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SDGs達成に向け、逆風の中でも新しい価値を生み出していく東南アジアの社会起業家を支援

ソーシャルマッチ代表取締役 原畑実央さん

 国連が掲げるSDGsの目標年となる2030年まで残り8年。そのゴール達成に向け、国内外で様々な取り組みが実施され、そのスピードは従来より遥かに加速化している。そうした中、同じようにSDGsの実現に向けて強い意欲を持つ国内と東南アジアの企業・NGOとのマッチングを行い、現地の社会問題解決に貢献しているのが、今回ご紹介するソーシャルマッチ(東京都墨田区)だ。創業者で代表取締役の原畑実央さんに、事業の内容や今後の展開について、お聞きした。

マッチングに加え、人材育成、現地調査が事業の三つの柱

 ―――ソーシャルマッチの事業内容について、ご説明ください。

 主に三つの事業に取り組んでいて、そのいずれもが発展途上国の社会問題解決に貢献するという点で繋がっています。

 一つ目は、メインの事業となるソーシャルマッチで、社会問題解決のための具体的なアクションとして、日本と東南アジア、それぞれの企業のマッチングを行っています。SDGsに貢献したい、海外事業展開を行いたいと希望する日本企業に、東南アジアの各国で社会問題解決に取り組む企業、NGOを紹介するのに止まらず、企画・アイデアの提案やプロジェクトの牽引といった伴走支援も行っています。

 二つ目は、社会問題解決に貢献できる人材の育成を目的としたソーシャルスタディです。東南アジアの社会起業家の方に課題を出してもらい、学生にその解決策を考えてもらうSDGsインターンシップを独自に、もしくは大学からの依頼を受けて実施しています。

 三つ目は、社会問題の可視化を目的としたソーシャルリサーチです。東南アジアの社会問題に取り組むにあたり、日本語どころか英語での文献さえ、多くはありません。問題点をクリアにできるよう、大学の先生からの依頼を受け、現地で調査し、情報を提供しています。

ソーシャルマッチの三つの事業の内容について説明する原畑さん

バックパック旅行で東南アジアの魅力を感じる一方で貧困を目の当たりに

 ―――事業を始めるにあたって、どのような経緯があったのでしょうか。

 私自身、学生時代に東南アジアをバックパックで旅行し、これから発展していく国々の活気とか、昔ながらの人と人との繋がり、温かみに魅力を感じ、一度、日本で就職したものの、そうした国々への思いが断ちきれず、1年半で辞めて、2016年10月にカンボジアの首都プノンペンに移り住みました。

 実際に住んでみると、よいところだけでなく、小さな子どもが物乞いをしていたり、夜、母親と一緒にごみ集めの仕事をしていて学校に行けない子どもがいたり、貧困の現場を目の当たりにし、やるせない気持ちになりました。一方で、長く住み続けている間に、カンボジアでも社会問題の解決に向けて活動している人が数多くいることを知りました。

 まず自分のできることとして、現地で人材紹介会社に勤めながら、ライフワークとして、そうした社会起業家の方を紹介する記事を執筆してネット上で発信し始めたのです。媒体の名前は、表計算ソフトのエクセルでエラーを意味する「#value!(バリュー)」で、そんなことは、あなたたちにはできないと否定されながら、逆風の中でも新しい価値を生み出していくカンボジアの社会起業家を応援したいという思いを込め、そうネーミングしました。

 さらに、社会起業家の方を招いてのイベントを開くようになり、そうした方との付き合いの輪が広がり、「日本の企業を紹介してくれないか」という相談を頻繁に受けるようになりました。日本と東南アジアの企業と人を繋ぐことによって、自分も価値を生み出すことができるのではないかと思ったのが、起業のきっかけです。

107の企業・NGOと連携、社会問題解決にインパクトを起こす

 ―――発展途上国における社会問題の解決に、どのような形で貢献できたか、具体例をご紹介ください。

 農業従事者の減少により、日本で不要になった農機具、具体的には田植え機をカンボジアに輸出するお手伝いをしています。その日本の企業は、SDGsの観点から、農機具のリサイクルを行っているものの、国内での循環に限界を感じ、海外での販売を検討されていました。一方で、私たちとお付き合いのあるカンボジアの社会起業家に、現地の農家の生産性向上に取り組んでいる方がいて、両者をマッチングしました。カンボジアの方にとっては、田植え機を使うのは初めてのことだったので、導入にあたっての販売パートナーのご紹介をさせていただきました。

 また、カンボジアの学校で無償のIT教育を行ったり、雇用創出に取り組んだりしている社会起業家と日本企業とのマッチングも行っています。カンボジアでは、スキルがない方が国内で仕事を探すのがむずかしく、タイなどに出稼ぎに行く例が少なくありません。家族と離れ離れになるし、帰国してもスキルがないので、容易に仕事がみつかりません。ITスキルを提供することで、そうした問題の解決を目指していて、日本企業とのマッチングで雇用が創出できたと、喜んでもらえています。

日本からカンボジアに輸出された田植え機。

 ―――事業を展開するにあたって、苦心・苦労している点は?

 現在、カンボジア、ミャンマー、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピンの6か国で、107の企業・NGOと連携し、日本企業とのマッチングを行っていますが、同じ東南アジアといいながら、国よって商習慣が違うので、その対応に苦心しています。特に、時間とか納期に対する感覚が、どうしても日本と異なる場合があるので、そこでぎくしゃくすることのないように、私たちが間に入って、コミュニケーションをサポートさせていただいています。

いち早く社会問題が解決できる世界的なプラットフォームを目指す

 ―――どのような時にやりがいを感じますか?

 私たちのマッチングによって、実際に障がい者雇用の存続ができたとか、農業の生産性に繋がる可能性があるとか、現地の社会問題の解決にインパクトが起きているよと現地の方から言ってもらえる時ですね。あと、私たちが間に入ることによって、日本と東南アジアの企業同士の協働が、うまく実現できた時も、とてもやりがいを感じます。最初、自分たちで進めますと言っていた日本企業が、うまく協働が進まなかった際、私たちがサポートを提案し、それが実現した結果、「こんなにスムーズに話が進むとは思わなかった。負担も少なくて助かった」と言ってもらえた時は、うれしかったです。

―――ソーシャルマッチの活動とSDGsとの関わりについては、どのように感じていますか?

 私たち自身、最初は、SDGsのことはそう意識していなかったんですよ。活動をしているうちに、周りの人から、「それって、SDGsだよね」と言われて、「あぁ、そうなんだ」って。そこで改めてSDGsの各項目に目を通した時に、世界の共通言語として、その素晴らしさを実感すると同時に、特に17番目の「パートナーシップで目標を達成しよう」は、私たちの目標そのもので、とても共感しました。以来、私たちの活動のシンボル的な標語として、広く紹介させてもらっています。

カンボジアの社会起業家との提携に向けてプレゼンする原畑さん。

 ―――今後の夢、目標についてお聞かせください。

 コロナウイルスによる感染症拡大と起業の時期が重なったことから、なかなか対面でのマッチングができず、思ったより事業を展開できなかったというのがいまの正直な思いです。ただ、これから秋、冬にかけて、移動の自由も効くようになると思いますので、海外の様々な社会起業家と日本のみなさまを直接お繋ぎし、三つの事業の展開を加速させていきたいと思っています。

 社会問題は解決しても、また新しい問題が起き、容易になくすことができないかもしれません。ただ、問題が起きた時に、ソーシャルマッチのプラットフォームがあるから、いち早く解決できる、という仕組みを作っていきたいです。そのためには、まず東南アジアで実績を残し、全世界にその活動を広げていくことが大事です。社会問題解決に必要なあらゆるリソースを繋いでいきたい。その上で、最終的に、社会問題のない世界を作っていきたいと思っています。

 ―――ありがとうございました。

<プロフィル>
原畑 実央 はらはた・みお 1992年、愛媛県松山市生まれ。松山大学在学中に社会問題をディスカッションする団体を立ち上げ、社会問題を解決しようとする人の講演会や、活動の現場に訪れるツアーを開催する。大学卒業後、アリババジャパン入社。1年半の勤務後、退社し、2016年10月にカンボジアに移住し、日系人材紹介会社で3年間マネジャーを務める。2019年12月、ソーシャルマッチ株式会社を創業。