【地域未来牽引企業】高級食材から最先端デバイスまで
事業領域を果敢に拡大 協同インターナショナル
協同インターナショナルは半導体や液晶ディスプレイといった最先端デバイスに欠かせない部材や、欧州産の高級生ハムなど、多彩な商材を扱う中堅商社兼メーカー。食品の輸入販売が売上高の60%を占めるが、近年は半導体や光学デバイス、IoTセンサー向けの超微細加工サービスへ事業領域を拡大している。池田謙伸社長は「ひとつひとつの市場はニッチだが、各製品やサービスにおいてトップクラスを目指している」と胸を張る。
時代の変化に対応
高級食材から最先端デバイスまで、事業領域を拡大してきた背景には、商社ならではのネットワーク、機動力がある。
創業は、高度経済成長真っ只中の1970年。父の伸氏が米国留学を機に、世界を股にかける貿易会社を志したことがきっかけだ。創業当初は主に日本の農業機械メーカー向けに欧州の酪農用機材輸入を手がけ、順調に業績を伸ばしていった。一方で、当時の日本は農業の機械化に多くの補助金が投じられた時代。「いつ仕事が減るか分からない中、将来を見据えて事業の多角化に乗り出した」と池田社長は振り返る。
新たな事業の柱に据えたのは食品分野。酪農用機材を取り扱っていた縁で、当時の日本ではまだ珍しかった生ハムを北海道で製造しているという欧州帰りの人物を知る。これを首都圏で売り出したところ、洋食ブームの追い風もあり、事業は大当たり。大手企業が生ハムの取り扱いを本格化した現在でも、イタリア産生ハムの輸入販売実績において同社は国内トップの地位を死守している。
半導体分野に進出
一方、新たな成長の「糧」を模索するなか伸氏が、海外の展示会で偶然出会ったのが高純度の半導体向け薄膜材を製造する企業。材料サンプルを日本に持ち帰り、大手半導体メーカー数社に問い合わせたところ、「すぐにみせてほしい」との反応が相次いだ。これを機に1980年代前半に半導体材料の輸入販売を手がけ始めたのが、今日のエレクトロニクス関連事業の原点だ。
ユニークなのは、商社機能を発揮するにとどまらず、半導体の超微細加工を受託できる点にある。半導体製造の中でもスパッタリング(成膜)とフォトリソグラフィー(露光)の2工程の技術を得意とする。
スパッタリングでは、真空チャンバー内をガスで満たし、シリコンウエハーとターゲットとなる物質を設置。その後物質にプラズマを照射し、放出された分子をウエハー上に堆積(たいせき)させて薄膜に仕上げる。フォトリソグラフィーでは、まずウエハーの一部を感光剤でコーティング。その後プラズマを当てるとコーティング箇所の薄膜が残る。これを繰り返し、半導体の回路を形成する。
これらをさらに応用した技術を備えている点も強みである。MEMS(微小電気機械システム)製造に関する技術をトータルソリューションとして提供しているほか、フィルムやプラスチックなどにナノレベルの超微細加工を施す特殊技術「ナノインプリント」も展開。顧客企業の開発期間の短縮やコスト削減、少量生産対応を通じて、ものづくりを後押ししている。
製品の輸入販売という商社機能だけでなく半導体材料加工というメーカー機能を発揮するに至った背景に、会社の生き残りがかかっていたのは事実だろう。池田社長は「半導体材料の輸入販売を進めていくと、加工もした上で納めてほしいとの要望も出てきた。顧客から加工技術を少しずつ教わり身につけ、信頼を獲得し取引先にとってなくてはならない会社でいることを目指した」と振り返る。それが、業種、業態、国境の壁を越え、オンリーワンの製品を通じ顧客に新たな価値を提供する「提案型企業」を目指すという経営理念を体現している。
成長市場にも布石
今後の有望市場である医療・健康を見据えた事業にも布石を打っている。そのひとつが、ライフサイエンス分野。酸素コントローラーやDNA(デオキシリボ核酸)採取キットといった医療用商材の取り扱いを拡大していく方針だ。
当然、こうした新規事業においても同社ならではの「提案力」を発揮する構えだ。酸素コントローラーを使い、特殊環境で培養した細胞を医療研究者に提供することなどを想定。顧客の要望に合った状態の細胞を届けるため、流通面などまでトータルで請け負うビジネス展開を視野に入れている。
池田社長は「各事業の売上比率をより均等に近づけ、経営安定化を図ることが当面の目標」と語る。社会の変化、顧客ニーズの変化を敏感に捉え、オンリーワン企業としての経営手法にさらに磨きをかける構えだ。
【企業情報】
▽所在地=神奈川県川崎市宮前区宮崎2-10-9▽社長=池田謙伸氏▽創業=1970年▽売上高=約52億円(2018年3月期)