「禁煙」で企業の生産性向上、明らかに
~RIETIレポート~
従業員の健康管理を経営的視点から考え、実践する「健康経営」が注目されています。従業員への健康投資は、生産性の向上など組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。経済産業省では、「健康経営銘柄」の選定や「健康経営優良法人認定」を通じて、企業の健康経営の取組を後押ししています。
企業による禁煙サポートの効果
健康管理に欠かせないものの1つが「禁煙」。喫煙者本人の健康だけでなく、受動喫煙の問題も相まって、多くの企業が従業員向けの禁煙サポートを提供しています。産業医による指導から禁煙治療費の補助、禁煙達成者への報酬までメニューは様々ですが、経済産業研究所(RIETI)の研究によって、そうした禁煙サポートの効果がわかってきました。
個人の健康改善にとどまらず、仕事の効率改善まで
大湾秀雄早稲田大学教授らは、禁煙外来の受診料助成と禁煙成功時の報酬をセットにした禁煙支援プログラムへの参加者を企業と募集し、その効果を検証しました。
参加者の禁煙成功率は75%で、禁煙外来通院のみによる禁煙成功率(34.5%、厚生労働省調査)より高いという結果が得られました。
禁煙成功者が得たものは、ストレスや体重、定期的な運動など健康指標の改善だけではありません。禁煙成功は1日のたばこ休憩を47.1分減少させ、「たばこ休憩に使用していた時間も他のことに有効に使えるようになった」という実感をもたらしたほか、健康増進により欠勤日数も減少させました。禁煙成功の前後で、仕事の成果への自己評価が向上する傾向も。このように、禁煙成功が業務の効率や質まで向上させることが明らかになりました。こうした改善効果を定量化したところ、禁煙サポートプログラムは、企業にとって、プログラム費用の約11倍の経済的効果を生み出していました。
禁煙サポートを通じた健康経営推進に向けて
このように、禁煙は従業員、企業の双方に効果があります。しかし、頭では分かっていても、自ら禁煙への一歩を踏み出すのは難しいもの。喫煙者のみなさま、この機会に、自分のためにも、会社のためにも、所属する組織の禁煙サポートプログラムを活用してはいかがでしょうか。
【独立行政法人経済産業研究所(RIETI)】
RIETIは、理論的・実証的な研究とともに政策現場とのシナジー効果を発揮して、エビデンスに基づく政策提言を行う政策シンクタンク。詳細は経済産業研究所HP参照。
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