METI解体新書

日本の活性化は地域企業から!

【地域企業高度化推進課】
 経済産業省という複雑な組織を「解体」して、個々の部署が実施している具体的な政策について、現場の中堅・若手職員が分かりやすく説明する「METI解体新書」。

 第7回は地域経済産業グループ 地域企業高度化推進課の小松 篤史課長補佐です。
 

地域に良質な雇用を生み出す産業を根付かせる

 日本各地の地域にとって、人口減少は大きな課題です。
 例えば、地方では、進学や就職のタイミングで上京する若者が多い状況にあります。このような社会的な減少と自然な人口の減少が同時に進む結果として、2050年頃には、人口が現在の半分になってしまう市町村も出てくるといった試算もあります。
 地域の市場がどんどん縮小する中で、特に対人サービス関係の産業が地域に根付きにくくなることが懸念されています。良質な産業・雇用が地域になければ、地域住民の働き口を確保することができず、人口流出に一層の拍車が掛かってしまいます。このような「負のスパイラル」を、いま、食い止める必要があります。

 それぞれの地域に良質な雇用を生み出す産業を根付かせることが、地域経済産業グループの重要なミッションと考えています。各地域で、自立分散型の戦略を作り、地域社会を回していくようなシステムを作っていく必要があります。
 経済産業省には、各地域に、最前線で企業や自治体などと接している「地方経済産業局」があります。この地方経済産業局と連携しながら、様々な地域経済産業政策を進めていますが、今日は、DX(デジタルトランスフォーメーション)と地域未来投資促進法を紹介します。

地域DX推進コミュニティ始動!

 DXとは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することを指します。
 企業のDXの取組状況を見てみると、都市部(東京)と地方で差があるのが現実です。地方では、DX実現に向けたノウハウや人材の面に課題があり、上手く取組が進んでいない状況にあります。
 そこで、令和4年度から、地域DX促進活動支援事業として、全国各地に「地域DX推進コミュニティ」を始動させ、地域企業のDX実現に向けた支援を加速させます。

 このコミュニティには、地域企業の経営・デジタルに関する専門的知見・ノウハウを補完するため、自治体・金融機関・大学・ITベンダー・商工会・商工会議所など、産学官金の様々な主体に参加してもらうことを想定しています。コミュニティでは、地域企業に寄り添って、DX実現に向けた課題分析・戦略策定やITベンダー等とのマッチングを支援するなど、様々な支援を行います。このような取組を通じて地域企業のDXを強力に推進することで、地域企業の生産性を高めていくことが重要と考えています。

地域の特性を活かした新事業を応援

 地域の特性を活かした新しい事業にチャレンジする企業を応援する政策が、「地域未来投資促進法」です。2017年7月の施行から、今年で5年を迎えます。
 この法律では、まず、都道府県と市区町村に基本計画を作っていただき、各地域の特性などを定めていただきます。それに基づいて、企業が都道府県に事業計画を申請し、要件を満たして都道府県の承認を受けると、税制や規制の特例などの支援が受けられます。
 例えば、私の出身地である長野県では、昔から取り組んできた精密機械製造の強みを活かした事業や、自然環境を活かしたスノースポーツ関係の観光事業などが承認されていますね。

 施行から4年半で、約3,000の事業計画が承認されています。現在、これまでの状況の総点検を始めたところですが、企業や自治体などの関係者の皆様の声に耳を傾けながら、成果や課題を虚心坦懐に整理していくことが重要と考えています。
 また、私の課には、自治体や地方経済産業局、民間企業からの出向者が多く、課員のおよそ半分が出向者です。日本全国、北から南までの各地から出向で来ていただいていますが、出向者の多くは、これまでにフロントで地域企業と接するような仕事をしてきており、また多様なバックグラウンドを持っています。こうした出向者の方にも、政策立案・執行に積極的に関わってもらっており、ワンチームで政策立案・執行を進めています。

原点は長野

 私は長野県長野市出身です。もちろん政策立案を進めるときには、日本全体を考えるわけですが、長野県をイメージしながら政策の具体化を考えることも多くあります。
 長野県でも人口減少が進んでおり、人口の高齢化や繁華街のシャッター通り化など、何とかしなければならない課題が多くあります。10代の時期にこうした状況を間近で見てきたことが、今の仕事の原点になっていると思います。

 コロナ禍の前は旅行が趣味で、特に全国各地の温泉に行くのが好きでした。その時に、観光地だけでなく住宅街を散歩するのも好きです。それぞれの街を歩いていても、暮らしと産業は、やはり密接にくっついていると感じますね。自分で行ってみて感じることもあるので、コロナ禍でなければ出張でもプライベートでももっと色々な所に行きたいです。

 
 
【関連情報】

地域未来投資促進法について