統計は語る

3期ぶりに低下の訪日外国人消費 その裏にアジアの落ち込みあり

サービス産業への影響も懸念


 経済解析室で試作している「訪日外国人消費指数(TCI)」では、訪日外国人全体の動きを示す指数のほか、訪日者の出身地域別に集約したアジアと欧米の2つの地域別指数も作成することができる。
 平成30年上期(1-6月期)の訪日外国人全体の指数についてはこちらのミニ経済分析でご紹介したところだが、今回は、この地域別指数の動向について紹介する。

対照的な動き

 アジアと欧米、2つの地域別指数の動きを比較してみる。
 30年上期の訪日外国人全体の指数は、季調済指数値で370.1、前期比(対29年下期比)マイナス2.5%と3期ぶりの低下。これを地域別にみると、アジアの指数値は423.1、前期比マイナス7.6%と3期ぶりの低下、欧米の指数値は242.1、前期比9.2%と8期連続の上昇となった。訪日外国人全体の30年上期の指数値は、昨年29年平均値をかろうじて上回るも、アジアの指数値は、昨年平均値を下回った。対照的に、欧米指数は順調に水準を上げ、当期も引き続き安定した動きをみせている。

アジアのマイナスを欧米がカバー

 訪日外国人全体の前期比変動に対するアジア及び欧米の地域別の寄与をみてみる。
 30年上期の訪日外国人全体の前期比マイナス2.5%に対し、アジア指数はマイナス5.49%ポイントの低下寄与、欧米指数は1.17%ポイントのプラス寄与となった。アジア指数は29年通年では大きなプラス寄与だったが、当期は大きなマイナス寄与となった。一方の欧米指数は、8半期連続のプラス寄与と好調を持続している。
 30年上期の訪日外国人全体の旅行消費は、アジアからの観光客の消費活動の鈍さからマイナスとなったが、そのマイナス幅は、欧米からの観光客の消費活動の好調さによって多少緩和された、という形だ。

ほぼ全ての費目で不調なアジア、飲食費の好調さが際立つ欧米

 アジアと欧米それぞれの指数変動に対する、費目別の寄与をみてみる。
 アジア指数をみると、アジア全体の前期比マイナス7.6%に対し、「その他」がマイナス3.29%ポイント、買物代がマイナス2.87%ポイントと、両者で低下寄与の大部分を占めている。当期は6費目のうち唯一、娯楽サービス費だけがプラス寄与だった。29年通年ではほとんどの費目がプラス寄与と好調だったが、30年上期では、多くの費目でその勢いは持続しなかった。

 欧米指数をみると、欧米全体の9.2%上昇に対し、飲食費が7.23%ポイントと、非常に大きなプラス寄与となった。欧米の飲食費は25年上期以降、11半期連続のプラス寄与をみせているが、この30年上期では、その好調さをさらに強めたようにも見受けられる。当期は訪日外国人全体の費目別指数でも飲食費の伸びが際立っていたが、これは、欧米指数の飲食費の伸びのおかげだったというわけだ。

 
 30年上期のアジア及び欧米の地域別指数の動向には、大きな違いがみられた。今夏、日本では、猛暑、荒天、大型地震と、観光に影響を与えるような出来事が多数生じた。これらの影響で、アジアや欧米からの観光客の2018年後半の訪日消費活動がどのように変化し、日本のサービス産業全体にどれほどの影響を及ぼすのか、非常に気になるところである。

関連情報

ミニ経済分析「2018年上期の訪日外国人消費指数の動き」(2018/8/17)