METI解体新書

デジタルで、経済産業省から行政を変えていく

【大臣官房 デジタル・トランスフォーメーション室】
田村 裕嗣(左):大臣官房 デジタル・トランスフォーメーション室 デジタル化推進マネージャー。システム開発の知見で省内課室の支援を担当。
中山 ひとみ(中央): 同室 デジタル化推進マネージャー。省内のデータ基盤の構築、データ更新の自動化・可視化に携わる。
井垣 友貴(右):同室 室長補佐 行政手続きなどのオンライン化、‘民間IT人材’の採用、デジタル手続法関連を担当。

より早く、より便利に。民間企業での経験を行政でも

――― 今回は、経済産業省の中で「デジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)」を推進する大臣官房DX室の3名に話を伺います。経済産業省のDXとは何でしょうか。

井垣:一般的にDXとは、デジタル技術を使ってビジネスや社会を変革することですが、私たちはデジタル庁とも連携して、行政や経済産業省そのもののDXを進めています。単にデジタル化をするのではなく、メインは「X(トランスフォーメーション:変革・改革)」です。経済産業省の仕事自体を変えていくことで、よりよい政策やサービスを提供できるようにする、その方法の一つとしてのデジタルがあります。

「単にデジタル化をするのではなく、経産省の仕事自体を変革する」と語る井垣さん

――― どんなことをやっているのでしょうか。

井垣:わかりやすいのは行政手続きなどのオンライン化です。これまで紙で行っていた手続きなどをオンラインでできるようにすることですね。例えば、当室では経済産業省などが受け付ける一部の申請手続きをオンライン化して、迅速な審査や交付を可能にする「Gビズフォーム」という電子申請システムを運営しています。

中山:私はデータエンジニアとして、省内のデータの利活用を進めています。具体的には、データを活用できる基盤の構築や、データの可視化と職員の皆さんへの利用支援といった内容ですね。私は民間企業出身ですが、以前勤めていた会社でも近い経験があり、経済産業省では法人の様々な活動情報をオープンデータとして省内外に提供する「Gビズインフォ」にも関わっています。

田村:私は省内の様々な課室がシステム開発を行うプロジェクトを進めるときに、一連の流れをサポートしています。私も民間企業出身ですが、前職では通信社のシステム系子会社で、システムエンジニアとしてニュース配信システムの構築や保守、運用を約10年にわたり担当していました。

―――皆さん、専門的な知見があるのですね。経済産業省で働こうと思ったきっかけは。

井垣:DX室は、行政官6名(自治体、他省庁からの出向含む)と中山さんや田村さんのようなデジタル化推進マネージャー13名という体制で、多種多様なバックグラウンドを持つ人たちがいます。私は警察庁からの出向で、DXに関わるのは今回が初めてですが、お二人は民間企業出身のバックグラウンドを生かして活躍中です。

中山:経済産業省の中に入ることで、技術的な面と仕組み作りの両方に挑戦できることに魅力を感じました。民間側からお客様としてデータ利活用の支援をするより、中に入ったほうが環境や業務が分かりますし、継続的に伴走できます。

田村:私は今年6月に入省したのですが、転職サイトの募集を見て興味を持ったことがきっかけです。普通に民間のサイトに掲載されていてびっくりしました(笑)お固い印象がありましたが、中に入るとベンチャー企業のような雰囲気を感じています。

中山:良い意味で行政のイメージは変わりました。より早く、良い方向に変えて行こうという空気を感じて、仕事はやりやすいです。ただ、立ち上げた案件をいかに収束・定着させていくかという所が経済産業省の課題であり、DXを進める上でも大事な所で、省内の職員もその危機感を持っていると感じます。

負担を軽減し、より必要な業務や政策立案に時間が取れるように

「定型業務の負担を減らせるようサポートしたい」と語る中山さん

―――業務にあたる思いや、やりがいについて教えてください。

中山:定型的な業務にかかる職員の負担や時間を減らし、もっと他の業務に時間を使いたいと思う人をサポートしたい。そうすることで、より良い政策が生み出されると思っています。例えば、統計データのグラフ作成自動化。政策立案や業界分析のために、様々な統計データを探し、グラフ化するという作業を、各課室が手作業でやっているのが現状です。前任者の職人技が入っていてグラフを更新するのに時間がかかることも。

そこで、省内でよく使うデータを一カ所に集めて整えておいて、楽にアクセスでき、データ更新が自動化できる仕組みを一部の課室で検証しました。今年中に全職員がそのデータを自分の手元でさわれるようになる予定です。実際に使ってみた職員からの感謝の言葉は、モチベーションアップとやりがいにつながりますね。

田村:私も省内担当者から、システム開発の事業者さんと話す会議に一緒にいてくれて助かったと言われ、やりがいにつながっています。国の調達の仕組みなど、今まで知らなかった新しいことを知ることも面白いです。

井垣:組織内部の変革のために働くというのは初めての経験で、新鮮です。行政の決められたルールの中で、いかにデジタル化を進めていくか、という観点が個人的には面白いです。ルールを変えなくてもできるならそのほうが業務効率的なので、いかに今のルールの中で良い方向に持っていくかを考えることが楽しいですね。

変えようとする意思があれば、変えられる

――― どうしたら行政のDXが進んでいくと思いますか。

井垣:DXが重要なのは分かるものの、実際に何をやれば良いか分からない人も多いと思います。まず、DXは人ごとではないという自覚を持つことです。DXで解決できる課題を知っているのは現場です。現場が変えたいと思うことが大事です。

中山:今までやってきたことを否定されたくない、新たな業務が増えるのでは、とデジタル化に負担感や抵抗感がある人もいるので、メリットに目が行き、抵抗感をなくす仕組みを考えていきたいです。あくまでデジタル化はツール(手段)なので、事業目的やその先の経済産業省のミッション達成のために「デジタル化もしてみた」という感じ。意識せずに変化を起こすことができるようにしたいですね。

田村:前職で、「デジタル化するより自分でやった方が早い」と言われたことがありますが、経済産業省はあまりそういう人はいないと感じます。変えようとする意思があれば、変えられます。

「意思があれば変えられる」と語る田村さん

井垣:私たちDX室も、「デジタルで経済産業省から行政を変えていく」というミッションを掲げています。単にデジタル化を進めるだけでなく、組織そのもの、行政そのものを変革していくという思いです。行政全体のDXはデジタル庁が担っていますが、経済産業省が変わることで、行政全体に波及していく良い循環を作りたい。重要なのは風土を変える、考え方を変えるということ。生成AIの利活用に関する検討も含め、変革に向けた様々な取組を積極的に進めていきたいです。

――― 皆さんの目標や週末の過ごし方などを教えてください。

井垣:いずれ出向元の警察庁に戻りますが、同じ行政機関として、業務改革の悩みは同じです。私は警察組織をよくしたいとずっと考えてきたので、出向元でもDXを進めていきたいですね。ちなみに休日も刑事ドラマや警察小説を読み漁るなど、警察のことが頭から離れませんね(笑)。

田村:現在、3人の子育て中ですが、リモートワークもできるなどワークライフバランスが向上したため、子どもとの時間を増やすなど、休日も満喫しています。

中山:私は、自治体から出向で経済産業省に来ている室員の地元のマラソン大会にDX室の職員と参加予定です。職場はイベント好きな人が多くて、楽しいです。

井垣:DX室では行政官だけでなく、お二人のような民間出身の職員と協力して行政のDXを推進しています。私たちと一緒に行政DXを推進いただける方を随時募集中です。ぜひお気軽にご連絡ください。

多種多様なバックグラウンドを持つ人が集まる大臣官房DX室

(問い合わせ先)
大臣官房デジタル・トランスフォーメーション室
E-mail:bzl-kanbo-DX●meti.go.jp
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