METI解体新書

統計の「中の人」

【経済解析室】に聞く、「統計とは何ぞや?」
 毎月月末に経済産業省から発表される鉱工業生産・出荷・在庫指数速報を参照している方、多いと思います。他にも第3次産業活動指数や商業動態統計など、統計は様々な場面で活用され、METI Journalオンラインの「統計は語る」コーナーも人気ですが、どんな人が従事しているのでしょうか?

 経済産業省という複雑な組織を「解体」して、個々の部署が実施している具体的な政策について、現場の中堅・若手職員が分かりやすく説明する「METI解体新書」。第6回は調査統計グループ 経済解析室の大南(おおみなみ)友理香係長、堀越堅太係長、松本麻衣係長(当時)の3人に話を聞きました。

大事なのは「指数」

 -そもそも「統計」とは何か、簡単に教えてください。

(堀越)実は色々あって、総務省が統計法で格付けています。大きく2つに分けると重要な統計を基幹統計、それ以外を一般統計と言います。その中でも、サービス業や製造業を中心に統計をとっているのが経産省の調査統計グループ(以下、調統G)です。
 調統Gの大半の部署は、調査票を配りデータをとりまとめる「一次統計」を作成していますが、経済解析室では「二次統計」と言って、一次統計を加工した「指数」を作成したり、統計を元に分析しています。

(松本)一次統計では金額、数量など色々なデータがありますが、異なるデータを比較できるようにするのが「指数」です。例えば、製造業全体で生産が増えた際にどの産業が大きく影響したのかを見ようとすると、金額だと物価の変動が入ってわかりづらいため数量を比較しますが、鉄と自動車では数量の単位が違います。それを比較できるようにしたのが「指数」です。

堀越 堅太係長

(堀越)私は鉄や自動車、食料加工品などの製造業を中心とした鉱工業指数を担当しています。

(大南)私はサービス業の指数を担当しています。
 情報通信業、運輸業,郵便業や不動産業、ゴルフ、競輪競馬、映画館、フィットネスなど多くの身の回りのサービス業が含まれる生活娯楽関連サービス等11業種あります。コロナ禍で影響を受けたサービス業が総合的に見られるようになっています。

使われてなんぼ

 -不動産と言えば、埼玉の記事がとても人気でしたね。Yahoo!ニュースと合わせて約82万回も読まれました。

(大南)ちょうど「翔んで埼玉」が地上波初放送されるということで、タイミングを揃えました。
 サービス業の指数は、緊急事態宣言の影響がどのくらい出ているかとか、コロナで大変なところ、逆に伸びているところを見ることができるんです。もしかしたらここがビジネスチャンスなのでは、ということを読み取ることができるのが、サービス業の指数の強みです。統計は使ってもらわないと意味がないので、「知ってほしい」という気持ちが強いですね。

(松本)そうですね。分析記事を作るときは、イメージしやすいものをピックアップするようにしています。自分も興味が持てるものでないと分析しにくいですし、読者と同じ目線で分かりやすいものを作り、読んだ人に統計を使ってみようかな、と思ってもらえたら嬉しいですね。

(堀越)多くの人に読んでもらうために、アイキャッチ(サムネイル)も工夫してますよね。

(松本)はい。6年前に着任しましたが、丁度情報発信に力を入れ始めた頃で、FacebookやTwitterで積極的に発信していました。投稿するときに、目をひくようにアイキャッチも作り始めましたが、画像編集はど素人なので最初はとても苦労しました。

経済産業省 ひと言解説ページより

統計はおもしろい!

 ―統計は難しいイメージがあります。数字だらけのデータから、コロナの影響など、どのように世の中の流れを読み取るのでしょうか。

(堀越)初めは経済も何もわからない状態で配属されましたが、職員向けの研修があるので、わりとすぐに馴染めました。今は指数を作る担当をしていますが、各企業からどういう理由で数字が上がった、下がった、という話を伺ったりします。最近だと半導体不足で自動車生産が少なくなっていますが、それ以外にも家電などで半導体の影響が出ているんですよね。細かい話を言うと、温水洗浄便座など。

(松本)リーマンショックと比べてどうかということも聞かれますが、指数を使うと比較することができます。この産業、この品目はコロナ禍の方が意外と戻りが早かった、とか。

(大南)グラフで社会的な環境、要因同士を見比べることができますよね。私はグラフを書いて、普段と違う動きをしているものがあれば、その情報を見に行きます。グラフにすると、数字だけではわからないことが可視化されるんです。

(堀越)コロナの影響というと、例えば、コンテナ船の輸送が滞っているというのをよく耳にします。コンテナ船が滞ることによって出荷ができず、出荷ができないから生産もできないといったことがデータとして表れます。そういうのをリアルタイムで影響を伺えることができて、世の中の動き、経済の流れを身近で見られるのは面白いです。

(松本)指数は直近の産業構造の変化や、製品やサービスの動向を把握するために5年に1度「基準改定」という見直しが必要です。その際に品目の見直しも行っているのですが、新たに採用する品目は、今後伸びていくだろうというものを事前に検討しなければいけないので、先見の明が必要です。経産省の手にかかっている部分で、責任がある分とてもやりがいもある仕事だと思います。

(大南)入れたい項目のデータが取れるかという問題もあります。いつもデータ集めに苦労するのですが、データさえあれば、グラフを作って比較することができます。統計に慣れると他の統計も自分で分析できるようになって面白いです。

大南友理香係長(左)、松本麻衣係長(右)

 -皆さん、プロフェッショナルですね。ワークライフバランスはいかがでしょうか?

(堀越)とっても充実してます!笑
 私は鉱工業指数を毎月月末に公表していて、その直前の一週間はハードですが、毎月決まった仕事ができるので、私生活と両立はしやすい仕事だと思います。

(大南)私はお酒が好きで、今はおうち飲みを楽しんでいます(九州出身なので焼酎が好き)。仕事のやりがいもあって、プライベートもきちんと楽しめています。

(松本)調統Gはコロナ前からテレワークが浸透していて、私自身も6年前、2人目の育休から復帰した当時からフレックスと時短を、その後はさらに週3テレワークとフルセットで使っていました。実は長男は医療的ケアの必要な重度障害児ですが、子育てをしながら仕事も辞めずに続けてこられたのは、これらの制度と上司や同僚の理解のおかげです。