世界に羽ばたく日本の航空機部品産業
高度な加工技術、活躍機会広がる
国産のジェット旅客機もテスト飛行を繰り返し、間もなく登場するのではないかと言われており、日本の航空機産業が転機を迎えていると最近耳にすることが多いのではないだろうか。
また、日本の高い技術力は、航空機体内部の設備や素材、部品にも活躍領域を広げており、日本の航空機用部品産業はその存在感を増しているように思う。
拡大する関連部品生産
そこで、航空機用機体部品(機体を構成する主翼、尾翼、胴体等の部品・付属品、プロペラ・回転翼やその部品、付属品など)と航空機用発動部品(ピストン、シリンダ、クランク軸、排気ノズルなど)のここ10年の生産指数の動きを見てみよう。
すると、機体部品の生産は、2015年で1度頭打ちとなった感はあるが、それでも、この前半5年の生産水準と比べると、かなり高い水準を維持している。発動部品の生産も、右肩上がりで飛躍を続けている状況にある。
両分野の生産とも、指数値200という水準だ。これは、2010年の生産レベルの2倍の生産レベルとなっていることを意味する。鉱工業全体の指数値が102.0とかろうじて、2010年水準を上回っているという状態であることと比較して、いかに航空機用部品産業の生産に勢いがあるか、お分かりいただけるかと思う。
下町ロケットの世界がここに
この伸びの著しい航空機用部品の生産を、そこに組み込まれるキーパーツの生産で支える高度な加工ビジネスの動きを見てみよう。ここでいう(賃)加工とは、他社から航空機用部品に使用される素材の提供を受けて、航空機への使用に耐えられるほどの高精度で加工の難しいキーパーツを作成する工程を請け負うビジネスのこと。まさに、「下町ロケット」の世界ということになる。
航空機用部品関連の高度加工ビジネスの動きについては、工業統計(あるいは経済センサス-活動)調査の「加工賃収入額」というデータで、その推移を確認することができる。
まず、航空機用機体部品の製造を支えている「その他の航空機部分品・補助装置」の加工賃収入については、2010年に600億円規模だったが、2012年以降大きく増加し、2015年からは、900億円を超える規模にまで上昇している。ちなみに、工場の数としては、319事業所ある。
また、航空機用発動部品の製造を支えている「航空機用エンジン・同部分品・取付具・附属品」の加工賃収入では、2010年に100億円ほどの規模だったものが、一方的に右肩上がりということではないが、振り返ってみれば、大きく収入規模を拡大させている。その2016年の収入額は200億円を超え、2倍を超える増加を見せている。ちなみに、工場の数としては、76事業所ある。
先ほど、航空機用部品の生産指数が、2010年との比較で倍増していることを紹介したが、やはり高度加工のビジネスも同じような推移をたどっていると言えるだろう。
航空機用部品にキーパーツを提供する高度加工は、まさに日本のお家芸といえる分野であり、製造業の「高み」を支える広い裾野、文字通りのサポーティングインダストリーである。我が国の航空機産業の発展に、賃加工という方法で貢献する賃加工業者のパワーを統計的にも確認することができるのだ。
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「下町ロケット」の世界は、本当にここにある;日本の航空機ビジネスを支える高度加工ビジネスは1000億円を超える収入を上げている。