60秒早わかり解説

やってきたGXのうねり、資源外交はどう変わる?

―GXを見据えた資源外交の指針を策定

経済産業省は、グリーントランスフォメーション(GX)に伴う経済・エネルギー安全保障環境の変化を踏まえ、新たに「GXを見据えた資源外交の指針」を策定しました。この背景と内容を解説します。

資源外交を取り巻く環境の変化

国内の資源が少ない日本は、産業を支えるエネルギーや資源の安定供給のため、これまで石油・天然ガスなどの化石燃料や鉱物の確保に向けた資源外交を実施してきました。

しかし、COP26以降世界的にGXの流れが加速する中で、GXに必要となる水素・アンモニア、CCUS技術やバッテリーメタルなどの重要性が高まっています。特に市場の黎明期にある新燃料は、資源の調達と平行して市場形成を進めていく必要があり、日本の産業競争力確保の観点からも、資源外交の一環としての戦略的なルール形成や標準化が重要となります。

他方、ロシアによるウクライナ侵略以降、エネルギー安全保障の重要性が再確認される中、エネルギー安定供給及び経済安全保障の観点も踏まえた資源外交も求められています。

このように資源外交を取り巻く環境が複雑化する中で、官民の関係者の共通のレファレンスとなり、戦略的・体系的に資源国との関係構築ができるように、今般「GXを見据えた資源外交の指針」を策定しました。

これからの資源外交では、どのような国に注目すればいい?

本指針では、今後重要になる資源として、

ア)石油・石炭・天然ガス・CCS適地などを含む「化石燃料・CCS」、

イ)水素・アンモニア、e-fuel(合成燃料)・e-methane(合成メタン)、バイオ燃料などを含む「新燃料」、

ウ)GXに向けて必須となる銅、リチウム、ニッケル、コバルト、レアアースなどを含む「鉱物」

に着目しました。

これらの資源の適地・産出国となる資源国を把握・分析するため、「潜在的資源量」「経済性」「輸出余力・安定性」「資源エネルギー政策上の戦略的意義」の4つの視座を設定し、日本への資源・燃料の供給ポテンシャルという観点から下図の25カ国を選定しています。

※二酸化炭素回収・貯留に適した土地のこと。なお、地質上の特性により、油田・ガス田の跡地がCCSを行う適地の一つとなる点、脱炭素の潮流を踏まえ化石燃料を高度に利用する点から、化石燃料とCCSをまとめて考えています。

GXを見据えた今後の資源外交の展開

これからの資源外交には、民間企業の積極的な取り組みが大きく期待されています。特に、化石燃料分野においては調達構造の多角化・強靭化やCCS適地の確保、新燃料分野についてはルール形成の先導や早期の設備投資判断を通じたアジア太平洋市場のリード、鉱物分野では中長期の調達戦略策定や中流~川下企業との連携などの具体的な行動が求められています。

政府としても、これらの民間企業の積極的な取り組みを後押しすべく、安定供給確保に対する働きかけや支援策はもちろん、AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)・AETI(アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ)などの政府間の場も活用した脱炭素分野での案件組成やルール形成、値差支援・拠点整備支援などの政府支援策や、バイオ燃料、探鉱ジュニア企業などへのJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)を通じた支援の拡大・拡充の検討を進めていきます。

また、資源・技術横断的な取り組みとして、日本の技術力やサプライチェーン構築の実績を活かし、これまでの資源外交を活かした互恵的な関係づくりや、下流産業との連携・資源循環などの取り組みを加速化していきます。

より詳しい内容についてはこちら(GXを見据えた資源外交の指針)にあります。ぜひこれからの資源外交の展開にご注目ください。

資源エネルギー庁 資源・燃料部政策課

【関連情報】

総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 資源外交指針(METI/経済産業省)
知っておきたい経済の基礎知識~GXって何? | 経済産業省 METI Journal ONLINE
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