成約価格もいまだ上昇 近畿圏で好調な戸建販売
首都圏は「在庫積み上がり」の局面に
足下の指数高水準
上のグラフは、サービス産業活動指数の「戸建住宅販売業」と、その内訳として公表している首都圏及び近畿圏の戸建住宅販売業指数である。戸建住宅販売業は、2010年を100とすると、足もとの2019年1月の値は134.3と好調だ。この値は、サービス産業活動指数の全298業種分類の中で、上位から27番目であると言えば、好調さが伝わるだろうか。中でも、近畿圏は150.7と首都圏(126.5)に比べて好調だ。
戸建住宅販売業にかかる目下の話題と言えば、今年10月に予定されている消費税の引上げ(8%→10%)だろう。2014年4月に消費税が5%から現行の8%に引上げられた際は、それまでの急激な指数上昇が、経過措置終了(2013年9月末)を境に減少に転じており、駆け込み需要と見られる動きがあった。しかし、今回は消費税の引上げ幅が前回より小さいせいか、あるいは、もっと長い目で需給の駆け引きをにらんでいるのか、今のところは前回に比べて落ち着いた動きに見える。
首都圏では局面に変化?
より長期的な視点からは、戸建住宅について、昨今マスメディア等を通じて人口減少に伴う空き家問題が取り上げられることが多く、なんとなく「在庫がどんどん積み上がってゆく」イメージをお持ちの方もいるのではないだろうか。
下のグラフは、東日本不動流通機構と近畿圏不動産流通機構が、それぞれ首都圏、近畿圏について公表している戸建住宅の「新規登録件数」と「在庫件数」である。製造業になぞらえれば、前者が「生産」、後者が「在庫」にあたる。前年比のグラフを見比べてみると、生産が増えればあまり間をおかずに在庫が増えている。また、生産も在庫もゼロの周りをプラスになったりマイナスになったり、循環するような動きをしている。
このグラフを見ると、在庫がどんどん積み上がっているというイメージはそぐわないだろう。むしろ、需給のせめぎ合いがうかがえる。そこで、主に製造業で需要と供給のギャップを見る際に用いられる在庫循環図を、戸建住宅についても見てみよう。
近畿圏も首都圏も、2018年第4半期(グラフ中赤印)はグラフの右側、すなわち拡大期にある。しかしよく見ると、近畿圏が、かろうじて「需要拡大に応じて在庫を積み増す局面」にあるのに対して、首都圏はその域を超えて、「需要が伸び悩み、在庫が積み上がる局面」にさしかかっているように見える。
制約価格にも違いが
次に価格を見てみよう。下のグラフは、新規登録物件の平均価格と、成約平均価格の推移である。前者は売り出し価格、後者は需給が一致したところの価格と言える。
近畿圏では、売り出し価格と成約価格がほぼ連動しているのに対して、首都圏ではわずかに乖離が見られる。振り返ってみれば、価格上昇局面にあった2016年頃でも、売り出し価格に比べると成約価格の上昇はゆるやかだった。そして、足もとの2018年第4四半期では、横ばいの売り出し価格に対して成約価格はやや下がっているようにも見える。こうしてみると、価格の面からも首都圏における局面変化の気配が見えるようだ。
今後、サービス産業活動指数の戸建販売業はどのような動きを見せるのだろうか。東西の違いにも要注目だ。