政策特集エネルギー vol.7

存在感増す再生可能エネルギー

導入拡大への期待と課題


再生可能エネルギーの存在感が増している。太陽光だけでなく風力、地熱、水力、バイオマスなど、自然現象を利用する多種多様なエネルギーが登場。特に太陽光発電は住宅向けに加え、大規模なメガソーラーなどが急速に拡大。輸入に頼らない国産エネルギーとしても期待が膨らむ。ただし、さらなる導入の加速には低コスト化や高効率化、系統制約の解消といった課題も残っている。

石油危機がきっかけ

再エネとは、化石燃料を使わず永続的に利用できるエネルギー源のことだ。昔からある大規模水力発電を除くと、代表的なのは太陽光発電や風力発電など。技術開発が本格化したのは、石油危機がきっかけだ。1974年に通商産業省工業技術院(現国立研究開発法人産業技術総合研究所)が開始した「サンシャイン計画」。ここでは太陽光、地熱、石炭エネルギーといった石油代替エネルギー技術の研究開発が進められた。

再エネの導入が加速し始めたのは、2002年にスタートした「再生可能エネルギー導入量割当制度(RPS制度)」で電力会社へ一定割合の再エネ導入を義務づけてからだ。2009年には太陽光発電で余った電力を買い取る「余剰電力買取制度」が導入され、その後を継ぐ形で2012年には「固定価格買取制度(FIT)」が導入され、急速に導入が拡大した。

再エネ比率は15.3%

わが国の発電電力量に占める再エネの比率は、従来の大規模水力を含めて15.3%(2016年)を占める。ドイツの30.6%、カナダの63.8%、イタリアの39.8%などと比べると決して高い数字ではない。しかし、2012年7月のFITスタート以来、新たに運転を開始した設備は2017年3月時点で約3539万キロワット。FIT前の累計値と比較して約1.7倍にも達している。

主要国の再生可能エネルギーの発電比率(日本は2016年度速報値)

特に伸びが際だつのが太陽光発電で、FIT後の再エネ導入量のうち約95%を占めている。2016年までの累計(2006年から)では4275万キロワット分の発電設備が新設されており、これは中国に次いで2位という規模。太陽電池を屋根に載せた一般住宅だけでなく、広い敷地に太陽電池を敷き詰めたメガソーラーと呼ばれる大規模太陽光発電所なども、もはや珍しくはなくなった。

もちろん現状の再エネ導入量ではまだまだ不十分であることも確か。太陽光に導入が偏っているのも課題だ。本来であれば、さまざまな自然現象を全国のさまざまな地域で活用できる多様性こそが再エネのメリット。これを生かさない手はない。リードタイムが長くなる地熱や洋上風力などの導入を促進することも重要だろう。天候の影響や、発電規模の小ささ、地域の偏在といったデメリットも、多様な方式が組み合わせることで軽減できる。さらに、再エネに強い系統の整備や、蓄電池による自家消費の促進、再エネ発電のピーク時に需要を誘導する料金システムなどが加われば、災害などにも耐えられる、より強靱なエネルギー基盤の確立にもつながる。

課題は国民負担の増加

足元では国民負担増加への懸念が依然として課題に残る。FITで再エネ由来の電力を買い取る費用は2017年度で約2兆7000億円に達したが、2030年度になると3兆7000億円から4兆円に増加する見通しだ。これらの買取費用の一部は賦課金として国民に広く負担が求められる。2017年度の賦課金は約2兆1000億円で、標準家庭の電気料金に月額686円上乗せされる計算となる。今後再エネの大量導入が見込まれるからこそ、国民負担をできるだけ抑制していかなくてはならない。

固定価格買取制度導入後の賦課金などの推移

たとえば、太陽光発電の買取価格はFITスタート時よりも半減したが、それでも欧州と比べると非住宅でまだ約2倍。風力の発電コストも世界平均と比べると約1.6倍と割高だ。FIT認定量が急増しているバイオマス発電のコストも、やはり海外より高くなっている。風力や地熱などは立地上の制約や地元調整の必要性などから開発期間が長期化しがちで、それだけコストに跳ね返ることになる。

コスト低減へ入札制度導入

これらコスト削減に向け、政府は2017年の法律改正で、買取価格を維持したまま開発を先延ばしにするような認定から一定期間が過ぎた未稼働案件を排除。加えて、2000キロワット以上の太陽光発電の売電価格の決定に入札制度を導入した。発電事業者が価格を提示し、安い事業者から電気を販売できるようにしてコストを競わせる。今秋開催された第1回入札では、上限価格は1キロワット時あたり21円とし、参加した9件が落札した。最安値は17円台だった。

世界的には再エネの導入拡大にともない、発電コストは従来の火力などと比べても競争力のある水準まで下がってきた。そのため導入がさらに加速するというサイクルに入っている。日本でも競争原理の強化や、施工工事などの最適化などによって、コスト低減への努力を続けていくことが必要だ。加えて再エネ導入拡大のための送電網の増強などのコストをどのように社会で負担していくのかという議論も欠かせない。
関連情報
総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第1回資料)