土木工事が前月比上昇だった。一方、公共工事は建築工事が前月比微増、土木工事は前月比低下だった。双方の内訳事業の動きには、共通性がみられなかった。

 各内訳5事業の動きを細かくみていく。
 民間発注工事では、住宅建築は前月比マイナス0.5%と2か月ぶりの低下だった。2か月ぶりの低下とはいえ、4月から8月までの5か月では、先月7月の微増を除き4回の低下と低落傾向にあり、弱い基調に変化はみられない。なお、指数値でみれば、2016年5月の102.6以来の低い活動域での動きがここ3か月続いている。
 非住宅(工場や倉庫など)建築は前月比マイナス1.1%と4か月連続の低下だった。1月から4月までは4か月連続で1%を超える前月比上昇で、この間9.2ポイントも指数値が急上昇したが、5月以降の4か月は一転して連続低下、この間マイナス7.7ポイント指数値が降下した。活動量としてはまだ低落前に比べ高いものの、複数月に及ぶ一律的な上昇、低下を繰り返すなど、中期的に不安定な動きをみせている。引き続き来月以降の動きを注視していく必要があるだろう。
 民間土木工事は前月比0.7%と3か月ぶりに上昇となった。6月までは大きめの上昇・低下を繰り返すなど動きが不安定な状況にありつつも、傾向値には復調の兆しもあった。ところが先月7月の指数値は100を割り込み、好調だった第2四半期値に比べ大幅に活動量は減衰するなど様相は一変、8月は連続低下に歯止めはかかったが、上昇幅は小さめとなっており復調とはいえない状況だ。
 民間の非住宅建築、土木工事の2事業からなる民間企業の設備投資関連工事は、今年5月までは、5か月連続上昇と強い上昇傾向にあったが、ここ3か月は前月比マイナス3.9%、マイナス1.7%、マイナス1.6%と1%を超える低下が3か月続いており、すう勢には弱さがみられる。
 公共工事では、建築工事(庁舎、学校、病院など)は前月比0.1%と2か月ぶりの上昇、土木工事は前月比マイナス0.6%と2か月連続の低下だった。今年前半の各月の動きは、建築工事、土木工事とも大きめの前月比上昇をみせることが多く、復調の動きがみられていた。今月8月は、建築工事は7月低下後の前月比微増、土木工事は前月比連続低下と、双方ともここ2か月の動きは弱いものとなっている。ただ、7~8月2か月平均指数値は、好調だった第2四半期値と比較すると、建築工事では1.5ポイントほど大きく、土木工事では同等程度の活動量を維持している。また、3か月移動平均によるすう勢でみても、上昇の勢いは衰えたが、それでもまだ上昇傾向を示している。
 全体としてみると、月単位の動きは上下動が激しく不安定さがある公共工事だが、ここ2か月の弱い動きをもって、今年上期にみられた復調の動きが変化したとまでは言い切れない。

持ち直しの動きにあるものの一部に弱さ

 2019年8月の建設業活動は、3か月連続の前月比低下となった。ここ3か月の動きには、それまでの上昇の勢いは減衰し、少なからず不安な要素も見受けられる。とはいえ、この連続低下の動きは、今年前半の強い上昇傾向のなかの反発的動きの範ちゅうにある、ともみてとれる。
 内訳事業では、民間住宅建築工事の動きの弱さは継続しており、この8月でも改善には至っておらず、今年上期は堅調な動きにあった民間企業の設備投資関連工事もここ数か月の動きは低調なものとなっている。民間発注工事全般にわたり曇り空といった様相だ。他方、もともと月々の動きに不安定さがある公共工事には、今年上期にみせた上昇の勢いは衰えはしたものの、復調の動きは継続しているとみられる。

 これらの状況を踏まえ、8月時点の建設業活動全体の基調は「全体では持ち直しの動きにあるものの、一部に弱さがみられる」としている。

【関連情報】

全産業活動指数 結果概要