政策特集夏休み親子企画 試験に出る経済・産業 vol.2

【親子で学ぼう時事問題】地球温暖化と電力・エネルギー

今年の夏、日本列島は危険な暑さになっています。猛暑や豪雨などの異常気象は、人間が石炭や石油などの化石燃料を使うことで排出される二酸化炭素など「温室効果ガス」が増えた結果、地球の表面の温度が上昇する「地球温暖化」が起きていることが主な原因と考えられています。どうすれば温室効果ガスを減らしていくことができるのか、また、二酸化炭素の排出とかかわりが深い、電力やエネルギーについて、経済産業省のキャラクター「めてぃ子さん一家」と一緒に学んでいきましょう。

パリ協定=世界150か国以上が参加、温室効果ガスを減らすと約束

地球温暖化の原因となる「温室効果ガス」の意味は、植物を育てる「温室」のような効果で地球を暖めるガス、ということです。地球の表面は太陽の光によって暖められていて、温室効果ガスは、その熱が地球から宇宙へ逃げないように、わたしたちが生活しやすい温度に調節する役割をしています。この温室効果ガスが増えすぎたことで、地球温暖化が進んできました。温室効果ガスには「二酸化炭素」や「メタン」など、いくつかの種類がありますが、地球温暖化のいちばんの原因と言われているのが二酸化炭素です。

大気中にある温室効果ガスが増えるきっかけになったのは、18世紀の後半にイギリスで起きた「産業革命」でした。石炭を燃やし、水を沸騰させて作った蒸気の力で機械を動かすことで、織物などを大量生産できるようになり、ものづくりを手工業で行っていた時代から大きく転換しました。産業革命は世界に広がり、人間が石炭や石油などの燃料を使う量が増えたことで、温室効果ガスの排出量も増え、地球温暖化が起こりました。

地球温暖化によって、グリーンランドなどの氷河が溶け、海の水位が上昇したほか、熱波や干ばつ、砂漠化、集中豪雨、洪水などの異常気象が増えました。この影響で、生活に必要な水が得られない、食糧が足りない、人々の健康をおびやかす感染症が流行する、といった深刻な問題が各地で起きています。

2022年にバングラデシュで起きた洪水。地球温暖化による気候変動は地球環境に大きな影響を及ぼしている

地球温暖化を食い止めるため、1997年に結ばれた「京都議定書」では、先進国による2020年までの温室効果ガス削減目標が決められました。しかし、その後、途上国は急速に経済が発展し、それに伴って排出量も急増しています。先進国だけで地球温暖化を食い止めることは難しく、2015年には途上国も参加する「パリ協定」がまとめられました。

パリ協定は、世界の気温上昇を産業革命前に比べてプラス2度未満、1.5度以内におさえることを目標としています。2021年の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)でも、世界の気温上昇を1.5度以内におさえる努力を追求することで合意しました。日本は、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度の排出量から26%削減することを目標として定めましたが、同じ基準で比較するとアメリカは18~21%削減、EUでは24%削減となっているため、日本の目標数値はかなり高いことが分かります。

カーボンニュートラル=温室効果ガスの排出量「プラスマイナスゼロ」

2020年10月、当時の菅義偉首相が「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。「脱炭素社会」は地球温暖化の原因となる温室効果ガスのうち、最も温暖化への影響が大きい二酸化炭素の排出量ゼロを実現した社会のことをいいます。

「カーボン」は炭素、「ニュートラル」は中立という意味があり、発電所や工場などからの二酸化炭素の排出量と、森林の樹木が光合成のために吸収する二酸化炭素の量を均衡させる(=つりあいを取る)ことを表します。

温室効果ガスの全体の排出量を大幅に減らしていくことは大切ですが、排出量をゼロにすることが難しい分野もたくさんあります。そこで、森に木をたくさん植えることで、樹木が光合成により吸収する二酸化炭素の量を増やしたり、二酸化炭素を地中深くに貯める「CCS※」と呼ばれる技術を用いたりすることで、「プラスマイナスゼロ」にするというのがカーボンニュートラルの考え方です。日本のようにカーボンニュートラルを宣言する国は年々増えており、2021年11月時点で154か国・1地域となりました。

日本はこれまでにどれくらい温室効果ガスを減らすことができているのでしょうか。2011年に起きた東日本大震災の後、発電時に二酸化炭素を出さない原子力発電所が停止しました。それをカバーする形で、火力発電所を多く運転したため、温室効果ガスの排出量は増えました。しかし、その後、減らす努力が続けられてきたため、2020年度には温室効果ガスの排出量を震災直後から2割近く減らすことができたのです。

※CCS:Carbon dioxide Capture and Storage(二酸化炭素回収・貯留)の略。

エネルギーミックス=複数の発電方法を効率的に組み合わせて電力を供給

現在、日本の主なエネルギー源となっている石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料は限りある資源であり、使い続けるといつかはなくなってしまいます。また、化石燃料を燃やして発電すると、地球温暖化の原因となる二酸化炭素が排出されます。

これに対し、近年は「再生可能エネルギー」が注目されています。具体的には「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」などのことで、これらを用いた発電が進められています。一度利用しても比較的短い期間に再生することができ、資源がなくなることなく、繰り返し利用できるエネルギーです。二酸化炭素もほとんど排出されないため、地球環境に優しいとされています。

こうした「長所」がある一方、「短所」も抱えています。太陽光発電は、ソーラーパネルで太陽光のエネルギーを吸収して発電するため、晴れの日には多く発電できますが、曇りや雨の日には発電量が大きく減り、夜には発電できません。火力発電など発電量を調整しやすい手段で、全体の発電量を増やしたり減らしたりして、バランスを取る必要があります。

風力発電は風向きや風速によって発電量が変わるため、発電量が安定しにくいという問題点があります。再生可能エネルギーの特徴と長所・短所をまとめたのが次の表です。

木くずや食品廃棄物などを燃やすのが「バイオマス発電」です。発電するときには二酸化炭素を排出しますが、排出量が、木くずの元になった樹木が光合成で吸収した二酸化炭素の量と同じだと考えて、「カーボンニュートラル」と位置づけられています。

二酸化炭素など温室効果ガスを減らしていくには、再生可能エネルギーによる発電量を増やす必要があります。日本では、2021年に作った「第6次エネルギー基本計画」で、電源構成(発電方法の組み合わせ)に占める再生可能エネルギーの割合を2030年度に2019年度実績(18%)のおよそ2倍にあたる36~38%に増やすことにしました。

再生可能エネルギーが発電の割合を増やしていくには、複数の発電方法を効率的に組み合わせて電力を供給する「エネルギーミックス」を進めることが大切です。「第6次エネルギー基本計画」では「再生可能エネルギー」の割合を増やしつつ、「原子力」を20~22%ほど、「天然ガス」「石炭」「石油」を合わせた化石燃料を41%と見込んでいます。

資源に恵まれない日本では、それぞれのエネルギー源の強みが最大限に発揮され、弱みを補うことができるような仕組みを実現することが不可欠なのです。

<親子で考えよう>
電力を安定して供給しながら、脱炭素社会を実現していくには、どのような取り組みが必要でしょうか。

 

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