地域で輝く企業

【北海道発】地球をとことん見通す。地質調査で世界が頼る技術集団

北海道札幌市 レアックス

普段は目にすることのできない地下の状況を調査、分析する地質調査。一般になじみは薄いが、インフラの整備や災害復旧などを進めるうえで欠かせないものだ。

この地質調査や関連の事業で、北海道から日本全国そして世界に事業展開しているのが「レアックス」だ。調査機器の開発・製造・販売から調査データの解析までを手がける。最先端技術を取り入れた地質調査システムの国内シェアは9割を占める、ニッチ市場のトップランナーだ。

高い技術で「地球を見える化」し、私たちの生活を足元で支える企業の志と戦略とは……。

国内シェア90%を誇るレアックスのボアホールカメラシステム(BIPS)

地質調査に新しい手法を。北大出身の技術者が創業

レアックスは1988年北海道大学出身の地質技術者・亀和田俊一氏(前社長)が同じく北大出身の友人、先輩と3人で創業した。2代目の成田昌幸社長はレアックスの成り立ちについて、語ってくれた。

「『これからの地質調査は技術者が自分の目で見て判断するだけではだめだ。画像化などにより客観的データとして提示する必要がある』と、亀和田と友人、先輩達が世界に先駆け始めたのがこの会社です」

レアックスの主力商品であるボアホールカメラは、ボーリング調査で掘削した穴の中に下ろしていくことで、穴の壁面を360度、ゆがみの少ない鮮明な画像で連続撮影することができる。亀和田氏が開発した世界初のシステムだ。地質調査の会社として、調査用機器の開発・製造も手がけたことが、画期的だった。

レアックス(RaaX)という社名は、Razor(剃刀)とAxe(斧)を合成した言葉で、「ミクロを分析する『剃刀』とマクロを判断する『斧』の両方の刃を併せ持ちなさい」との、創業者の恩師で地質学者の湊正雄北海道大学名誉教授(故人)の教えに由来する。経営理念の中でも、「最新テクノロジー(剃刀)と地球科学(斧)の融合」をうたっている。

北海道札幌市のレアックス本社。ここから、全国、世界へ事業を展開する

世界最高水準の調査カメラ。阪神・淡路大震災の復旧作業でも活躍

レアックスのボアホールカメラシステム(BIPS)は、世界最高水準となる2880ピクセルの画像解像度を誇っている。47都道府県すべてで使われ、現在、国内シェアは90%に達している。海外展開も積極的に進めており、米国、スイス、オーストラリア、インドネシアなど12か国で稼働実績がある。

1995年の阪神・淡路大震災の際には、倒壊を免れた建造物について、建て直すべきか、補強することで維持可能かを判断するための地盤調査に、レアックスのBIPSが活躍。早期復旧に一役買った。若き日の成田社長も現地に派遣され、直接調査に従事したという。

成田社長は経営学を学んでいた大学時代にレアックスでアルバイトをしたことが入社のきっかけとなった。

「当時はバブル景気まっただ中で、就職先はたくさんありました。正直、ここでアルバイトしながら、良い就職先を探そうと思っていたのですが、そのうちに色々な『ミッションインポッシブル』を与えられ、取り組んでいくうちに、ここの社員になった方がおもしろい人生だと思うようになったのです」

社員の6割は技術者。成田社長のような文系出身者は少数派だ。

ボアホールカメラを手にする成田昌幸社長。大学時代にアルバイトしたことがきっかけで、レアックスに入社した

札幌から全国、世界へ。売上高の10%は研究開発費

札幌に本社を構えているレアックスだが、北海道内の仕事と道外の仕事の比率は、4:6程度。

「北海道の企業ですが、私たちの機器や調査へのニーズは全国にあります。例えば西日本で地震や水害などが発生すれば、そこで調査が必要になります。エネルギー政策などの国家プロジェクトの地質調査にも私たちの技術は欠かせないと思っています」と成田社長は語る。

大切にしているのは、技術を磨き続けることだ。売上高の10%程度は常に研究開発に充てているという。「今あるシステムは5~6年に1度はつくり変えていく必要がある。資金を投じて研究開発を継続していくことが、顧客満足度の向上につながります。ニッチ市場の中で圧倒的な存在感を示していくために不可欠だと考えています」と、成田社長は強調する。

海外展開に力。社員、組織の成長促す

これからのレアックスを展望した時、成田社長がまず挙げたのは海外展開の重要性だ。

レアックスは2017~19年、水不足に苦しむ南米ボリビアで国際協力機構(JICA)の井戸修繕事業に参画した。メンテナンスされることなく、放置されている井戸について、目詰まりを洗浄し、取り除くことで復活させようというものだ。そこで、レアックスのカメラが井戸内部の確認作業に力を発揮した。担当者が現地に長期滞在して作業にあたり、成田社長も自ら現地に足を運んだ。

「外務省やJICAとのパイプを築くこともできたし、海外での事業は継続して展開していきたい。我々の技術が地球の反対側でも人々の生活に貢献しているということは、社員のやりがいにつながります。現地に送り出した社員は大きく成長するし、送り出した組織もその社員の仕事をカバーする中で成長することができます」

会社の直接的な利益だけではないプラス効果を、成田社長は指摘する。

南米ボリビアに社員を派遣。井戸の復活に貢献した

子どもたちと共にSDGsに取り組む。積極的に情報発信

もう一つ力を入れているのがSDGsへの取り組みだ。レアックスのホームページにはSDGsのページを設けており、すべての漢字にルビがふられている。「株主目線ではなく、将来を担う子どもたち」を意識しているためだ。

北海道内で様々なイベントに参加するだけでなく、学校へ出向いての出前講座や会社訪問を受け入れ、自社の経験を通して、地質調査の重要性や国際協力の大切さを伝えている。VR(仮想現実)技術とボアホールカメラで撮影した画像を活用して、地中に潜る疑似体験ができるツール「アースダイバー」を開発し、イベントなどで積極的に活用している。

レアックスは現在、大学の研究者らとの共同研究に力を入れている。成田社長は、資金力などに限りがある中小企業が行政や教育研究機関と連携していくことの重要性を指摘。そのうえで「外に向けて情報を発信していくことが大切だ」と語った。

「自分たちの技術や取り組みを一般の人に知ってもらうということは、極めて重要だと思っています。積極的にメディアに出ていくことで認知度が上がり、信頼性も高まってくる。社員に対しても社員の家族に対してもプラスの効果がある」

ニッチのトップランナーだからこそ、積極的に情報発信していくことが大切だと、成田社長は繰り返し強調した。

レアックス本社で開催された札幌市立札幌開成中等教育学校の校外研修(2022年12月)

【企業情報】▽公式サイト=https://www.raax.co.jp/▽社長=成田昌幸▽社員数=36人▽創業=1988年