政策特集集う、創る、叶える、ふくしまで~福島イノベーション・コースト構想 vol.5

地域一帯となった教育基盤の構築

プログラミング学習用ロボット「あるくメカトロウィーゴ」
© MODERHYTHM / Kazushi Kobayashi

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で被災した福島県浜通り地域に新産業を創出、集積させるプロジェクト「福島イノベーション・コースト構想(イノベ構想)」。その実現のために、将来の産業発展に貢献できる若手人材の育成は欠かせない。先端技術の体験、企業・最新研究施設での視察、実習などの教育プログラムが展開されている。

「ロボットは難しくない」

 「あっ、動いた」。1台の手のひらサイズのロボットがお辞儀をすると子供たちの目の色が変わる。視線を集めるのは、プログラミング学習用ロボット「あるくメカトロウィーゴ」だ。

 イノベ構想でも重点分野のひとつであるロボット。将来のロボット関連産業の育成を目的に、ロボットプログラミング体験なども開催されている。ロボットの一大開発実証拠点「福島ロボットテストフィールド(ロボテス)」でも小中学生を対象にした体験会が開かれているが、その中でもひときわ目を引くのが「あるくメカトロウィーゴ」だ。

 メカトロウィーゴは造形家の小林和史氏が生み出した人気ロボットキャラクターでベンチャー企業のリビングロボットが開発した。特徴はその大きさで高さ15センチメートル、重さ230グラム。リビングロボットの川内康裕社長は「小さい方が愛着が湧くし、どこにでも連れて行ける。一緒に出かけることができれば、思い出も共有できる」と開発の意図を語る。手のひらサイズながらも人間のように二足歩行で移動し、センサーで障害物を感知する。立ち上がったり、座ったり、踊ったり複雑な動作もできる。外観は丸みのあるデザインで愛らしい。ロボット内部にはスマートフォンに使う部品を多く使っている。

メカトロウィーゴはパソコンやタブレットで操作できる
© MODERHYTHM / Kazushi Kobayashi


 「ロボットを操作する」と聞くとハードルが高そうに思えるかもしれないが、パソコンやタブレットで操作できる。プログラミングには子供でも比較的操作が簡単な既存の学習用ソフト「スクラッチ」を使用。画面に表示されるスライドを見ながら、プログラミングを学びロボットを動かす。

 「ロボットを動かすイメージはなかなか湧かない人がほとんどだけに、『こんなにすんなり動くんだ』と驚く生徒が多い」(川内社長)。

 リビングロボットは2020年度から伊達市内の小中学校でロボットを使った授業を開始。ロボテスでは社会科見学で訪れる小中学生を対象に授業を提供。2021年度は1回50分の授業を計22回実施した。「説明を聞いているときは、つまらなさそうにしていた生徒が、ロボットが実際に動くといつのまにか夢中になっている。子供たち同士で教え合うなど自主的に学ぶ姿は予想外だった」とロボットの魅力を語る。

 ロボテスは滑走路や水槽を備え、ドローンやロボットの開発に取り組む企業が実験を繰り返す。「当社が手がけるのはプログラミング学習ロボットでロボテスでは『ロボットの王道』ではないかもしれない。ただ、私たちにしかできないこともある。授業を通じて、子供たちが『ロボットって意外に簡単に操作できるから、自分もつくってみようかな』と少しでも興味をもってもらえれば。子供たちとロボット、子供たちとロボテスの橋渡し役になっていきたい」と意欲を示す。

「ロボット=浜通り地域」を目指して

 川内社長は「ロボットと人がともに生きる社会」の実現を目指す。「人生100年時代の今、赤ちゃんからお年寄りまで人に人が寄り添うのが最も良い姿だが、(人口動態からしても)今後は難しい。それならば、ロボットが人と同じように寄り添ってサポートできればいいのでは」と語る。

リビングロボット 川内康裕社長


 教育用ロボットだけでなく、においを感知するセンサーを使った高齢者の健康管理システムや5Gに対応した道案内ロボットなどの開発にも取り組んでいる。

 「20年くらい前は教室でロボットに触れ合いながら勉強する姿は想像できなかったが現実のものになっている。私たちが幅広い年代を支えるロボットをロボテスから世に送り出すことで、『東京や大都市に行かずに、浜通り地域にいながらでもロボットをつくれる』と子供たちに思ってもらえれば福島の活性化にもつながる」と期待を込める。

 子供が笑顔になり、世の中の役に立つ。リビングロボットのロボットを通じた教育は福島の子供の、そして浜通り地域の可能性を大きく広げようとしている。
 
 2月の政策特集では「集う、創る、叶える、ふくしまで」※として、イノベ構想の取組等を5回にわたり取り上げた。
※「集う、創る、叶える、ふくしまで」は、イノベ構想の中核的な機関である「福島イノベーション・コースト構想推進機構」のキャッチコピーです。

 浜通り地域には中核拠点となるロボテスなど先進的な研究施設が続々と完成するなど着実に具現化している。再生可能エネルギーや医療関連分野などの各産業分野でも企業誘致が進む。切れ目のない支援策で自治体や企業の連携も生まれている。震災と原発事故からの復興に向け、新しい産業の種がまかれた今、創造的復興の芽をどう育てるか。新しい局面に入る。
 
 
※本特集はこれで終わりです。3月からは「サーキュラー・エコノミー移行への第一歩」を特集します。