政策特集2023年日本開催G7 3つの経済テーマで先読み vol.1

7年ぶりG7日本開催 経産省はどう取り組む

日本で6回目となった2016年のG7伊勢志摩サミット。中央は当時の安倍首相(首相官邸ホームページより)

日本で6回目となった2016年のG7伊勢志摩サミット。中央は当時の安倍首相(首相官邸ホームページより)

2023年は、日本がG7の議長を務める日本での7回目となるG7サミットが5月に広島県で開催されるとともに、経済産業省が共催する貿易大臣会合、デジタル・技術大臣会合、気候・エネルギー・環境大臣会合を含めた14のG7関係閣僚会議も行われる。本連載の第1回となる本稿では、G7サミットとは何か、これまでどのような議論が展開されてきたかを探る。

「石油危機のカゲが色濃く投影し、文字通りエネルギー・サミットだったことを示している」。最近のG7を評しているように見えるが、実は東京サミット閉幕を報じる1979年6月30日付全国紙朝刊の一節だ。

日本で初めての開催だった東京サミットの主要テーマは原油高騰の抑制だった。時代が巡って40年以上を経た今も、ロシアのウクライナ侵略による資源高が大きな国際課題となっている。

サミットは英語で「山頂」の意味がある。当時は先進7か国首脳会議と呼ばれており、世界の主要国首脳が一堂に会して課題を議論する場を、国際社会における頂に例えた。もともとは世界的な石油危機と、米ドルと金の交換停止(ニクソン・ショック)を機とした経済の動揺を収束させるため、1975年にフランスのランブイエで初めて開催された。

最初の構成国はフランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリアで、翌1976年からカナダが加わり、G7となった。1977年には欧州共同体(EC、現在は欧州連合=EU)も参加した。公式な定義はないものの、Gは一般的に「グループ」の頭文字で、当初はエネルギー問題や国際貿易、通貨の安定といった世界経済に関するテーマが中心だった。その後は世界情勢が変化する過程で、政治外交問題、国際保健や気候変動といったグローバルな課題など、様々なテーマが議論される場に発展していった。1990年代に入ってからは、途上国や新興国が「拡大(アウトリーチ)会合」で議論に加わることもある。気候変動などの世界的な課題解決には、途上国と連携することがより効果的であるからだ。

G20とG7 何が違う?

G7 G20 構成 

多くの読者はG20やG7に関するニュースを見聞きしたことがあるだろう。これらはどう違うのか。また、これらが「サミット」や「財務大臣・中央銀行総裁会議」、「エネルギー大臣会合」など、様々な形態で開催されているということについて、改めて振り返りたい。

20世紀終盤のアジア通貨危機で国際金融が混乱した際、新興国を含めた議論が必要との認識が広まった。こうして1999年に誕生したのが韓国や中国、ロシア、ブラジルなどを含めたG20で、当初は、財務大臣・中央銀行総裁会議としてスタートした。2008年のリーマン・ショックが世界の経済・金融に深刻な危機をもたらすと、G20でもサミットが開催されるようになった。

G7、G20ともに議論されるテーマが多岐にわたっている。各分野で閣僚級会議が開かれ、サミットではカバーしきれない、より専門的で細かな議論を展開し、G7、G20の議論を充実させている。
G20は、「国際経済協調のプレミア・フォーラム」と位置付けられ、メンバー国のGDPが世界の8割を占めることからも、経済分野で大きな影響力を持っている。一方、G7は、「自由」や「民主主義」、「人権」、「法の支配」といった共通の価値観に基づいて複雑化する国際情勢の対応策を追求する点で、存在意義を増している。

2022年はロシアによるウクライナ侵略に対応するため、例年より多くのG7首脳会議が開催された。写真は3月のブリュッセルでの会合(岸田首相は左から3人目、首相官邸ホームページから)

2022年はロシアによるウクライナ侵略に対応するため、例年より多くのG7首脳会議が開催された。写真は3月のブリュッセルでの会合(岸田首相は左から3人目、首相官邸ホームページから)

日本でのG7 アジア開催ならではの特色も

G7サミットは各国持ち回りで開催している。このうち日本では1979年から1993年までの3回が東京、2000年が九州・沖縄、2008年が北海道洞爺湖、2016年が伊勢志摩でそれぞれ開かれた。開催国にとってサミットは、自国の政策をG7のアジェンダ(議題)と紐づけ、G7各国に協調を促す絶好の機会となる。

また、日本はG7で唯一、アジアの国であり、他のG7メンバー国に対してアジア情勢やインド太平洋情勢について共有を促すことができる重要な役割を担ってきた。2016年の伊勢志摩サミットのアウトリーチ会合では、アジア等の国を招き、「アジアの安定と繁栄」をテーマに、「質の高いインフラ投資」や「開かれ、安定した海洋」について議論を行った。

気候変動・エネルギー、貿易、デジタル 経産省の担う3つの課題

G7サミットの目的は当初、先進国が石油危機対策に歩調を合わせるという側面が強かった。石油危機への対応は、G7各国にとって喫緊の課題であり、日本では、第一次石油危機に対応するため、経済産業省(当時は通商産業省)のもとに、1973年に資源エネルギー庁が設置されたという経緯がある。経済産業省・資源エネルギー庁は当初より、G7のサミットや閣僚会合でエネルギー政策の観点から深く関わってきた。

サミットでは貿易も重要なテーマだ。経済産業省はこれまでも、世界貿易機関(WTO)や二国間・地域間での枠組みなど、G7に限らない様々な場で議論、交渉を行ってきた。従来の自由貿易の推進に加えて、気候変動や人権、デジタル化への対応など、貿易を巡る新たな課題も出てきており、G7で議論する意義は高まっている。

近年はIT技術の発展に伴い、デジタル政策も新たなG7サミットの課題として俎上そじょうに載るようになった。日々刻々と世界を巡る膨大なデータについて、プライバシーやセキュリティー、知的財産を守りながら、消費者や企業が安心できる形で自由な流通を確保する国際的な環境作りが模索されている。

ロシアのウクライナ侵略で改めて認識されたエネルギー安全保障の重要性、持続可能なサプライチェーンの実現、さらに加速するデジタル化への対応。このような課題に対して、どのようにG7で連携していけるか、世界が注目している。次回以降は、経産省が取り組む具体的な課題や論点について掘り下げていく。