METI解体新書

実体験が生きる仕事

【製品安全課製品事故対策室】
 経済産業省という複雑な組織を「解体」して、個々の部署が実施している具体的な政策について、現場の中堅・若手職員が分かりやすく説明する「METI解体新書」。

 第4回は製品安全課・製品事故対策室の関根友里室長補佐です。

安全は「当たり前」ではない

 私たちが日常的に使っている製品で起こる事故や危険を未然に防ぎ、製品の安全を向上させていくための対策を取るのが製品安全課の役割です。私が所属する製品事故対策室は、起きてしまった製品事故の原因究明調査をNITE(製品評価技術基盤機構)と連携して行い、再発防止、未然防止に向けて事業者への指導や広く一般消費者に向けた注意喚起等を行っています。

 日本では、製品側で安全を担保することが当たり前になっています。私自身、この仕事に携わるまでは、一人の消費者の立場として、家電製品はどれもが「安全なもの」と当然のように思っていました。ですが、実際には発火や使用による怪我など、身近な製品による重大事故が1年間に約1千件も発生しています。
 いまやインターネットでなんでもポチっとすぐに買えますが、その製品がどう作られて、どう輸入されて、製品の安全性や法律の遵守はどうかというのはあまり考えられていないように思います。どうしても安い製品を選びたくなりますが、消費者側も安全なものを選んで欲しいし、製品安全について意識の高い事業者が正当に評価される仕組みを作らなければいけない。そんな思いで、製品安全課全体は動いています。

実店舗ではPSEマークを一つの目印に

 では、目に見えない「安全」をどう「選択」するのか。
 例えば、家電の場合は、法律に基づいた安全基準に適合していることを示す「PSEマーク」の有無をチェックするのが方法の一つです。

 実店舗では、PSEマーク対象の製品で表示のないものは販売してはいけないと法律で決まっているので、基本的に全てついています。ですが、インターネットモール事業者には厳密には法的義務がないので、注意が必要です。残念ながら、PSEマークのない製品や表示に不備がある製品もインターネット上では販売されています。
 こうした問題の解決に向けて、製品安全課ではインターネットモール事業者と連絡会合を設け、マーク違反等がないかスクリーニングの協力をしていただいたり、リコール対象製品について情報を共有し、販売されないよう協力してもらうなど、インターネットモール上においても安全な製品の取引が行われるよう事業者とともに対策を講じています。

事故が多い自転車、エアコン

 意外と知られていないのが自転車の事故です。物を多く積んだり、傘をひっかけて転倒につながるなど、交通事故とは別に、自転車そのものや乗り方・使い方で危ない事故が起きています。身近で便利なものですが、車と違って車検がないので、使う人の「意識」が大きく関わると思います。乗車前には、必ず簡単に車体の点検をして欲しいです。

 また、家電製品の事故件数トップは実はエアコンです。
 様々な原因でエアコン火災が起きていますが、ベランダで吸ったたばこの小さな火を室外機が吸い込んで発火するといった、何気ない行動が事故につながる可能性があります。そしてエアコンは長く使う人が多いのですが、家電には寿命があります。壊れるまで使おうと思うかもしれませんが、経年劣化による思わぬ事故は多いので、気をつけて欲しいですね。
 エアコンに限らず、使用頻度が低いもの、実際に問題なく使えているものでも、「設計標準使用期間」を超えているような古いものは、買い替えを意識していただきたいです。

メーカーが想定していない事故も

 最近、炊飯器レシピが流行っていると聞きますが、実は注意が必要です。
 炊飯器は本来、お米を炊くことを専門に圧力をかけているものですし、メーカーによっても作りが違うので、SNSで紹介されているレシピを試す前に、その使い方が自分の炊飯器でも問題ないのか、取扱説明書(あまり見ないと思いますが…)をよく確認して欲しいです。炊飯器を例にあげましたが、あらゆる製品について、しっかり取扱説明書を確認し、間違えた使い方を絶対しないようにしたいですね。

 この仕事をしていると、子どもが巻き込まれる事故の話もよく聞きます。子ども向けの製品は安全面に配慮されているものが多いですが、実は子どもが使うことを想定していない製品での子どもの事故は、少なくありません。
 わが家にも小さな子どもが2人いて、ふとしたときに子どもが挟まれたり落下する事故は身近にとてもあるんだなと実感します。先日も、コロナ禍でテレワークが増えたのでオフィスチェアを導入したところ、くるくる回るので面白いのか、子どもが遊ぶんですよね。その際、とてもヒヤリとしたのは、肘掛けの間にすっぽりと身体が挟まってしまったんです。もともと製品規格としては子どもの首や体がはまることが想定されていないため、使用側でよく注意しないといけない事例だと、まさに実体験しました。

 今は夫が海外にいてワンオペ育児で大変ですが、こうした日常のヒヤリハットが製品事故の防止につながりうるものもある。自分で経験しながら業務の中でも生かしていくことが、経済産業省の他の部署とは違う独自のやりがいがあるとも思っています。
 そんなことを考えていたり、子どもも小さいし目が離せないので、家でもなかなか気が抜けないですが(笑)、子どもが寝た後にストリーミング配信サービスで好きなドラマを見て、リフレッシュしています。

 安全は、決して無料ではありません。

 安全な製品は、その安全の分だけ価格が高くなりますが、高くても安全に配慮された製品を買うこと、製品の“寿命”を意識しながら正しく使うことが、ご自身やご家族を守ることにもなります。
 

【関連情報】

製品安全ガイド

60秒早わかり解説「点検で防ぐ、自転車の製品事故」