政策特集ひろがる標準化の世界 vol.3

サービスロボットや保冷宅配便 世界展開の原動力に

クール宅急便は海外でも展開されている

 空港や商業施設などで目にする機会が増えてきた案内ロボットや介護現場で用いられるアシストロボット。少子高齢化に伴う労働力不足解決策の一助として今後の利用拡大が見込まれる、これらロボットを活用したサービスが、対象分野をモノからサービスに広げ、「産業標準化法」として生まれ変わった新JIS法に基づく規格第一号となった。

いかに「共存」するか

 規格づくりに携わった産業技術総合研究所ロボットイノベーション研究センターの中坊嘉宏ディペンダブルシステム研究チーム長はサービスロボット標準化の意義をこう指摘する。
 「主に工場で稼働する産業用ロボットと異なり、サービスロボットは、公共の場所で、一般の人を広く利用対象とします。このため人間とロボットが、いかに安全に共存するかという新たな視点が求められるのです」。

 サービスロボットそのものの安全性はすでに国際規格で定められているが、今回制定された新規格の特徴は、ロボットを利用して、さまざまなサービスを提供する事業者に対するリスク低減策を定めている点だ。ロボットサービスは直接、恩恵を受ける利用者だけでなく、公共の場面などで使用されるため、不特定多数の第三者がリスクを負う恐れもあるためだ。
 こうした観点から規格策定においては流通大手企業や医療福祉法人、空港会社や鉄道事業者といった多様な関係者が議論に参画。現場の実情を反映し、サービス提供側が実施すべきリスクアセスメントや安全管理、教育、運用体制などが定められた。
 そしていま。この安全規格を国際標準(ISO)化するための作業が進む。中坊さんは「さまざまなロボットが世界中で活躍できるよう環境整備を進めたい」と規格化を通じたさらなる市場拡大に意欲を示す。

健全な市場成長の一助に

 経済成長やネット通販市場の拡大に伴い、需要が拡大する物流サービス。ヤマトホールディングスが展開する「クール宅急便」も規格を弾みに世界に広がりつつある。
 1988年にサービスが始まったクール宅急便。日本での年間配達個数は2億個を超え、四季折々の地域の食材が食卓を彩る物流インフラとして、今や暮らしに欠かせないサービスである。海外、とりわけ経済成長著しいアジア地域でも需要が高まっており、同社はすでに中国・上海やシンガポール、マレーシアなど8地域でサービス展開している。一方で現地企業が同様のサービスを独自に始めるケースが少なくなく、不適切な温度管理などオペレーション面での課題が浮上、劣悪なサービスが市場の健全な成長を妨げる懸念が顕在化している。
 高品質なサービスを海外市場に普及させる方策として、同社が着目したのが標準化を通じたサービスに対する利用者の信頼性の醸成である。同社の大河原克彬経営戦略担当マネージャーはこう語る。
 「規格の活用によって宅配便事業者のサービス品質の向上を促し、社会に安全・安心な保冷輸送インフラをもたらすことでアジアの経済発展と豊かな社会の実現に貢献できないかと考えました」。
 同社は英国規格協会(BSI)に依頼し、日英両国の関連企業や業界団体、有識者と小口保冷サービスに関する国際標準化に取り組み、2017年にはPASと呼ばれる国際規格が発行された。車両に搭載されている保冷庫などの空間の温度管理を中心に、配送中の積み替え作業に対する要求事項を定めるものである。
 政府も日本発の物流サービスの規格化、国際標準化をオールジャパンの推進体制で後押しする。2018年には国際標準化機構(ISO)で新たな委員会が設立され、中国やマレーシア、タイといった国々が積極的に参加。前述のPASを原案とした新たなISOの2020年発行を目指し、策定作業が精力的に進められている。
 人間と共存するロボット、あるいは多様な生活ニーズにきめ細かく応える物流サービス。いずれも今後の日本の産業競争力の源泉である。日本発のイノベーションを世界展開する上で、標準化戦略はますます大きな意味を持つ。