政策特集価値を創る製品安全 vol.2

製品安全誓約でネットの危ない出品を削除。アマゾンや楽天など7社が参加

インターネットでの買い物が日常的になる一方で、安全基準を満たしていない製品やリコール対象製品が販売される事例が後を絶たない。購入された製品が重大な事故を引き起こした事例も報告されている。

そのような製品がもたらすリスクからこれまで以上に消費者を保護することを目的として、日本版「製品安全誓約」という枠組みが2023年6月にスタートした。インターネットモール運営事業者と、経済産業省や消費者庁などの国の関係官庁が協力して、危ない製品が取引されないようにしている。

製品安全誓約は全12項目。国の要請があれば2営業日以内に出品削除

リチウムイオンバッテリー、乳幼児用ベッド、オートバイ用ヘルメット…。

2023年10~11月の2か月間で、大手インターネットモールで計81件の出品が取り消された。取り消したのは、出品者自身ではなく、出品者に売り場を提供する立場のインターネットモール運営事業者である。安全性が確認できない製品であるとして、経済産業省など関係省庁から削除するように要請を受けていた。

製品安全誓約には現在、アマゾンジャパン、eBay Japan、auコマース&ライフ、メルカリ、モバオク、LINEヤフー、楽天グループの7社が署名している。各社は、消費者に危ない製品が届かないようにするため、12項目に自主的に取り組むことを文字通り“誓約”(プレッジ=pledge)している。

2023年6月、製品安全誓約に署名したインターネットモールを運営する7社

2023年6月、製品安全誓約に署名したインターネットモールを運営する7社

そのうちの一つが、経済産業省や消防庁などの規制当局から削除要請があった製品については、2営業日以内に出品を削除するという項目である。その他には、リコール関連など国が公表する製品安全についての情報を定期的に確認することや、欠陥製品を繰り返し販売する悪質な出品者に対してはアカウントの停止など適切な措置をとることなどが盛り込まれている。

ネットモールに危ない製品が流通する理由…海外出品者に規制及ばず

インターネットモールでは、安全性が確認できない製品が多数流通している可能性が指摘されている。

経済産業省は、2020年度から「ネットパトロール事業」として、インターネットモール上の出品を監視している。2021年度に過去に法令違反や事故が多かった製品を中心に604件について調べたところ、製品が安全基準に適合していることを示す「PSマーク」の表示義務に違反している、あるいは違反が疑わしいと考えられるケースが163件もあった。

地方自治体が2021年度に行った約6000件の小売店への立ち入り検査では、 PS マークの表示義務違反が判明したのは4件だった。調査・検査の実施主体が異なるなど、単純な比較は難しいが、インターネットモールに問題のある製品の出品が多く混ざり込んでいることがうかがえる。

製品安全を保つために実施された2021年度のネットパトロール事業の結果(経済産業省産業構造審議会   第13回「製品安全小委員会」資料より)

さらに、出品者が信頼できるのかどうかについても大きな懸念がある。同じネットパトロール事業の調査で、出品者に問い合わせをしようとしてもメールアドレスが不明などのため、連絡できなかったケースが190件、連絡はしたものの返答が来なかったケースが91件に上った。連絡できなかったケースのほとんどは、海外からの出品者であった。

安全な製品を消費者に届ける法令上の義務は、国内で製品を生産したメーカー、輸入品の場合には、国内の輸入事業者、それらを販売する事業者が負う。他方、インターネットモールの海外出品者は、安全の基準への適合といった義務の対象とはなっていないのが現状である。

製品安全を巡る図解。法律が想定するこれまで流通形態と、海外からの直接販売の例。経済産業省  第13回「 消費生活用製品の安全確保に向けた検討会」資料より

インターネットモール運営事業者も、消費者の保護は重要課題と位置づけてきた。以前から各社が独自に、安全性が確認できない製品を排除するための工夫を重ねてきた。国としては、こうしたインターネットモール運営事業者の自主的な動きを後押しするという形で、製品安全誓約の枠組みができることになった。

製品安全誓約は世界各地に広がる。日本独自の工夫も

インターネットモールでの買い物を巡っては、世界各国で日本と同様の問題が生じている。その解決策として製品安全誓約は2018年に欧州連合(EU)で署名されたのを先頭に、オーストラリア、韓国、カナダでも始まっている。

2021年には経済協力開発機構(OECD)が「製品安全誓約の声明」を公表し、世界中で一貫した「製品安全誓約」ができるように、インターネットモール運営事業者と各国当局が取り組むべき内容を提示した。日本版「安全誓約」も、OECD声明に基本的に沿った内容になっている。

日本版で独自に追加した項目もある。インターネットモール運営事業者は重要業績評価指標(KPI)として、国からの削除要請にどれだけ応じたかだけでなく、消費者からの指摘に対してもどれだけ対応したかについて報告することになった。また、消費者庁が出品削除の状況を分析するとともに、国の要請を受けてどれだけ削除したか、月単位の速報値も公表している。

インターネット取引の市場は今後ますます拡大していくとも見込まれており、市場の変化に合わせた対策が求められる。消費者の安全を最優先に、「製品安全誓約」を含め、より効果的な対策を模索し続ける必要がある。

【関連情報】

▶リコール製品や安全ではない製品から消費者を守るための日本版「製品安全誓約」がスタートしました<経済産業省>

▶経済産業省「消費生活用製品の安全確保に向けた検討会」報告書

▶製品安全誓約(日本国)<消費者庁>

▶OECD 製品安全誓約の声明(仮訳)<消費者庁>